第6話・番外「醜い生物」
「皆さん、全員無事ですね」
私は孤児院に帰り着くと、全員の顔を確認する。
「「「はいジョージ先生」」」
そこには、サイスをアーサー除く全員の笑顔があった。
全く人間というのは怖いものだ。一人が死んだというのに、笑っていられるのだから。だが、それでいい。私が、そう仕向けたのだ。
「では、私は少し執務をしてきます。皆さんは、自由時間です」
人間には二種類いる。大多数の弱者を見下さなければ生きれないものと、そうではない少数のものだ。
私はどっちつかずで、今期の冒険者候補生ではアーサーだけが後者だ。
私が執務室に戻り、仕事をしていると執務室の扉がノックされる。おそらくアーサーだろう。
「入りなさい」
「先生、早くサイス君の救援に!」
今期生の中でアーサーだけはサイスの名前を覚えている。だが、私のいいつけでアーサーはサイスに名前を告げていない。
「既に騎士団には伝わってる。安心なさい」
サイスは、私たちにとって大切なストレスの捌け口なのだ。可能なら失わずに済むほうがいい。だが、見殺しにしたとき最も世間体がいいのもサイスなのだ。そういう意味ではサイスにはスケープゴートとしての重要性もある。
「なぜ、サイス君にあんなに辛く当たるんです!?」
アーサーの問い掛けに私が正直に答えられるはずもなかった。
「大人の事情だ。ほら、外で遊んできなさい。私には仕事があります」
ただそう答えるしかなかった。
「わかりました」
アーサーのいなくなった部屋でふと懲罰紋の対象リストを見ると、サイスが生きていることがわかった。生きているなら是非これからも私たちのスケープゴートであってほしい。そう思って、私は懲罰紋を通して命令を送る。
「生きているなら帰ってこい、このゴミ」
と。
今回は番外編、院長視点です。短いですがここまでとさせていただきます。
番外編は本編の主人公視点では見られないこの小説の脇役たちの動きを補足していきます。
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