第10話 魔王・ヤマトが神在祭にやってきた

 ちょっとだけ話が前後する……


「ちょっとどころでないと思うノだ」

「構成の都合ってものがあるんだよ」

「4話で、緻密な計算の上で出したつかみ回とか言ってたのはなんだったノよ」

「さて、ちょっとだけ話が前後するお話の始まりです」

「誤魔化したノだ!?」



「はぁはぁはぁ。ラ、ラ、ラーメンを、食べさせなさいよ」

「なんだ、ヤマトか。その命令口調をいい加減に止めろ。この時期のラーメンは1杯4,800円だぞ」


「な、なんでそんな高いのよ!! イセは150円で出してたじゃないの」

「季節限定プレミアム付きで特別料金なんだよ。文句あったらイセで食って来いよ」

「せっかく来てあげたのに、そんなこと言わないでよ。私、今日で7日も飲まず食わずなのよ」


「なんだそれ。苦行かなにかか? そういやお前はもともと仏教系だったな。断食は得意か」

「仏教なんかもう忘れたわよ。ともかく飢えてるの。早く食べさせなさい」


「仏教を忘れるなよ。お前はこの国で唯一の仏教系魔王だろうが。それにしても苦行じゃないのになんで断食する必要があるんだ? そんなことしてるからそんなにやつれて……いる様子はないじゃねぇか。ほんとに7日も食べてないのか?」


「私は言葉にトゲは入れるけど、嘘なんか言わないわよ。本当に食べてないの」

「そ、そうか。できればトゲも抜いて欲しいものだが」

「ラーメンは」

「ラーメンだけかよ!! 他のものは普通に食べてたのかよ」


「あ、当たり前じゃないの。私を餓死させるつもり? 私が7日も飲まず食わずなのはラーメンとそのスープだけよ。でもそれがないと死んじゃう」

「食べなくても魔王は死なねぇだろが! でもそれまで何を食ってたんだ?」

「ラーメン以外のものはたいがいなんでも」

「それで満足しろよ! ラーメンなんかタマに食うからうまいんだぞ」


「毎日食べてもおいしいよ?」

「スセリ、お前もか。よく飽きないものだな」


「「こんなうまいもの飽きるもんか!!」」


「分かった分かった。スセリもヤマトもその1点では意見が合うんだな。魔王と神が仲良くしていいのかよ」

「それもいまさらね。まあでも、イズモにあってヤマトにないものはラーメンですわね」

「ぐぬぬぬぬっ! ぬぬっ、ぬぬぬヤマトぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬよ!」

「なに言ってるか分かんねぇよ! ヤマトにラーメン店を作れと言っているようだけど、順番があるんだよ」


「ちゃんと聞こえてるじゃないの、ずるずる。どうしてイズモごときにラーメンがあって、食の街・ヤマトにラーメンがないのかってなんjで言われ続けてるんだからずるずる」

「言われてない言われてない。でもラーメンは俺が作ったものだし、そういう意見はありがたいけどな」

「作ったのはモナカとウエモンとベータときゅぅヨ」

「細けぇことはいいんだよ!」


「それよりなんなのよ、このお祭りはずるずる」

「あ、あのぉ」

「神在祭だよ?」

「知ってるわよ! そんなことぐらい。そうじゃなくて、神どもの祭りにどうして魔物や人がこんなにわんさかいるかって話よ」


「賑やかで良いじゃないか。お祭りは楽しくなきゃな」

「わけの分からんものばかり売ってるから、冷やかすだけで2時間もかかったわよずるずる」

「えっと、それは、その」


「冷やかしてないでなんか買えよ。買い食いしてこそのお祭りだろうが」

「なにもかも買ってたらお金がいくらあっても足りないわよずるずる」

「あのそれ、ぼくの」

「お前んとこは金持ちだろうが! そんぐらいケチる……さっきから誰?」


「あのそれ、ぼくのラーメンなんだけど」

「おいしいわよ? ずるずる」


「ヤマト、こいつと知り合いか?」

「私がここに来たときから横に座ってた男の子よ」

「他人のラーメンを盗ってじゃねぇよ!!」


 とりあえず、ヤマトもこの神在祭に参加することになったようである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る