第6話 そんな心配はありません
異世界生活二日目の夜、夕食と入浴をすませた異世界四人衆は、昨晩と同じく誠一の部屋に集まり、今日の反省会をしていた。
とは言え自分らが反省することはほぼ無く、むしろオクロさまが反省すべきと意見は一致していたが、まあその辺は我らにはどうしようもない。
「不思議だなぁ。このポット、電気も電池も無いのに熱っつ熱つだよ。これが魔法具かぁ」
美月が湯気が巻き上がる紅茶ポットを、しげしげと見つめながら呟いた。
「メイスさんが言ってたけど、底に魔石が仕込んであって、特性に合わせて魔石を取り換えれば冷やす事も出来るんだって」
と、容子。
良二は寝酒代わりにワインを頂いていた。
誠一は冷水だ。下戸なのである。
「俺たちの置かれた立場……あまり進展なかったなあ」
良二がボソッとこぼした。紅茶を口に運びながら「そうねぇ」と、頷く容子。
「色んな説明してもらって昨日よりは不安も和らいだし、興味湧くことも多いけど……」
「ケツの座りは悪ぃわな」
誠一がため息交じりに相槌を打つ。彼の言葉の中にしばしば荒い言葉が混じるのは火を扱う職人ゆえであろうか?
「魔素制御能力測定って言ってたっけ? つまり魔力って事かしら?」
「それがあれば、あたしたちも魔法が使えるのかな?」
「黒さん、どう思う?」
良二が誠一に聞いた。入浴中に敬語は要らんと言われ、名前もちょいと気安く呼ぶようにした。容子や美月もすぐ、それに倣った。
四人は言うなれば、同志的な集まりだ。相手の意思、知識、経験を尊重しながらも、あまり畏まって負担に感じるのは考えものである。
お互いの率直な意見を聞くためには、必要最低限の礼儀は弁えながらも、敬語など気にせず気楽に話し合えた方がいいだろう。何せ常識など通用しない異常な状況に置かれていることでもあるし。
「魔法が使えるかってのは実に興味深いが、沢田君以上に値が高いと面倒なことになるな」
「魔力なんて有るのか無いのか全く分かんないよ」
「自覚できるものなのかしら? 美月はこっち来て何か変わった感じある?」
「変わったこと? 容子は何かあるの?」
「う~ん、身体が軽やかと言うか? 良さんは?」
皆が誠一を黒さん呼びするようになったので、良二も良くん・良さん呼びになった。
因みにJKからも名前でいいと言われている。
「うーん、これと言って何も……」
「俺はあるな」
誠一が割って入った。
「え? どんなこと?」
「俺はこんな歳だからな。昼のメイスさんの講義みたいに、長時間座っていた後に立ち上がる時は、口には出さなくても心ン中でどっこいしょ、とか言ってしまうんだがそれが無かった。それと、この先どうなるかわからんから身体鍛えておこうと思ってな、風呂の前にスクワットやったんだが、以前は50回あたりで音を上げるところなのに80回余裕で行けた。流石に首を傾げたよ」
今度は脳筋か? とは口に出さない良二。因みに良二は50回どころか20回ももたず大腿筋ガクガクである。
「容子もそんな感じなんだ?」
「今思えばって感じなんだけど、あたし寝起き悪いんだよね、低血圧ってヤツ? でも今朝は昨日あれだけ疲れてたのに、寝起きはいつもよりスッキリしててね」
「それが魔力のせいなのかな? それともSFとかの設定で見かける、地球より引力が弱いとかかな?」
「俺の筋トレは引力っぽいな」
「魔力だったらどう作用してるんだろうね? あーん、考えれば考えるほどわかんない」
美月が天を仰いだ。今日は一日かけて色々な説明を受けはしたが、自分らに関わる情報はまだまだ少ない。とりあえず、明日の測定の結果を待たねば次のステップにも、たどり着くどころか先も何も見えてこない。
芳香な香りを放つ、おそらくはそれなりに高級で(仮にも王族御用達)あろうワインを味わいながら良二はため息をついた。
「いい香りしてますねぇ、やっぱり高級なワインなのかな?」
デキャンタに鼻を近づけ、容子が香りをくんくんと嗅いでいる。
「ちょ、ダメだよ、君は未成年なんだから!」
良二はデキャンタをずらした。容子、ムスッと唇を尖らす。
「香りくらい、いいじゃない。フフ、それにねぇ、さっきのメイドさんに聞いたんだけどエスエリアは16歳から飲酒OKなんだって」
「そ、そうなの? や、でも飲み慣れてないのにそれは……」
多くの国・地域では飲酒に関して年齢で区切りをつけているのは半ば常識ではあるが、どこもかしこもそれを徹底的に順守しているわけではない。盆暮れ正月や祭りなど、家族や親類が集まり会食する場では未成年もアルコールを口にすることは実際に有る。
言ってしまえば保護者指導の下、飲酒に対するお試し的な期間である側面は確かに有ろう。そこで酒との味覚の相性や身体的耐性などが程よく経験できれば成年になった時にプラスに働く場合も否定しきれない。
だが、中には酒こそ正義と言わんばかりのアルハラが服着て歩いてる輩も存在しており、過度な飲酒をさせて救急車を呼ぶ騒動にまで発展することもまたあるワケでこちらは命に係わる重大な事例。前記のメリットを吹っ飛ばす悪しき事例だ。
大学入りたての頃、新歓コンパ等の席でのアルハラに辟易していた良二としては後記の事例に重きを置きたいと思う。
ところ~が~。
「おい、美月くん! なにやって!」
誠一の叫ぶ声が聞こえた。
そちらを向くと、なんと美月がワインをデキャンタから直接、口をつけて飲みまくっていた。それはもうイッキが如く。
「ハァ~~~。ワインて深ぁい味するのねぇ~。でも、ちょっと渋いかな~」
「ちょ、おま! いきなりそんな!」
「だって、大人って不安な時とか、ストレス溜まったらお酒で解消するんでしょぉ?」
「だからって!」
グラス半分程度をデキャンタに残し、芳香な、おそらく高級なワインは、その大半が美月の胃袋に流れ込んでしまった。
あとはお定まりのパターンである。しかもヤバい方の。
「あれぇ? なんか、身体が宙に浮いてるみたい~。あはは~」
急激に酔いの回った美月は、酔って無ければ歳相応の可愛らしさを感じたかもしれない笑顔と、意味不明なセリフをまき散らしながらぶっ倒れた後、高いびきブッ掻きつつ、安らかな眠りに入っていった。
時として急性アルコール中毒は、そのまま永遠に眠ってしまう事もあるのにムチャしやがって、と呆れるしかない良二である。
「しゃあねえな。良くん? 美月ちゃん、部屋に連れてってあげなよ」
「え? 俺が?」
連れてくって言っても、この状態じゃ抱きかかえるしかないけど……いや、良いのかな? うら若きJKを勝手に抱きかかえたりして。後で彼女に何か言われたりとか……などと、良二が思い巡らせていると、耳元で誠一が「チャンスだ、練習しとけ」と、ボソッと囁かれて顔を赤らめてしまった。
それを見た容子が、クスっと噴き出す。
図らずも、女性に対する免疫が全然無い事を曝け出してしまっての赤面。些か情けない話ではある。だって女の子抱き上げるとか、マジで初めてなんですもん……
まあ、そんなこんなで誠一に促される形で美月を抱え上げた良二は、容子や誠一と共に彼女の部屋へ運び、ベッドへ。
美月をそっと寝かせた三人は、音を立てないよう気を付けて部屋を出た。
「やれやれですね。でも、かえって良かったかも」
容子が小声で言う。
「ああ、ずいぶん楽な表情で寝ていたしな。朝までぐっすり寝てくれればいいけど」
良二も同意する。
「じゃあ、あたしもそろそろ休みます」
「ああ」
「ごゆっくり」
挨拶後、容子は自室に向かおうとした。が、ちょっと立ち止まって振り返り、
「……あたし、お二方と一緒でよかったです。まだ不安はあるけど、昨日よりずっと楽になったし。黒さん、良さんのおかげです」
と、囁くように言った。
誠一はフッと軽い笑みを浮かべると、
「お互い様だよ」
容子と同様に囁いた。
「うん、こちらこそさ」
良二も囁く。
「じゃあ、お休みなさい。明日もよろしくお願いします」
容子はペコっと頭を下げた。良二たちもそれに応えた後、それぞれの部屋に戻った。
自室に戻ると良二は、昨日ほどでは無いが疲れた体をベッドに預け、様々な装飾が施された天井をぼんやり眺めて、ふうっと一息。
右腕を額に当ててスッと目を瞑る。
右腕にはまだ美月を抱き上げた温もりが残っていた。
女の子を抱きかかえたことなぞ、生まれて初めての経験である。
美月はおそらく今夜のことは覚えてはいまい。
まあその方がいい。お互いズルズル意識することになったら気まずい事この上なく、彼女と顔を合わせるたびに血流が止まりかねない。
誠一も容子も空気の読める連中だと信用はできると思う、多分、口外することは無いだろう。
出会ってまだ二日だが、思いっきり濃い時間を共有したせいか、そこは安心していた。
で、三日目の陽が昇り、みんなが先に朝食をとってる食堂に顔出したら……
「良さん! あたし夕べ、良さんにお姫様抱っこされたって本当ですか!?」
だああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!
良二の心臓は派手なバックファイアを起こしたように踊り、心の中で未だかつて無いほどの叫び声をあげた。
良二は思わず誠一を見た。
誠一はフッと目線をそらした。
――おいオヤジイイィィ!
次に容子を見た。
容子は既に目を逸らしていた。頬に一筋の冷や汗を垂らしながら。
――この小娘ェー!
返しやがれ、俺の信用、返しやがれ! と心の中で叫びまくる良二くんでありました。
食事も終わり、身支度を整えた後、王宮向けの馬車に乗るべく玄関に向かっていた4人、その中で良二はまだ、先程の事を引きずっていた。
「大丈夫ですよぉ。大体ワイン飲んで寝ちゃった、あたしのせいだしぃ」
「でも、なんて言うか……その……相手とか、結構大事な事なんじゃないかなとか……」
「ホント覚えて無いもん、ノーカンノーカン」
などと言ってもらえるのはありがたいが、ホントに言葉通りに受け取ってもいいモノかどうか……ろくに女の子と付き合った事の無い良二にはハードルが高いと言わざるを得ない。
そんなこんなで頭を巡らせているうちに良二らは玄関に到着したが、フィリアが準備に時間がかかっているのか、彼女が来るまで、しばし待つことに。
「おとといも思ったけど、すごく綺麗な馬車よねぇ、映画から飛び出してきたみたい」
主の到着を待つ、いかにも王侯貴族専用という威厳がにじみ出る、絢爛豪華な馬車を見ながら美月が呟く。
赤に近い茶色の車体は顔が映るほど磨き込まれており、窓枠や扉のふちなどは金銀による装飾が下品にならない程度に
その美麗さ、醸し出される雅な雰囲気に良二も容子も同じく見とれていたが、誠一は外観の鑑賞もそこそこに、馬車後方に近寄り始めた。
ある程度近付くと誠一は、軽装だが帯剣した衛兵らしき男に止められていた。警備の観点からも、気安く触れてもらいたくは無いのだろう。
しかしながら誠一は、何やら車輪の方を指さし衛兵に声を掛けている。
気になったので良二も近寄ってみた。遠巻きに様子をうかがってみる。
「見たところ車軸に緩衝装置が付いているようだが、これは弾力性のある金属なのかな?」
「え? ああ、サスペンションの事ですか? 仰る通り、板バネと呼ばれる弾力のある金属板と木材を組合せて路面の凹凸のショックを和らげているそうですが」
「ふむ、こちらでもサスペンションと呼べばいいのか。どうやって取り付けられてるかな? カシメ……いやボルトが使われてる?」
どうやら馬車の作りに興味津々の様だ。
「さすがに溶接構造は無さそうだな、逆に溶接無しで良くこんな……」
「やっぱり興味ある?」
誠一に問いかけてみた。
「ん? ああ、職人の性ってやつかな? どうもこういうのに目がいっちまってなぁ」
「でも日本の現代技術以上のモノは無いんじゃない?」
「確かにゴムや樹脂の類は使われていないみたいだな。だが魔法との併用で現代技術以上の効果もあるかもしれない。魔法があるから進歩する必要が無いか、薄いのかもしれないな」
などと話してる内に、支度を終えたフィリアがやって来た。気付いた護衛兵が、
「殿下、お出ましです」
と、教えてくれた。二人は急いで元の場所に戻り、フィリアを出迎える。
お待たせ致しました、と軽く頭を下げるフィリアに答礼し、彼女に続いて促されるままに馬車に乗り込む。
自分も含め、4人が乗り慣れぬ座席に座わると、フィリアと一緒に乗り込んだ、初日にメイスの反対側に立っていた侍女が窓の外に合図した。やがて馬車はゆっくり走り始める。
「紹介がまだでしたね、こちらは侍女長のロゼ・カーセルです」
「ロゼ・カーセルと申します、以後お見知りおきを」
フィリアに紹介され、ロゼはぺこりと頭を下げた。
茶髪を後ろにまとめ、キリっとした鋭さを併せ持った面持ちの、歳の頃30前後の女性だ。
「あの~、侍女長ってメイスさんじゃ?」
三人掛けの座席の右端、フィリアの隣に座っていた美月が聞いた。
「彼女は右侍女長です。ロゼは左侍女長になります、地位と権限は同じです」
右大臣と左大臣みたい、と容子。フィリアの対面、誠一と良二と共にドア側に座っている。
「今日の大体の予定を聞いてもいいですか?」
良二が尋ねた。
「まずは防衛省に向かいます。王都軍第一師団内で身体能力検査を受けて頂きますが、これは午前中には終わります。その後、王宮へ移動して頂き、王宮敷地内の魔導殿において魔素制御能力や適性の測定と検査を受けて頂きます。その間、私は昨日と同様、例の協議に参加しなければなりません。代わりにロゼを置いていきますので、ご不明な点があれば彼女にお聞きください」
改めてロゼがペコっと頭を下げる。
「ロゼ……さん? 僭越ながら、あなたは殿下の護衛も兼ねてらっしゃるのでは? 随行されなくてもいいのですか?」
不意に誠一が聞いた。良二ら3人はキョトン? とした。いやメイドさんでしょ? 表に衛兵いるし。
「……侍女長補のサラ・ボーンという者が同行しておりますれば」
おっとりとした口調でロゼが答える。
「失礼しました」
「あ、あの」
今度は美月だ。
「史郎君とは会えますか?」
「……先だってお話しした通り、サワダさまは近衛団の管轄になっておりますので、ご面会はおそらく……」
「そう、ですか……」
沈痛な面持ちで答えるフィリアに美月は力なく返事した。
確かに、良二たちは4人固まっていられるし、お互いの心境も話し合える。だが彼は見知らぬ地に1人ぼっちだ。
フィリアに言わせれば国賓、もしくは王族と同等の待遇を受けており、言っては何だが良二らよりも厚遇されているとの事だが、その心境如何ばかりのものか。自分なら耐えられただろうかと良二も思わざるをえない。
地球の自動車ほどではないが、意外と乗り心地は悪くはない馬車に20分ほど揺られ、一行は防衛省、及び王都防衛軍第一師団司令部前に到着した。
到着と同時にラッパ吹奏が始まり、良二とJKはびっくりして目を見開いた。
この吹奏は、楽隊と儀仗隊による王女殿下お出迎えの栄誉礼である。
軍事に詳しくない良二ですら一目で礼装であろうと判断できる軍服を纏った数十人の隊列。一糸乱れぬ動きでラッパ吹奏する儀仗隊。
良二やJKは初めて見る光景。それがフィリアがちょっと顔を出すからと、ただそれだけの理由で行われている事実に、しばし圧倒された。
さん付けで気安く呼んではいるが、やっぱり王族なんだなあと、思い知らされる良二であった。
馬車は門前に止められ、出迎えであろう礼装の高級将校数人が右手を胸に当て膝をつき、フィリアの下車を待った。
御者の隣にいた、先程の話にも出たサラ侍女長補らしきメイドが降りて来て馬車の扉を開き、まずはロゼが降り、次に彼女に手を支えられながらフィリアが降り立つ。
良二たちは、その後に続いて下車、フィリアの後ろに控えた。
「フィリア王女殿下、殿下におかれましは麗しきご尊顔を拝し、恐悦至極にございます! 防衛省王都防衛軍第一師団司令部へようこそ、お越し下されました!」
先頭の、一番位の高そうな将校が歓迎の言葉を述べた。
「ご苦労様です、お直り下さいアーカンソー将軍」
促されたアーカンソー以下の将軍らは、は! と答えた後、立ち上がった。
「ご紹介しましょう。こちら、防衛大臣兼王都防衛軍総指令官のアーカンソー上級大将殿です」
紹介されたアーカンソーは良二たちに一礼し、
「ご紹介にあずかりましたアル・アーカンソーと申します」
これに呼応し、3人の将校が、
「第一師団長を務めております、ビット・フォルデン大将です」
「第二師団長、ゴール・ゴードマン中将であります!」
「第三師団を預かります、ボロロ・フェリペ中将です」
と次々に自己紹介した。
良二たちは軍に関しての知識など、からきし無いので、えらい人たちなんだろうなと言う事はなんとなく分かるものの、どういう反応をすればいいかわからなかった。フィリアの王族オーラとは別物の武闘派オーラっぽいのは感じるが……
自衛隊上がりの誠一だけは、気を付けの姿勢で、浅いが鋭い御辞儀を返していた。
後で聞いたが無帽の時に行う、10度の敬礼と言うものらしい。
「此度、私はすぐに王宮に出向かなければなりませんのでここで失礼いたしますが、お連れした異世界の方々の件、皆様よろしくお願いしますね」
「はは!」
再び将軍らの敬礼を受け、フィリアはサラと共に馬車に乗り込んだ。
良二らは馬車内で見送るフィリアにお辞儀して応えると、ロゼが御者に合図し、馬車は王宮に向かって走って行った。
見送りが終わると各師団長はアーカンソーの指示で持ち場に戻った。
「異世界からお越しの方々、これより王宮からの指示に従って、こちらで各種検査を受けて頂きます。ご案内いたしますので、このまま私に続いてきてください」
そういうとアーカンソーは省内に向け歩き始めた。将軍に続いてロゼが、次いで良二、美月・容子の順で並び
省内に入ると良二らは男女別に分かれ、それぞれで検査することになった。
JKの方は女性軍人に守られながらだったが、やはりまだまだ心細そうなのでロゼに付いていてもらった。
良二たちはアーカンソーに案内されて検査場へ。
まずは学校等でもお馴染みの各種身体測定だ。
パンツ一丁になり、身長・体重をはじめ、肩幅から腕の長さ、脚や指の寸法まで事細かく測定された。
最後に医師との問診、これも定番であろう。因みに誠一はヒト、良二は犬の獣人で両方とも女医であった。
今現在の体調や気分など聞かれ、一緒に体温、呼吸数、心拍数も測定、喫煙・飲酒の有無などを聞かれて、採寸以外はホント普通の検査だな~と拍子抜けだったのだが「では下着を脱いでください」と言われ良二は、へ? と、目が点になった。
「どうしました? 脱いでください」
全く抑揚のない口調で再度促され、え? え? 脱ぐ? 脱ぐって言われても後はパンツしか無いんですが? それ脱いだらいろいろヤバいんじゃ……と混乱する良二は思わず誠一の方を見た。
良二は誠一も当然、困惑しているものと思ったのだが、あろうことか誠一は躊躇なくズバッとパンツを下ろし、女医さんの目の前に己がペニ助を突き出した。
えええええ! 良二は、声は出さなかったものの、心ン中で絶叫した。せざるを得なかった。
驚いていると、次に女医さんは誠一のペニ助をおもむろに掴み、カリ部分に若干引っ掛っている包皮をググっと剥き上げた。
ええええええええええ! と更に驚かざるを得ない良二。続いて女医は、
「後ろを向いて四つん這いになってください」
と要求した。誠一は些かの動揺も見せず、回れ右して四つん這いになり、肛門を女医に突き付ける。
――な……何なのこれ? 身体検査は小学生の頃から毎年やってたけど、こんなんやったこと無いし、ペニ助剥かれるって、えええ~!
「あなたも、あちらの方のように」
と女医さん、無表情&棒読みで催促。
変わらず戸惑いは収まらないものの、再三にわたって促されては致し方なし。度胸を決めて恐る恐るパンツを下ろすと、犬系女医さんは誠一と同じように良二のペニ助を剥いた。肛門も同様に観察する。
お医者相手とは言え、己がペニ助を初めて女性に触られるのがこんな状況とは!
「はい、戻してもらって結構です。性病の恐れなし、と……」
――あ、そういう検査…………はい、ありません……そんなもん、感染るようなことはまだ……
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