第30話
俺とシュリは山へ向かった。
山頂に向かうにつれて、霧が濃くなってきた。
中腹まではクロに乗せてもらっていたが、山頂に近ずくにつれて視界が悪くなり、下りて前へ進んだ。
おそらくこの霧が村人の病を引き起こしているのだろう。
少しでも霧を吸い込まないように、布を口に巻いてどうする。
「サトウ様、大丈夫ですか?」
「ああ、シュリは?」
「この霧は闇属性の魔法です。私は光魔法で闇魔法を浄化しておりますので」
「さ、さすがだな。シュリはなんでそんなに光魔法が得意なんだ?」
「私の母が魔法が得意だったのです。小さい頃、よく教わっていました」
「シュリの親は今どこにいるんだ?」
「それがよく分からないのです。ある出来事をきっかけに消えてしまい、それから行方不明のままです。正直、生きているかどうかも分かりません」
俺はシュリが言っていたある出来事について気になったが、あまりに霧がひどくなってきたのでしゃべることを控えた。
山頂に着いた。しかし、視界が5メートルほど先までしか見えず、近くに何があるのか全く分からない。
ガルルルルル!!
クロが急に唸り出した。
「何かいるのか?」
よく耳を澄ませると、なにやら騒がしかった。
グォォォォォォぉ!!
俺たちは急に聞こえた声に驚いた。
「今のは?」
「おそらくドラゴンでしょう」
カン!
キン!
何やら金属がはじかれる音が聞こえてくる。
「誰か戦っているのか?」
しかし、霧で視界が悪い。
それも何かただならぬ気配を感じる。
俺は風属性の上位魔法で霧を吹き飛ばした。
本来は自分の周りの敵を吹き飛ばす上位魔法だ。
霧を吹き飛ばすと空は青空が広がっていた。
辺りの視界が晴れたところで、視線を下におろすと、ドラゴンがいた。
なんだ!? あれは!?
俺は初めて見るドラゴンに驚いた。
まず、とてつもなく大きい。
全長30メートル、高さは建物の3階くらいはありそうだ。表皮は硬そうな鱗で覆われているようだ。
「あれがドラゴンか…」
「ええ、私も初めて見ます。気を付けてください。おそらく今まで出会った魔物の中で一番強いかと」
「ああ、分かっている」
俺は鑑定スキルでドラゴンを調べてみた。
名前:コドモ・ドラゴン
レベル138
レベル138か……。これは俺も苦戦しそうだな……。
しかも‘’コドモ‘’ってことはまだでかい奴がいるということか!?
カン!
キン!
3人ほどが先に来てドラゴンと戦っているのが見えた。
よく見るとそのうちの一人は王宮で見た弓の勇者だ。
弓の勇者とその仲間2人が先に来て戦っていた。
弓の勇者は俺に気付いたのかこっちに声をかけてきた。
「手ぶらの勇者さん。こいつは僕の獲物です。決闘でずるをするような弱者は手は出さないでください!」
自分の報酬を取られたくないのかわざわざそんなことを言いに俺に声をかけてきた。
しかし、ずいぶんと苦戦しているようだ。
俺は弓の勇者たちに鑑定スキルを使ってみる。
弓の勇者のレベルは60、仲間は40くらいだった。
「あのドラゴンは硬い表皮に覆われています。おそらく風属性の魔法は効果が薄いでしょう。やるなら火属性か雷属性じゃないと…」
シュリがそう説明している間にも、弓の勇者たちはどんどん劣勢になっていった。
弓の勇者の2人の仲間は前衛で剣をふるっているが、硬い表皮にはじかれてまるでダメージが入っていない。
「そもそも属性の問題以前にあいつらレベルが低すぎる。あいつらこのままだと死ぬぞ…」
そう言っている間に、3人は吹き飛ばされ全員尻餅をついているところにドラゴンが咆哮を放った。
強制的に寝ると異世界に呼び出される物語~現実と異世界を行き来するようになりはレベルアップで現実も異世界も無双する @hinatakisaragi
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