第23話
闘技場は王宮の中心にあり観客席まであった。
闘技場はおおよそ一辺が10メートルの正方形上になっていた。
どうやら王の側近の男が審判を務めるようだ。
「今からルールを発表する。勝負は先に一本取った方の勝利。武器はこれから渡す木剣のみ。魔法は下位魔法は使用してもいいものとする。また、場外に落ちた場合失格とする」
ずいぶんとシンプルなルールだ。だが、相手は剣の勇者。剣の扱いに長けているはずだ。大して俺は使ったことがない。魔法を使ってもいいってことが救いか。
俺と剣の勇者は木刀をそれぞれ手渡された。
「お前だけ真剣でもよかったんだぜ」
剣の勇者がこっちを見て煽ってくる。
俺はスキル<鑑定>でレベルを見てみる。
ヒノ アキフミ
種族:人間
職業:冒険者
レベル:64
レベル64か。俺は今84で俺の方が少しレベルが高いか。
しかし、俺だって俺よりレベルが高い魔物を何体も葬って来た。
よって、相手がレベルが低いからと言って油断しないほうがいいだろう。
「アキフミ様~がんばって~!!」
剣の勇者の仲間だろうか? 名前を呼び応援している。
「そんななんのとりえもない人なら楽勝ですよ」
弓の勇者も俺を煽りながら剣の勇者を応援している。
「サトウ!!がんばれ!!」
こちらもバジルたち村人が応援してくれた。
「では、はじめ!!」
始まりの合図がなった。
剣の勇者は一気に詰め寄って来た。
相手は後ろに振りかぶった剣を思いっきり振りかざしてくる。
俺は剣の振り方など知らないがなんとか応戦した。レベルが高いので何とか相手の攻撃は見切ることができる。
が、さすがに剣の勇者だけあって押される。
7撃目で俺は思いっきり剣を振り相手を引き離した。
剣の勇者は得意げにしている。
「まあまあだが、俺にはかなわないようだな」
と煽ってきた。
どうやらさすがに剣だけでは、剣の勇者には勝てないようだ。
俺は牽制のために水魔法のウォーターボールを何発か打った。
しかし、相手はそれを剣で撃ち落とした。
相手の周りはびしょびしょになっていた。
「そんな雑魚魔法で俺が倒せるとでも思っているのか? 馬鹿にするなよ! 雑魚勇者が!」
相手は俺になめられたと思い、少しイラついるようだった。
「俺が本物の魔法を見せてやるよ!!」
相手は火属性の方を使い、剣を発火させている。
まるで炎の剣だ。剣がメラメラと燃え上がっている。あの剣で攻撃をまともに食らったらさすがに俺もただじゃすまないだろう。
しかし、俺には考えがあった。
俺は相手が詰めようとしているところに、自分から突っ込み相手の間合いに入っていった。
相手もそれに対応し、俺の顔面に向かって剣を振って来た。
その瞬間、俺は足から雷属性の魔法を流す。
雷の魔法は先ほど俺が放ったウォーターボールの水を伝い、剣の勇者の体に伝わる。
「!?」
その瞬間、わずかだが剣の勇者の動きが止まった。
相手がひるんだ瞬間、俺は相手の首元に木剣を突き付けた。
「そこまで!!」
審判が大きな声で言った。
「ふん、どうやら俺の方が強かったようだな」
俺はアキフミに得意げに言った。アキフミは何が起きたか分からないようだ。
「え?俺が負けた?」
剣の勇者はパニックになっている。
「お、お、お前!ずるしたな!!」
「はあ?」
「今なんか一瞬体が動かなくなったぞ。お前何か俺にしただろ!」
何を馬鹿なことを言っているのかと俺は思ったが、こいつは本気で言っているようだ。
「反則するなんて、サイテーな奴だな!」
「勇者なんてやめちばえばいいのに」
観客席にいる人からそんな声が聞こえてきた。
「あんな、急に俺が動けなくなるなんてありえない!!お前、何か小細工をしたな!!」
「俺はただ雷魔法を…」
俺が言いかけた瞬間、剣の審判に俺のずるを伝え始めた。
「審判!!この男はずるをした!!厳正なる制裁を!!」
審判はこっちを見て、一瞬だけ目が合った。
その瞬間、審判の口元が笑っているように見えた。
まさか…!?
「どうやら、そのものはずるをしたようですな。このことは王に報告させていただきます」
もしかして、最初からすべて仕組まれていた!?
あの王の側近の男、一体何を考えていやがる?
俺は再び王の間へ連れていかれ、王に事情を伝えられた。
「バツとしてそのものの金品を没収するものとする。雑魚勇者とその連れ共々とっととここから出で行け!」
「ちょっと待ってくれ!!俺は何も…!」
「まだ言い訳をするか!見苦しいぞ!!名誉を挽回したければ、魔王でも倒してくるんだな」
俺は衛兵に取り押さえられ金品を没収された後、王宮の外に連れられて外へ放り出された。
幸いにも金品と言ってもガジュラを倒した時の魔石しかもっていなかったのだが。
「全く何なんだ。あいつらは!?」
バジルが怒っている。
「シュリ、すまない、巻き込んでしまって…」
「いいえ、構いません。私もあの方々を許せませんでしたので」
「それにしても、あいつらは俺をそんなに遠ざけたいんだ?」
「それは、この国に伝わる言い伝えのせいかもしれません。大昔、‘’最悪‘’があった時、宝具を持たぬ勇者が暴走し、国に甚大な被害をもたらした、と。しかし、その詳細は伝えられていませんので、完全に伝説と思われているのですが、王族の方は恐れているようです」
シュリが説明する。
しかし、今の俺にそんな力はないと思うが……。
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