第22話
シュリの村に魔物が攻め込んだ次の日、俺たちは王都に着いた。
王都に着くと王都とてつもない壁で囲われていることが分かった。
高さ30メートルはあろうかという白い壁が永遠に直径数キロはあろうかという王都を囲っている。
「ここが王都グランシスタです。この国の情報や物流すべての中心となる地です」
門には何人もの兵士が警備をしており、警備は厳重だった。
モンスターを壁内に入れないためであろう。
バジルが門兵に話をすると、すぐに門兵は通してくれた。
門の中に入ると、壁の外とはうって変わってとても栄えていた。外の村にはなかった4階建てくらいの建物もある。やはり、街並みは昔のヨーロッパのようだ。
門をくぐると遠くに宮殿の様な大きな建物が見えた。
あれが王宮なのだろう。
そして俺たちは馬車に乗ったまま、王宮まで入って言った。
そして王宮に入ると、床は大理石でできており、時折壁には絵画なども飾ってあり、豪華であった。
豪華な通路を進むと案内人に王の間まで案内された。
またこの場所か……。
俺は最初に転生させられた時のことを思い出した。
王の間はかなり広々としていて、王の周りには10人ほどの兵士が護衛している。
今日は俺のことを鑑定したあの魔術師はいないようだ。
王は俺と初めて会った時と同様、大きな椅子に寝そべってこちらをつまらなさそうにみている。
本当にこの王は大丈夫か?
「この度は王が謁見を許された。要件を申せ」
王の隣にいる側近の男が言う。
そしてひざまずいたバジルが口を開く。
「昨日、村に大型の魔物が現れました。つきましては警備の強化のため、村へ兵を派遣していただきたく存じます」
「ならん」
王が即答する。
俺は意味が分からなかった。
「王都の兵はわしの実が危険な時に使う。故に村へ兵を派遣することはならん」
「ですが、村に被害が出ています…。もしかしたら近い将来死者が出るかもしれません」
「そんなことは知らん。お前らが何人死のうが、俺さえ生きていれば、この国は続くのだからな」
王はとんでもないクズのようだ。見たところ自分は椅子の上に座っているだけで国に必要だと思いあがっているらしい。
「ふざけるな!村人に被害が出ているのに見捨てるのか!」
俺は我慢できずに大きい声で怒鳴ってしまった。
どうやら頭が腐っているらしい。ずっとああやって肘をついて椅子に寝そべっているから脳みそが左右どっちかに偏っているのではないか?
「ん? 貴様は……? どこかで見たことがあるような……」
「転生者だ」
「おお、そうだった。あの時の宝具を持たぬ雑魚勇者か!」
「一体何のために俺をこの世界に転生させた?」
「それについ手は私からお答えしましょう」
側近の男が代わりに答える。
「この王都グランシスタを含む我が国は数十年に一度、‘’最悪‘’と呼ばれる大規模な魔物の襲来にあっているのです。敵と戦うには我が国の軍事力だけでは足りませぬ故、あなたのように転生者を呼び出しているのです」
なるほど。結局のところ俺はこの国の手となり足となり敵と戦わなければならないということか。
「また、この世界とあなたの世界は密接にかかわっているので、手を抜かぬようお願いいたします」
密接に関わっているとはどういう意味なのだろうか? どちらにせよ魔物が襲い掛かってくるのなら手を抜くつもりはないが……。
しかし、他の質問をしたかったので俺はそちらを優先的に聞いた。
「ところで他の転生者はどこにいる?」
「他の勇者様方は現在、任務中です。なんでも複数の大型の魔物が現れたとかでその討伐に向かってもらいました。もうそろそろ帰ってくる頃かと思いますが」
‘’複数の‘’ってことはシュリの村に襲ってきた奴は、そのうちの一匹じゃないのか?と俺は心の中で思った。
その時、入り口の大きな扉が空いた。
「勇者様方のお帰りです!!」
入口のそばにいた兵が王の耳に届くように言った。
入り口からは3人の勇者が現れた。
2人は男で1人が女だ。
身長が少し高くスタイルの良い茶髪の男は剣を持っており、もう一人の少し背は小さいが頭のよさそうな男は弓を持っていた。そして、身長150くらいの小柄な女は槍を持っている。それぞれ持っている武器が宝具ということか……。
「おお、よくぞ戻った!」
王が嬉しそうに言う。
「ただいま戻りました」
勇者たちはひざまずいて言った。
「しての戦果の程は?」
「残念ながら、大型の魔物の4体のうち1体の討伐に成功しましたが、3体に逃げられてしまいました」
剣の勇者が答える。
やっぱりか…と俺は思った。つまりこいつらが、取り逃がしたガジュラ3体のうち1体がシュリの村を襲い、もう2体は王都の近くの村を襲った。
「そうであったか。残りの3匹は兵にでも任せるか…」
「おい、その必要はない。その3匹はすでに俺が倒した」
「誰だ?お前?」
「その者も転生者じゃ。ただし、才具は持たぬが…」
「ハハハッ!才具を持たない奴があんな大型の魔物を倒せるわけがないだろ!」
「嘘はいけませんね」
剣と弓の勇者がそれぞれ馬鹿にしたように言った。槍の女の子は静かに見守っている。
「ハハハハハッ!」
周りからも笑い声が漏れる。
「っふ、あんな雑魚も一人で倒せないとはお前相当弱いんだな」
俺は馬鹿にされたことに腹が立ちついつい煽ってしまった。
「あ?ふざけるなよ!誰がお前なんかに!決闘だ!お前に決闘を申し込む!」
剣の勇者が張り合ってきた。
「決闘?」
「決闘とはこの国のルールで、何かもめごとが起きた際は決闘で解決するのですよ」
王の側近の男が答えた。
こんなつまらないことで決闘を申し込むとは剣の勇者もずいぶんと気の小さい奴だ。
「俺が買ったら、嘘を認めて土下座して俺の靴をなめろ」
「俺が勝ったら?」
「お前が欲しいものをなんでも一つやろう」
そう言って俺は闘技場に連れていかれた。
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