第21話

「茜!大丈夫か?」


茜は駆け寄ってきて、俺の胸に飛び込んできた。


「何もされてない?」


「はい……」


声が少し震えている。


俺は今起きたことを総長の弟子丸に伝えに行こうとしたが、茜は離れようとしなかった。


「もう少しだけこのまま……」


相当怖かったのだろう。


「俺のせいで巻き込んでごめんな」



しばらくすると後ろから人が来るのが分かった。


「おい、佐藤!!」


声をかけてきたのは藤堂だった。


振り返ると、グループの幹部を先頭にして、ずらりと人が後ろに並んでいた。


「これ…お前がやったのか?」


総長の弟子丸が地面に転がっている人たちを指さして言った。


「はい、襲い掛かって来たので」


「で?鬼柳はどうした?」


「帰りました」


目の前にいる人全員驚いているようだった。


「マジで!?あいつ一人で壊滅させちちまったのか?」

「あいつ、本当に人間か!?」

「鬼柳が逃げて帰ったってマジか!?」


そんな声が奥の方から聞こえてきた。


総長の弟子丸はあたりを見渡している。


「鬼柳は一体何がしたかったんだ? こいつらは雑魚だ。あいつほんとにうちと喧嘩する気あんのか!?」


「どういうことですか?」


「今日あいつは下っ端しかつれてきてねえ。鬼柳のグループはでけーから本気で喧嘩するときはこんな雑魚ども連れてこねんだよ」


「今日は別の目的があったんじゃねーのか?」


側近の男が言った。


「例えば?」


「んなもん知るかよ……」


おそらく鬼柳は本当に俺に会いたかっただけなようだ。そこまでして俺に会いに来るとは、向こうの世界で俺のことを本気で殺しに来るということだろうか。


「にしてもお前、いつの間にそんなに強くなったんだ?」


総長が俺に聞いてきた。


「いえ、別にそんな……。失礼します」


これ以上ここにいると、別の意味で面倒なことになりそうだったので、俺は茜を連れてさっさとその場を離れた。

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