第20話

俺は神社で弟子丸に話を聞いた後、歩いて15分ほどかかる大きな公園に連れていかれた。

どうやら、鬼柳のグループは今日そこで集会をしており、そこに殴り込みに行くようだ。


公園に着くと全員、特攻服を着ており、明らかにガラが悪い奴らばかりだ。


両方のグループを合わせて70人くらいだろうか。こっちが30人、鬼柳の方が40人といった具合である。


俺は場の空気にのまれ緊張でトイレに行きたくなった。


「弟子丸さん、ちょっとトイレ言ってきていいすか?」


「ああ? 今行くのかよ……。早く戻って来いよ」


俺は公園の中にあるトイレに向かって走っていった。


昔から緊張するとトイレが近くなる。


そして用を足しトイレから出ると、弟子丸たちがどこにいるか分からなくなっていたのでまた探さなければいけなかった。


これだけいると幹部たちを探すのも大変だった。


幹部たちを探していると、俺が明らかにこの場で浮いている存在だということが分かった。


そもそも特攻服を着ていない時点で目をつけられてします。


近くにいた男二人が話しかけてきた。


「おい!!てめぇ!こんなところで何してやがる?」

「ここはお前のようなガキが来るような場所じゃねぇんだよ」


そういいながら睨めつけてくる。


「いえ、弟子丸総長に呼ばれて来たんすよ」


「あ? 弟子丸だと?」

「てめぇなめてんのか?」


俺はガラの悪い男に胸ぐらをつかまれて言われた。


「へ?」


俺は自分が何をやらかしたか瞬時に理解した。


暗くて良く見えなかったがこいつらの着ている特攻服は俺が知っているものと違うことに気が付いた。


もしかしてここって敵陣!?


そう思った時には相手は殴りかかってきていた。


場の雰囲気は怖いが、俺は相手のパンチを見切ることができた。相手は俺の顔面目掛けて大ぶりのこぶしをふるってきたが、俺はひょいと避けた。


レベルアップした俺の敵ではない。


俺はカウンターで右フックを相手の顔面に軽く入れた。


相手は吹っ飛び気を失った。


俺のレベルはもう100くらいにもなるから相当強くなっているようだ。


もう一人も俺に襲い掛かってきたが、回し蹴りを相手の顔面に入れまた一発KOした。


「なんだぁ? あいつ?」

「なめた真似しやがって」

「ぶっ殺せ!!」


こうなると周りが俺のことに気付き、無限に俺に襲い掛かってくる。


俺は襲い掛かってくる不良どもの攻撃をかわし、それぞれ一発ずつパンチか蹴りを入れ一人ずつ倒していった。


30人ほどやっただろうか。


もうほとんど敵陣に人は残っていない。


そんな時、敵陣のリーダらしき人に出会った。


そこに進藤茜もいた。


「先輩!?なんでこんなところに?」


茜は捕まったと聞いていたので、しばられていたりするのかと思ったが、縛られたりせず男二人の一緒に突っ立ていた。


そこには右耳にピアスを開け、金髪の男がいた。ただ、体は思ったより細く、俺より少し太いくらいだろうか。


「よー。来たか。待ってたぜ」


この男が鬼柳か!こいつが俺の姉さんを!!


俺は正気を保つのがやっとだった。


「待っていただと?」


「ああ、そうだ。お前に会うためにわざわざこの場を作ったんだよ」


「一体何を言っていやがる。大体俺になんの用がある?」


「お前の顔を覚えておくためだ」


「話が見えないな? 一体何の話だ?」


「ふっ、じゃあ結論から言ってやるよ。今、お前、何レべだ?」


なに!?


レベルだと!?


どういうことだ!?こいつも転生者なのか!?


俺は急な話の展開についていけず動揺した。


「お前も……なのか?」


動揺で言葉が詰まったが、なんとか声に出すことができた。


「ああ、そうだ。ただし、お前とは敵同士だがな」


そうか、こいつは魔人側で転生しているのか?


「それでなぜ俺の顔を覚える必要がある」


「そりゃ、俺が殺さなきゃならねぇ奴の顔くらいは知っておいた方がいいだろ」


「殺す?」


「お前らも魔人を殺して金やら地位やらを手に入れてるんじゃないのか?」


そういうことか。つまり、鬼柳は魔人側で俺を殺せば、魔人界で金や地位が手に入ると。


「もう一つ聞かせろ。なぜ俺のお姉を脳死に追いやった?」


「ん? お前は……? ふっ、こりゃおもしれえ! まさかあの女の弟とはな!」


ようやく俺が鬼柳が殺した女の弟だということを理解したようだ。


「俺の質問に答えろ!!」


「あー、そりゃ気に入らねえ奴をぶっ殺すためだな」


つまり、俺の姉ちゃんの彼氏である前代の総長を殺すために、俺の姉さんを手にかけたのか。


「なぜそこまでする?」


「暇つぶしだな」


狂っていやがる。完全にサイコパスだ。目的のためなら人殺しさえしてしまう。そんな異常者に正論を諭しても無駄であろう。俺はそれよりも進藤茜を返してもらうことを優先した。


「もう用がないならその子を返せ」


「ああ、そうだったな」


意外とすんなり引き渡してくれた。進藤茜は顔色もよくどこか怪我をした様子もない。ただ少し怯えている感じはするが……。


そして鬼柳はその場を去ろうとした。


「あ、そうそう。最後に一つだけ教えといてやるよ。あっちで死ねば、こっちのお前も死ぬ。逆は知らんが……。まあ、せいぜい俺に殺されないように気をつけるんだな」


そう言い残して鬼柳はその場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る