第16話
カンカンカンカンカン!!
この日は村にある鐘の音に起こされた。どうやら何かが起こったようだ。
「サトウ様! 魔物が町へ攻め込んできたようです。お力を貸していただけますか?」
シュリが慌てて俺が寝ている部屋に入って言った。どうやら本当に大変なようだ。
そして俺たちは騒ぎのする方へ向かった。
人の悲鳴や物が壊れる音が聞こえてくる。
かなり大型のモンスターのようだ。
見た目はライオンに似ているが少し黒っぽいし、大きさが普通のライオンの3倍くらいある。顔には大きな牙が付いており、恐ろしい顔をしている。
すでに村の中に入り込んでいくつかの家屋に被害が出ている。
何人かの村の男が戦っているが、巨体なうえに俊敏なので苦戦しているようだった。
俺はあんな巨大な生き物はゾウしか見たことがなかったので驚いた。
「シュリ! 村の人を避難させろ!」
「はい、わかりました。サトウ様もお気をつけて下さい。避難が終われば向かいます」
そう言って俺はシュリと別れた。
事態は深刻だ。
俺は早速、スキル<鑑定>使う。
名前:ガジュラ
レベル:98
「レベル98!?こんなもの本当に倒せるのか!?」
俺の今のレベルは74。このレベルになって初めて自分より高いレベルのモンスターに出会った。
現在戦っている村人たちにも鑑定を使ってみる。
彼らは剣や槍を持っていて、全員強そうだが、全員レベルは25前後だった。
実質俺一人か……。
俺は様子を見るために、まず炎魔法を光魔法でコーティングしたファイアーアローを打ち込んだ。ガジュラは少し怯んだが、あまり効果がないようだ。少しやけどしているだけだ。
かといって、村人たちの剣や槍は硬い皮膚にはじかれている。おそらくレベル差が大きすぎるのだろう。
俺は雷属性の矢を打ち込んだ。
バチチチチチ!!
ガジュラの体に電気が走り、少しだけひるんでいる。動きを止めるだけなら多少効果があるようだ。
「今のうちに…」
俺は両手を上げ、シュリから教わった火属性の上位魔法を使おうと準備を始めた。
詠唱を破棄しても準備に数秒はかかってしまう。俺が魔法を放とうとしたその時、ガジュラはしびれがちょうど解けたようだ。
そして俺は上位魔法を打った。
「ファイアーイグニション!!」
ボォォォォォ!!
巨大な火の玉がガジュラに向かって突き進んでいった。
しかし、ガジュラは斜め前に飛び、俺の魔法をかわし、さらに大きな爪の生えた手で俺を凪ぎ飛ばしてきた。
「ぐあっ!!」
俺は10メートルほど吹っ飛ばされたが、幸いにも意識はありかすり傷しかしていない。爪に当たっていたら、おそらくこんな軽い怪我では済まなかっただろう。
「くそっ!どうすれば…!」
威力が高くても当たらなければ意味がない。
もっと近距離で使える魔法があれば……。
そう思った瞬間俺はひらめいた。
「おい!!すまないが20秒でいいから時間を稼いでくれ!!」
俺は戦っている村人たちに声をかけた。
「お前は……!? わ、分かった!」
村人たちは少し困惑していたが、何か策があることをくみ取ってくれた。
俺は先ほどと同様に両手を上げ、ファイアーイグニションを作った。そして、その周りを風魔法で覆いさらに、その外を光属性で覆い圧縮していく。これなら威力を集中させることができる上、風魔法との組み合わせで爆炎を起こせると考えた。
「くそ!時間がかかる……」
ファイアーイグニションだけならそう時間はかからないが、風魔法と光魔法を使いながら、圧縮していくのはかなりの集中力と時間がかかる。
俺が魔法を作っている間に5人のうち4人がやられ戦闘不能になっていた。
「あと少し……」
残りの一人もガジュラに吹き飛ばされ戦闘不能になってしまった。
ガジュラは攻撃目標を俺に変更し俺にめがけて突っ込んできた。
くそっ!! あと少しなのに……!!
「ホーリーバリア!!!」
その時、シュリが10メートルほど前で俺とガジュラの間に入り、光属性の上位魔法ホーリーバリアを張り、突進してきたガジュラを受け止めた。
「今です!!!」
直径10メートルほどあった火の玉は50センチほどまでに圧縮できた。
俺はシュリが足止めしてくれているガジュラに向かって、足で風魔法を使い一気に詰め寄った。
そして、俺のできる限りの火と風魔法を圧縮した魔法をガジュラの顔面にぶつけた。
ガジュラに魔法をぶつけた瞬間、光魔法が壊れ、一気に中にある火と風の魔法が弾け、爆炎とともに爆風が起こり、俺は吹き飛ばされた。
爆炎と爆風によってすさまじい量の砂煙が舞い上がり、辺りは何も見えなくなった。
俺は地面にたたきつけられた衝撃で立てなかった。
うつぶせのまま砂煙が落ち着くのを待つとガジュラの姿がうっすらと見え、完全にガジュラの姿があらわになった時、俺は驚いた。
ガジュラの上半身がほとんど消し飛んでいたからだ。
「とっさに思いついたとはいえ、なんて威力だ…」
俺は自分でやったことだが、あまりの攻撃力に驚いた。
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