第13話
1週間が経過した。
この1週間はシュリに魔法を教えてもらい、練習して魔法を上達させるとともに、空いた時間にモンスターを狩っていた。
今日までにかなりの数のモンスターを倒した。そのおかげでレベルが64にまで上がっていた。
魔法の方は全属性、中位魔法まで実践で使えるようになった。魔法は発動するのに高い集中力がいるため、練習しないといざというときに使えないのだ。
シュリによると中位魔法まではチュートリアルだそうだ。そして今日は上位の魔法を教えてもらう。
「では今日は上位魔法をします。上位魔法からは詠唱が必要になります。私が見本を見せますので、次に真似してやってみてください」
シュリは両手を上げ、詠唱を始める。
「大地より生まれし炎神よ、大海を超えて前へ歩を進めよ! ファイアーイグニショ
ン!!」
シュリの両手の上で直径3メートルはあろうかという火の玉ができ、シュリは両手を振りかざして、近くにいる雑魚モンスターに投げつけた。
辺りに炎が広がり雑魚モンスターは一瞬で灰になった。それだけでなく雑魚モンスターを灰にしてからファイアーイグニションは前に突き進み、30メートルほど進んだところで消失した。
「…すごい」
俺は今まで見たこともない大技を見て思わず口に出てしまった。
「では、やってみてください」
俺はシュリがやっていたのと同じように両手を上げ詠唱を始めた。
「大地より生まれし炎神よ、大海を超えて前へ歩を進めよ! ファイアーイグニショ
ン!!」
上を見ると赤い炎の玉がしっかりとできている。
喜んでシュリの方を見ようとしたが、シュリはこっちに背を向けて走りながら叫んでいる。
「サトウ様!!早くそれを投げてください!!」
「へ?」
俺は上を見る。
すると火の玉がシュリの作ったものよりも何倍も大きい球になっていた。
「え、ちょ、シュリ?」
俺は非常に焦った。何しろこの巨大な火の玉の投げ方が分からないのだから。
俺はあたふたしていると、小石につまずいて体のバランスを崩した。
しまった!!!
しかも運悪く体を崩れた方向にはシュリがおり、そのまま俺のファイアーイグニションに
巻き込まれてしまった。
ボォォォォォォ!!!
辺り一面が火の海になっている。
シュリはどうなったのだろうか?
俺は背筋が凍り付いた。今日まで俺に親切に接してくれ俺も心を開き始めていた人が、俺のせいで死んでしまったかもしれないのだ。
急いで中位の水魔法を放ちまくって火を消火した。消火したせいで煙がたくさん出ていたがその煙もすぐに収まり、辺りが見えるようになってきた。
すると錐型の光の壁があるのが見えた。
俺が近づくと、光の壁が次第に薄くなり、最後には消え、中からシュリが出てきた。
「シュリ!!!大丈夫か?」
「まったく、ひどいですよ。投げてと言いましたが、私に投げるなんて」
「すまない……」
俺は今の出来事がショックでしゅんとしてしまった。
「まあ、石につまずくくらい誰にでもあるので気にしないでください。私は光魔法で防御することができましたし……。それにしてもファイアーイグニションがあそこまで大きくなるとは、やはりサトウ様の魔法の才能は非凡なですね」
シュリはしゅんとしている俺を見てフォローしてくれた。なんという情けない男だろうか。なんにせよシュリになんともなくて本当に良かった。
「光魔法って、さっきの壁のことか?」
「はい。ホーリーバリアという光属性の上位魔法です。さっきは急だったので詠唱は破棄しましたが、また今度詠唱を教えて差し上げますよ。しかし、これで私が教えられることはほとんど教えてしまいました。王都に行けばもっと凄腕の魔法使いがいるのですが…」
シュリは少し寂しそうだった。確かに俺に魔法を教えているときはどことなく楽しそうな雰囲気を醸し出していた。
「ありがとう、まだしばらくはここで自分で修行しておくよ。しばらくはレベル上げもしておきたいし……」
それからしばらく魔法の練習をしながらモンスターを狩っていた。シュリもたまに練習を見に来てくれアドバイスをくれた。
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