第12話

だいぶ現実と異世界の行き来も慣れてきた。


どうやら俺が寝ることが世界を移動するトリガーになるらしい。


それと一つ分かったことは時間の進み方が違うことだ。俺が現実世界で8時間寝ている間にこっちでは明らかに8時間以上活動している。


まあ、なんにせよ本来寝ている間に何か活動できるのは得した気分だった。


今日はシュリに魔法を教わるために一緒に草原に向かった。俺は魔法のこの世界の人間ではないので、魔法について何も知らず、教えてもらえることは非常に助かる。



「まず魔法とはイメージが大切です。頭の中で手から魔法が出ることをイメージしてください」


そう言いながらシュリは手のひらを上に向けると、ハンドボール位の大きさの火の玉ができていた。


「これがファイアーボールです。サトウ様もやってみてください」


ずいぶんと単純な名前だなぁ。


「イメージか…。む~~」


俺は手から火の玉が出ることをイメージし、集中した。


シュリと同じようにファイアーボールを作ることができた。


「では、次のステップです。次はこのファイアーボールを大きくします」


ボッ!!


シュリの手のひらにあったハンドボール位のファイアーボールが直径50センチくらいまで大きくなった。


「さあ、やってみてください」


「そのやり方が分からないんだが……。何かコツはあるのか?」


それがちょうど今、俺がぶつかっている壁だった。


「コツですか……。魔力を一度手の平にため込んで、その後放つ感じです!」


なんとなく言いたいことが分かった気がする。


俺は言われた通り一度手のひらに力をためてから、それを放出した。イメージだが……。


ボッ!!


シュリと同じくらいのファイアーボールを作ることができた。


「できた!」


「さすがです!やはり魔法の才覚をお持ちのようですね」


確かに俺は魔法が得意なようだ。しかし、俺がこの世界に転生した直後、王の間にいた魔術師が俺に『魔法が少しできる』と言っていた‘’少し‘’とは何だったのだろうか? それでも、魔法はできるに越したことはないからまあいいか。



「これで中位魔法が完成です。ちなみにさっきの小さいファイアーボールが下位魔法です」


「中位魔法?」


「はい。魔法には属性の他に強さや難易度でクラス分け割れています。具体的には、下位、中位、上位、最上位、奥義、真奥義の6段階があります。もっとも真奥義にもなると使えるのは世界でも数えられるくらいしかいませんので、サトウ様はまず、最上位あたりを目指してみてください」


シュリにそう言われ、俺は火以外の属性も中位魔法まで使えるように練習した。


やはり魔法は奥が深い。俺は中位魔法が使えるようになるだけでも、上達することの喜び感じていた。


俺が練習している間、シュリがずっとそばでアドバイスをくれ、たまにやってくる雑魚モンスターも練習台にして、練習していた。


しばらく練習したところ、光以外の火、水、風、雷の属性の中位魔法まではすぐにマスターできた。


水は火と同様に水の玉を作れ、風は手のひらから風を起こすことができた。上手いぐらいに強さを調整すれば、ドライヤーとしても使えそうだ。雷は手の平からバチバチと大量の黄色雷を出すことができた。


しかし光属性だけは中々うまくいかなかった。


「シュリ、光属性はどうやってイメージしたらいいんだ」


「光は創造の力と言われていて、すべての魔法の根源と言われています。私はたまたま光魔法が得意なので分かるのですが、何かを作り出すことをイメージするのがコツです」


シュリのアドバイスは分かりやすく、的をついている。俺は言われた通りに何かを作り出すことをイメージすると手から小さな光の玉が出てきた。


「これが光魔法か…。なんかしょぼいな…」


こんなものがなんの役に立つのかと思い、つい口に出してしまった。


「そんなことないですよ。光は一番習得するのが難しいと言われています。また、上位魔法以上になると回復系やシールドや転移の魔法になったりして、すごいんですよ!」


光魔法には少々苦戦したが、しばらく練習しているとすべての属性の中位魔法まで使えるようになった。


この時点で日が落ちかけていたので、今日はあまりモンスターを狩らずにシュリの家に戻ることにした。

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