第6話

俺はお金を稼げると分かってからモンスターを狩りまくっていた。


幸いにもレベルが高すぎるモンスターは出てこなかった。


レベルも21にまで上がった。


しばらくモンスターを狩っていていくつか分かったことがある。


まず、人が近くに住んでいることである。


明らかに木を伐採した後があったからである。


つぎに、この世界の魔法についてだ。


昨日は火しか使わなかったが、イメージすれば水と雷の魔法も使うことができた。そして、魔法はイメージが大切なようだ。


昨日もそうだったが、モンスターに魔法を放とうと思ったら、火や水や雷をイメージするだけではなく、一度手にためてから放つイメージが大切であることが分かった。


まだまだ、この世界の魔法は奥が深そうだ。


俺は疲れて小川で水を飲んでいると近くから、女の悲鳴が聞こえた。


「きゃあああ、誰か…、助けて!!」


俺は初めて聞いた人の声に驚いて悲鳴が聞こえる方へ駆け寄った。


すると女の子がモンスターに襲われているのが見えた。


女の子は俺の2つか3つ年下であろうか。


襲っているのは鑑定を使わなくても分かる。


ゴブリンだ。


俺はゴブリンたちのレベルを知るために<鑑定>を使った。


名前:グリード・ゴブリン

レベル:18



レベル20前後のゴブリンが5体いた。


ステータスは俺と同じくらい。


ゴブリンたちには目立ったスキルを持つ奴もいない。


これなら勝てそうだな。


「ぎゃっぎゃ」

「ぎゃ」

「ぎゃぁ!」


ゴブリンたちは何かコミュニケーションをとっているようだが、攻撃の対象が女の子から俺に変わったのが分かった。


たとえゴブリンと言えども集団で来られたら、さすがに面倒なので俺は先に攻撃を仕掛けようとした。


俺は火魔法を使い、ゴブリンを焼き払おうとした。


「待ってください!!」


突然襲われていた女の子が口を開いた。


「火魔法を使うとこの辺の薬草が燃えてしまいます!!」


女の子は深刻そうにそう言ってきた。


なるほど。そういうことか。


俺は手にイメージしていた魔法を雷魔法に変更した。


ちょうどその時5体のうち2体が俺に襲い掛かって来た。


俺はゴブリンたちの攻撃をひょいとかわし、カウンターで攻撃をした。


1体は雷魔法を纏った手刀で胸から腹にかけて切りつけ、もう1体は首を跳ね飛ばした。


一瞬で2体のゴブリンを仕留めると、残りのゴブリンたちは恐怖を感じたのか逃げていった。

パンパカパーン!!


『レベル23に上がりました』


俺は恐怖で怯え、うずくまっている女の子に目をやった。


「大丈夫か?」


「あなた様は一体…?」


ずいぶんと礼儀の正しい子に見える。服装も和風でまるで昔の日本の服のようだ。


「俺はたまたま通りかかっただけだ。怪我はないか?」


「はい…なんとか…」


「じゃあ、一つ聞きたいのだがこの辺に町はあるか?」


「ここから歩いて30分くらい離れたところに私の村があります。私の村までご案内いたしましょうか?」


「ああ、よろしく頼む。ところで名前は?」


「シュリとお呼びください。あなた様は?」


「俺はサトウだ。よろしく頼む」


俺は手を差し出しシュリと握手した。なんとなくシュリの顔が赤くなっているのが分かった。


「ところでサトウ様はここで何を?」


モンスターを狩ってお金を稼いでいたことは言いたくなかった。


「宿を探しているんだ」


「そうなのですね。ではお礼も兼ねて私の村へお越しください」


その時、何人かが駆け寄ってくる音が聞こえた。


「シュリ様!!」

「お前何者だ!!シュリ様に近づくな!!」


男たちが剣や槍をこっちに向けてくる。


どうやら俺がシュリを襲おうとしたと勘違いしているらしい。


「いや、俺は何も……」


俺は決して何も悪いことをしてはいないと言おうすると、シュリが声を上げていった。


「バジル!!この方は私を助けてくれたのです!!剣を下げてください!!」


「な!!こんな弱そうなのが…」


現実世界でも異世界でも外見は弱そうらしい。


俺は言われ過ぎてなんとも思わなかった。


「バジル!!」


シュリが怒ったように声を上げた。


「わ、分かりました…」


「ところで、目当ての薬草は見つかったのですか?」


シュリが手に持っている袋に草が入っているのが見えた。どうやらシュリは薬草を探しているところをゴブリンに襲われていたらしい。


「はい。すぐに村へ戻りましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る