第4話

目を覚ますと朝になっていた。


あれは夢だったのだろうか!?しかし、夢にしてはあまりにも詳細に記憶が残っている。


それにしても、異世界であんなに動き回っていたのにこっちでは全く疲れていない。というより、寝ていたのでむしろ回復している。


ベッドから起き上がると床に1000円札が落ちているのを見つけた。


なんだこの1000円札は?と一瞬思ったが、俺は向こうの世界で換金したことを思い出した。


「まじか!」


正直半信半疑だったが【換金】は本当のようだ。


それに異世界が実在することも証明された。


俺はその千円を手に取って学校へ向かうことにした。


学校が終わると普段はバイトがあるのだが今日はたまたまシフトが入っていなかったので、家にすぐに帰った。


こうすれば不良に絡まれることもないだろう。



夜の21時になった。母親はいつも夜遅くまで働いているので晩御飯はコンビニで買うことが多い。


今日も弁当を買いにコンビニへと向かった。


徒歩で数分のコンビニまで歩いている間にやにやが止まらなかった。


何しろ自分のしたことに対してお金がもらえたのは初めてだったのだ。


モンスターを一日数匹倒しただけで千円もらえる。


今まで母には苦労を掛けていたが、俺があの世界でモンスターを狩りまくれば、姉の治療費を稼げるのではないか?


そう考えると、にやにやが止まらなかった。


そんなことを考えてコンビニの近くまで来ると、


「そんでよー、相手がビビり散らしてたからボコボコにしてやったんよー」


「あはは!!そいつダッさー!」

「お前それはやりすぎだってー!

「ギャハハハハ!!」


静かな住宅街に大きな笑い声が響いてきた。


「うわぁ」


見てみるとコンビニの入り口付近に、4人のヤンキーがたむろしている。


見た目は全員髪を染めていたり、ピアスを開けていたり、明らかに不良である。


俺は絡まれないように視線を下に向け目が合わないようにしてコンビニに入っていった。


俺は弁当を手に取りレジへ向かった。


「421円になります。」


レジで朝に手に入れた1000円札を店員に渡す。


「579円のお釣りです。ありがとうございます」


問題なく買えた。


やはりお札は本物のようだ。


安心してコンビニを出た。


外に出るとやはり先ほどの不良がいた。


うわぁ。出にくいなぁ。と不良たちをちらっと見た瞬間、地面に座り込んでいる一人と目が合った。


「あ?てめー、何見てやがる?」


「え?」


不良の一人が睨めつけてくる。


あたふたとしているうちに、いつの間にか不良たちに取り囲まれてしまった。全員俺より背が高くガタイも良い。


「何見てんだ?」

「なんか文句でもあんのか?」

「あ?やんのか?」


俺を取り囲んでがんを飛ばしてくる。


助けを求めようとしても外には誰もいない。


コンビニの店員もこっちに全く気が付いていない。


「す、すみません……」


俺は怖くてとりあえず謝った。


「あ?謝って済むんなら警察いらねーんだよ」


予想はしていたが、やはりすんなり返してくれそうにない。


「こいつ殴ってもいいかな?なんか顔がむかつくわ」

「いいんじゃね?こんなやつ」


そう言って一人の男が腹を殴ってきた。


ドスッ。


鈍い音が鳴った。


しかし全く痛くない。


「お?じょーぶだねー」と不良の一人が言い、次に蹴りを入れてきた


俺はとっさに膝を上げガードした。


俺の膝は相手のすねに当たった。


ゴン。


ボキッ。


「ぎゃああああああ!!」


急に相手が悲鳴を上げて地面に転がった。


「おいおい、お前何やってるんだよ」


不良たちが、足を抑えて転がっている男を見ながら首をかしげている。


「ぐぅ……くそぉ……い、いてぇ……。俺の…足が…折れたぁぁ…」


「ええ!?」


よく見ると転がっている男の足はすねのところで変な方向に曲がっていた。


周りの不良たちの顔は青ざめていった。


地面で転がっている男は涙を流して苦しんでいる。


「お前!何しやがった?」


「え?俺は何も…」


そう答えるしかなかった。本当に何もしていないのだから。


「てめぇ、責任取りやがれ!」


と不良の一人が俺の顔をめがけて殴ってきた。


続けて残りの2人も加えて、計三人で攻撃してきた。


しかし、全く当たらない。


俺はなぜかすべてを見切って、一発たりとも食らわなかった。


「はぁ、はぁ…」

「あたらねぇ…」


俺は異変に気付いた。


「もしかしてレベルアップの効果か?」


俺は運動神経が良くないのに、さっきから相手の攻撃が見え、勝手に体が反射で避けてくれる。


おそらく先ほどのレベルアップの効果で身体能力が上がっているのだ。


「くそぉぉぉ!!」


不良の一人がやけくそになり俺に襲い掛かってくる。


俺はもはや避け続ける意味もないと思い、襲い掛かってきた男の顔にめがけてパンチを入れた。


するとその男は吹っ飛びフェンスに当たり気絶した。


残りの二人は声も出なくなっていた。

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