第3話

「あ…」


俺に向けて鋭い牙を剥き出しにしているそいつと目が合った。


オオカミの様な見た目の黒い毛並みの獣。大きさはライオンくらい大きい。


殺意むきだしで今にも襲ってきそうな雰囲気だ。


パンパカパーン!!

スキル<鑑定>を手に入れました。


またもや頭の中でファンファーレが響き渡る。


それと同時に、半透明のウィンドウに目の前の獣の情報が表示される。



ガロウ・ウルフ

種族:モンスター


レベル:20



「ガロウ・ウルフ……レベル20!?」


思わず大きな声が出てしまった。


先ほどの俺のステータスとはけた違いの数値。


もし、レベルがそれぞれの強さを表しているのなら、襲われたら俺はひとたまりもない。


「……っ」


立ち向かっても勝ち目がないと判断した俺は一目散に逃げだした。


『ガルルル!!ガウガウッ!!』


「マジかよっ!!」


ガロウ・ウルフは逃げる俺を追いかけてくる。


逃げ切れない。いきなりこんなわけのわからない所に来てモンスターに襲われて死ぬのか!? せめて武器があれば……!!


そういえば……、俺の目の前にいた魔術師が俺は宝具は持っていないが、魔法が少し使えるとか言ってたっけ……。


俺は早速、ガロウ・ウルフから逃げながら後ろを向き、手をガロウ・ウルフの方へ向け炎をイメージした。


こういうのはイメージが大切だと、どこかのアニメか漫画で言っていたはずだ。


ボッ!!


すると本当に炎が手から出てきた。しかし、自分の火が燃えているだけだ。


「あつっ!!」


俺はすぐに手をぶん回して火を消した。


こうしている間にもどんどんガロウ・ウルフに追いつかれてきている。


どうしてうまくいかなかったのだろうか?


もしかして、火を放つイメージをせず、火だけをイメージしたから、手が燃えたのだろうか?


俺はもう一度ガロウ・ウルフに手を向け、火をイメージすると同時に、火の玉を放つイメージをしてみた。


すると今度は、うまく炎を放つことができ、ガロウ・ウルフに命中した。


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


ガロウ・ウルフは悲鳴を上げて焼け死んだ。


こんなにあっけなく死ぬのか!?


レベル差があるのに倒せたとなると、俺はこの世界で魔法が得意なのか!?


そんなことを考えていると頭の中でファンファーレが頭の中で鳴り響いた。


『レベルがレベル8になりました。』


右上のステータスを見てみる。


名前:佐藤琢磨

種族:ヒューマン


レベル8




確かにレベルが一気に8にまで上がっている。


「レベル20のモンスターを倒したからこんなもんか…」


俺は本当に死んだか確かめるために恐る恐る動かなくなった、ガウル・ウルフに近づいた。


「うおっ!?」


近づいたその時、ガウル・ウルフが黒く変色してみるみる溶けて数秒で溶けてなくなった。


ガウル・ウルフが倒れていた所には、水色の石が残されている。


スキル<鑑定>を使って何であるかを見てみる。


ドロップアイテム


・魔石×1


純度;10%


「一体魔石って何に使うんだ?」


俺は水色の魔石を手に取り、まじまじと観察する。


パンパカパーン!!


新たに【換金システム】が使えるようになりました。


「【換金システム】ってなんだ?」


俺はウィンドウを開いてみる。


するとそこには先ほどにはなかった【換金】というボタンが追加されていた。


早速俺はそのボタンを押してみる。


すると新たに別のウィンドウが出現した。


魔石(純度10%)→1000円


交換を実行しますか?


YES or NO


「え?1000円!?」


「この世界の通貨じゃなくて日本円?」


まさかの日本円への換金だった。


とりあえず俺はYESを選択した。


しかし、何も起こらない。


「一体どこで手に入れるんだ?」


そう思いながらもう日が傾いてきており、辺りに人の気配もないので俺は寝床を探すことにした。


とりあえず、歩こうと考え、適当に太陽の方向に向かって歩き出した。


しばらくするとゴツゴツとした岩場が見つかり、そこに小さな洞窟を見つけた。


「ここならモンスターもさすがに入って来れないだろう」


すでに日は沈み辺りは暗くなり始めている。


もう外で歩くのは危険と判断して、今日はここで休むことにした。


洞窟の奥で腰かけるとゴツゴツしていて眠れるか怪しかったが、急に睡魔が襲ってきた。


現実世界では絶対にない体験をしたのだから疲れているのかもしれない。


そう思いながら、俺はすぐに眠りについてしまった。

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