第1話②
これは、私が私になる前の話。
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「空気がおいしい~~!」
私は、澄んだ水の美しさが人気の湖に観光しに来ていた。なんでも、水が湧き出す湖の底までくっきり見え、その水はとてもきれいな青色をしているという。周囲は自然豊かな土地で、心地よい涼しさを何度も吸い込んだ。
行楽シーズンだからか人が多く、空いてる時期に来るべきだったかな……と少し後悔する。だが、せっかくここまで来たからには、湖を拝んで帰りたい。
案の定、湖のほとりは大混雑。それでも、なんとか隙間を縫うように前に出る。独りだとこういうとき楽だなあ、なんて思いながら。
視界が開けたそこには、一面の青が広がっていた。
「ぅ、わぁ……」
ことばも出ないほどとはまさにこのことだろう。どこまでも続く深い、それでいて透き通った青色。思わず息を止めて眺めてしまう。これが、自然の美しさ。一切の濁りがないそこに目を凝らすと、湖の底には写真を撮ろうとして落としてしまったのであろうスマホがいくつも落ちていた。ちょっと笑ってしまう。手を滑らせないように、慎重に写真を撮ろう。そう思ってカメラを向けたとき____
「え?」
急な人の波に押されて、私は足を滑らせた。水に触れる瞬間、涼しいはずのこの土地で、あたたかいものに包まれた気がした。
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