世界は理不尽で残酷で、主人公たちは弱く小さい。幼い信念と友情は容易く崩れてしまいます。
天才脳外科医の遺志、幼い頃の誓いとその挫折、離れてしまった幼馴染、謎の幼女、心配してくれる友人の突然の霊能力、理不尽な凶行の悲劇…… 理解できない混乱した世界の中で主人公たちは失った親愛さや希望を取り戻そうとします。
物語の中の仕掛けが超現実的で取り散らかっている変な話と思われたら心外です。生きる喜び、喪失の悲しみ、理不尽なことへの憎しみといった感情の描写は、その時の情景とともに胸に迫ります。
深刻すぎるお話しと思われてもレビューの本意とは違ってしまいます。基本はあくまでコメディなんです!
小説が生きる上での喜怒哀楽を描くことができ、それを楽しむものであることを思い出させてくれる逸品です。是非読んでください。
追記 現在クライマックスに差し掛かっています。心臓を掴んで縛り上げるような辛い展開が続いています。それでも…… 「生きる厳しさと哀しさを鮮烈に謳う」作品や「美しくも哀しい人間の「宿命」」を描く作品は、どんなに辛くても、いつまでもそれに触れた人の心に残ります。過去のそういった作品同様に、本作を読んでほしいとますます思います。