第3話 買い出し
「葵!買い出しに行くわよ!」
「え、僕買い出し係じゃないけど……」
「いいから、いいから」
「で、でも……」
「葵が来ないと意味ないの!」
葵がこないと意味ないでしょー!後はオマケなんだから。
「そ、そうなの?」
「そうなの!ほら帰る準備して!」
「わかったよぅ。でもちょっと一人呼んでもいい?」
葵がちょっと思いついたような顔をした。
「ん?わかった。いいわよ」
なんだろう?まっいっか。
「……で、なんでアンタがここにいるのよ!」
先月、葵とあれから色々あって、まとわりつくようになった斎藤さんが来ていた。葵に変な虫はついてほしくないんだけど。
美人だから余計にムカつくわね。日本人形って呼ぼ。
「なんでって立花くんに呼ばれたからだけれど」
「あーおーい」
なんで!久しぶりに二人だけですごそうと思ったのに。
「だって梨花ちゃん目が怖かったから」
なん……それはそれで傷つく。
「うぅ……だってそれは」
「立花くんを怖がらせるなんて酷い女なのかしら。ほら、竹井さんなんてほかっておいて私たちでどこか、良いとこにいきましょう」
「ちょっと、ちょっと待ったあああ」
「あら何かしら」
「あら何かしら、じゃ、ないわよ。今回私が約束したんだから」
「そうは見えなかったけど」
「言ったの!というか佐藤さんはBクラスなんだからCクラスは関係ないでしょ」
言ってないけど。
「関係あるわ、立花くんに関する事は全て私に関係あるの」
「何それ、重」
重すぎるでしょ!どんだけ葵にベタ惚れなのよこいつ!
「と、とりあえず行こう、梨花ちゃん、斎藤さんも」
「ぐぬぬ……何か釈然としない」
「まずは、飾り付けようの装飾と、喫茶店用のお皿やコップを買いにいこっかな」
「コップやお皿は紙だよね」
「そうだね、学校から予算がおりてるけど、ある程度は節約していこう」
「そうなると大きな雑貨屋とかかなぁ」
「最近、駅近くで大きなショッピングモールができたらしいからそっちに行ってみるのは、どうかしら竹井さん」
日本人形が何やら含みのある目をしてくる。
「あー、確かにあそこなら、何でも揃いそうだね。学校からもそんなに遠くないし……それにコスプレ用の服も揃いそうだし」
「……そうね」
日本人形と目があう。わずかに会釈をした。……目的は一緒ね。
思った通り、そこまで時間をかけることなくショッピングモールについた。
「へぇ、結構大きいんだね」
「ここなら服飾店の他に雑貨屋、飲食店もあって、一通りのものを集められると思うわ」
「とりあえずまずは、1Fの雑貨屋で集めましょうか」
「うん」
「あおいー、これなんてどう?」
「え、えっと梨花ちゃん、これ女性モノ服だよね?」
「きゃぁーやっぱ似合う!!」
可愛い可愛い可愛い
「立花くん、これ履いて!!!」
「スカートだよこれ!もう完全に僕女の子としか扱われてなくない!」
「oh……いい……」
日本人形が鼻を抑えて倒れた。……っ可愛い。なかなか分かってるじゃない。
「やっぱ葵はこれが1番似合う!」
こっちの服が1番似合ってるに決まってるでしょ!葵の事は1番わかってるんだから!!
「いや、立花くんはこっちが似合うに決まってるわ!!!」
……そっちも、なかなかいいじゃない。
「こうなったら葵に決めてもらいましょう!」
「それがいいわ」
「「葵(立花くん)どっちが良いと思う!」」
「えっと、二人ともとりあえず落ち着こう。僕たち文化祭の買いだしに来たんじゃなかったけ?」
「文化祭の買い出しだよ。しっかり(葵の)コスプレ用の服を選んでるんじゃない」
「えっと、これじゃ僕のサイズになっちゃうから皆サイズが小さくて着れないよ」
困惑した顔をする葵。困った顔も可愛い。
「あいつらなんか、学校用の水着で充分よ」
多分あいつらもそれを望んでると思う。
「ダメだよ。皆でやる文化祭なんだから、皆の分も用意しなきゃ」
「えぇ、あいつら何かテキトーでいいじゃない」
「……梨花ちゃん」
葵が顔を伏せる。あ……葵ちょっと怒ってるかも。
「あー、えーと」
「……っ……」
日本人形を見る。目をそらした。……役ただず。
「わかった、わかったよ!あいつらの分もちゃんと買うから!」
「うん!」
笑顔で頷く葵。あぁ昔から、この顔には弱いんだ。
あいつらもこれで女装することになったけど、まぁ、いっか。
白い鳥 賢者 @kennja
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