第19話 後輩と縄跳び

「それで最初に確認しておくんだけど。その相手とはどうなりたいって思ってる? 健全なお付き合いかな? それとも……」

「結婚は神前式と教会式の両方を希望。夫婦の営みは一日三回、けど夫が疲れてる時には二回でも我慢する。なぜならわたしは配慮の出来るオンナ。子供は最低五人、多ければ多いほど嬉しい。朝出るときには行ってらっしゃいのちゅー、帰ったらお帰りのちゅー、もちろん両方とも胸を揉みながらのディープキスが望まし──」

「そこまでは聞いてないから。まあ、カエデが結婚したいくらい本気ってことは分かったよ」

「あうっ……」


 放っておくといつまでも語り続けそうなカエデを制してシロが纏めた。

 カエデは興味がないものはどうでもいのに、好きなことになるといつまでも事細かく語り続ける癖がある。しかも早口で。

 カエデも自分の悪癖が出たことに気付いたのか、恥ずかしそうに顔をうつむけた。


「まあそれはともかく。その男子とえっちなことはしたい?」

「もちろん。けもののように荒々しく交尾したい。おっぱいだって揉まれたい、吸われたい、しゃぶられたい。ぱんつだって見られたい」

「……それは痴女というのでは?」

「好きな人限定なら当然。せんぱいは違うの?」


 そう言われてふと考える。

 たとえばリッカと付き合っていたころ、偶然自分のチンポをリッカに見られたとして、リッカが「ば、ばかっ! 隠したまえ!」とか言って両手で目を塞ぎ、でも指と指の間からこっそりぼくのチンポを覗き見て、顔を真っ赤にしていたとしたら……?

 ……ふむ。

 意外に悪くないかもしんない。あの当時なら。


「でもそれじゃ、ぼくが練習台になるわけにはいかないね」

「それは問題ない。先輩だし」

「そ、そうなの……?」


 なんだか男扱いされてない……とショックを受けるシロだったが、カエデにしてみれば『せんぱいイコール好きな人』なのだから問題があるはずもない。


「ま、まあいいや。じゃあカエデ、ぼくを誘惑してみてよ」

「分かった」


 カエデが立ち上がり、シロの前まで歩いてくると前屈みになって、胸元の谷間を激しく強調しながら口を開いた。


「せ、せんぱい。セックスしよ……?」

「はいアウト」

「……だめ?」

「それじゃただの痴女だよ?」

「むう」


 腕組みして考え出したカエデは、やがて一つ頷いて、


「じゃあせんぱい。わたし、これからダイエット」

「え? カエデ、ダイエットの必要なんてどこにもないよね?」

「そんなことない。女子はいつだってダイエットをやるもの。いいから見てて」

「うん」


 シロが頷くと、カエデが部室のロッカーをゴソゴソ弄りだし、やがて縄跳びを取り出して持ってきた。

 これは一体なんだろう──とシロが首をかしげていると。


「これからするのは、縄跳びダイエット」

「!?」


 そうしてカエデが縄跳びを始めた。


 いまさら説明を繰り返すとカエデは異次元クラスの巨乳、いや爆乳である。

 その大きさはバレーボールが可愛く見えるほど。

 そんなカエデが縄跳びをしたらどうなるか。

 答えは簡単。

 縦横無尽、前後左右に、ばるんばるん揺れまくる。

 まるでブラによる拘束などムダムダムダアッッッッッッとばかりに、そりゃもう引きちぎれんばかりに揺れて揺れて揺れまくる。

 あまりの乳揺れの大迫力に、シロはもうエロいというより怪獣大決戦を見ているような気分になった。


 ……うん、これ止めたほうがいいって、あとで遠回しに伝えよう。

 なんというか破壊力が満点すぎて、逆にエロくない。


 そして、そんな乳肉大暴れ縄跳びを、なにげにフィジカルモンスターであるカエデが体力の限り続けたらどうなるか。答えは一つ。


「……あっ」


 ブヂンッと派手な音が鳴り響いて、カエデのブラの肩紐とホックが同時に破壊されてしまった。

 おっぱいの重さと揺れに耐えられなかったのは間違いない。


 その後、特注品のブラを壊したカエデは金銭喪失の大きさにさめざめと泣き。

 シロによしよしと頭を撫でられながら、くじけずに頑張っていこうねと慰められたのだった。

 帰る頃には、カエデが満面の笑顔になっていたことは言うまでもない。

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