第12話 エピローグ
空港のロビーで腕時計をチラチラ見ている蓮。そこへ、周りの注目を浴びながらサングラスをかけた柚貴と柚人がスーツケースを引きながらやってくる。
「早くしないと飛行機出ちゃうよ」
その向こう側から、高木と沙季がスーツケースを転がしながら走って来る。
息を切らす純。
「もう。皆、遅いよ。早く手続きしないと」
「まったく、俺たちを取材したいって留学の許可が下りるんだから沙季先輩の人脈が恐ろしいよ」
柚人が肩をすくめると、沙季は純の肩を叩く。
「紹介するわ。もう、知っていると思うけど広報部の高木純君よ。彼には美術部門を担当してもらいます」
「よろしくお願いします」
蓮が笑う。
「よそよそしいから。普通に喋ってよ」
「それより、早く手続きしなくていいの?」
柚人は呆れた顔をして、それを微笑ましく見ている柚貴。
「そうね。詳しいスケジュールは飛行機の中で説明するわ。皆の邪魔にならないようにがっつり取材するから覚悟しててね」
沙季は笑みを浮かべてウィンクした。
機内は夏休みということもあって、学生や家族連れも多い。
柚貴が窓際に座り隣に柚人が座っている。通路を挟んだ並びに蓮が窓際、沙季が通路側に座っている。純は蓮の前の席に一人で座っている。
蓮は膝の上で拳を握っている。
「えっと、純が隣だったはずじゃ……」
沙季はバッグからペンとメモ帳を取り出す。
「変わってもらったのよ。現地に着いたら高木君に取材してもらうけど、私も部長として柳君にいろいろとインタビューしたいと思っていたのよ。もちろんいいわよね」
沙季は前のめりになり蓮に身を寄せる。
柳は沙季の気迫に負け、
「わかりました」
柚人は雑誌をめくり、柚貴はひじ掛けに肘をかけ窓の外を見ている。
「柚人、怒ってる?」
飛行機が離陸する。
「柚貴は環境の変化に弱いんだから、しっかり休みなよ。熱出されても困るんだから」
柚貴は目を見開く。
「そうだね」
柚貴の口元が微笑む。
沙季はまくしたてるように蓮にインタビューをしている。そのやり取りを見て呆れる純。
蓮は沙季の後ろに見える柚貴を見た。
×××
裏庭の小屋にあるグランドピアノがひっそりと置いてある。
そこに立てかけられている一枚のキャンバス。
柚貴と柚人が楽しそうにピアノを弾いている姿が描かれている。
下部に掛かれたタイトルは「白日夢」。
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