第2話 懺悔と許しのキス
教室の窓から青空が広がり、床に横たわっている蓮の顔に朝陽が照らす。
教室のドアが静かに開きサングラスに帽子を目深にかぶった
柚貴は帽子とウィッグをとると机に置くと、白髪があらわになる。
柚貴はキャンバスの真正面に立つとサングラスを外すと、黒い瞳でキャンバスを見つめる。
蓮が目をこすりながら起き上がる。
「純?」
寝ぼけた声に柚貴は振り向く。
「おこしちゃったかな。ごめん」
柚貴は再びキャンバスに視線を戻す。
「君は本当に良い絵を描くね」
蓮は、ハッとして立ち上がる。
「誰?」
柚貴は蓮に視線を向けると蓮は目をこする。
「何だ。夢か……。 もう一回寝て、夢から覚めますのでおやすみなさい」
蓮は再びブランケットをかけ寝ようとする。
柚貴は蓮を見てクスリと笑う。
「夢だったら、この絵はなかったことになるね。勿体ないな」
蓮は自分の頬をつねる。
「……夢じゃないのか……」
柚貴は蓮にゆっくりと肯く。
蓮は柚貴にゆっくり近づき、上から下へ下から上へと柚貴を見る。
蓮と柚貴の視線が合い、蓮は血相を変えて勢いよく柚貴の前で土下座をする。
「すみませんでした」
柚貴は蓮と視線を合わせる為に跪く。
蓮は俯いた顔を上げる。
「俺、あの時スランプで……。たまたま出くわしたすすき畑の光景を絵にしたら大賞を取ってこの大学に入れた。入学して最初の頃は順調だったんだ。でも……」
蓮は両手で柚貴の肩を掴む。
「大学で君たちを見つけた時、胸が高鳴って。それで、俺……また、無断で君たちを描こうとした! 本当にこの通りだ!」
蓮は頭を床につける。
柚貴は蓮の肩に手を添える。
「僕は怒っていないよ。むしろ感謝してる」
蓮は涙と鼻水を垂らしながらぐちゃぐちゃな顔で泣きじゃくる。
「僕たちは君の描いた通り一卵性の双子なんだ。かなり特殊なアルビノでね」
柚貴はカーテンを閉め、採光を遮断すると長袖のシャツをまくる。
「この肌と目のせいで、親に捨てられて施設で育ったんだ。この瞳はコンタクトでね。これを外すと赤い瞳なんだ。顔の色とかはどうにかごまかせてるけど、体まではあまり見せられないし、陽の光をあまり浴びれないからね」
柚貴は立ち上がり、キャンバスを見つめる。
「外見がそっくりな僕たちは誰にも見分けがつかなかった。でも、この絵も君が賞を取った絵も僕がいる」
柚貴は背中を丸めてすすり泣く蓮に微笑みかける。
「僕は嬉しかった。だから、謝ることなんてない。僕は君の絵に救われた」
蓮はゆっくりと柚貴を見て、ぐちゃぐちゃな笑顔を向ける。
「……じゃあ」
柚貴はゆっくり肯く。
柚貴は蓮と一緒に立ち上がり、蓮は柚貴の手を握る。
「本当にありがとう。俺、本当に……」
柚貴は一歩前に出ると蓮にキスをする。
蓮は目を見開き、動けずにいた。
柚貴の唇が離れると蓮は立ち尽くし、柚木はウィッグと帽子をかぶり、サングラスをかけ、ドアの前で、蓮に振り返る。
「じゃあ、僕はこれで」
柚貴が教室から出ていくのを呆然と見ていた蓮。
蓮は指で唇をなぞり、よろめきながら壁伝いにもたれる。
柚貴は口元に笑みを浮かべ柚貴は廊下を歩いてると純とすれ違う。
純は振り返り柚貴を見るが、教室に足早に向かう。
教室に入ると純は蓮の姿を見つける。
「やっぱりここに居たか。アパートにもいなかったからまさかとは思ったけど……根を詰めるのもほどほどに……」
滑るように壁伝いにしゃがみ込む蓮の様子に純は顔を覗き込む。
「どうした。腹が減ったのか?」
蓮は膝を抱え顔を膝に埋める。
「お前、本当に大丈夫か?」
「なぁ、同性がキスするって何の意味があると思う?」
純は顎に手を当て目を伏せ思案する。
「悪戯? 変態? 恋愛? 他に……」
蓮は純のシャツの裾を掴む。
「わかったから、それ以上言わないでくれ……」
純は蓮の頭をわしゃわしゃとなでる。
「変な夢でも見たのか?」
顔を上げる蓮に純は目を見開く。蓮は目に涙を浮かべていた。
「……キス、された……」
純は血相変えて教室を出ていく。
「純、まっ……て」
蓮は純の背中に手を伸ばしたが、届かなかった。
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