何故、人はエタるのか
――エタる。
これをweb小説では「エターナル未完結になる」という意味で「エタる」と言いますね。今回はいい機会だからちょっと、このエタる原因や対処法を考えてみたいと思います。
ここでは、エタりそうな時に作家さんが一人でできることを考えていきましょう。
1.プロット作業での物語への解像度が低いことにあとから気付いた時
持って回った言い方をしてますが、ようするに「細部を掘り下げる作業が足りなかった」という場合ですね。書き始めてみたら最初はスラスラいけたのに、大事な部分で詰まってしまった。そういうのって、よくあるんですよ。
基本、プロットの段階で作品の九割は完成してるのが理想です。
よく「書いてみてわかることもある」とか「書いてて話が良い方向に変わった」って話、ありますよね?これはアマチュアならOKですが、プロの場合は一度プロットに戻って編集部の担当さんとお話をする必要があります。何故なら、担当さんは以前に提出してもらったプロットでしか物語を把握してないからです。
さて、書いててなんだか「こんなはずじゃなかったなあ」とか、思ったような物語になってない場合。これは簡単です、プロット作業に戻って一度整理すればいいんです。書き詰まる時は基本的に、プロットと小説本文の間になんらかの
具体的には、今の現状で書き上がってる小説本文から、逆算してプロットを起こしてみましょう。それを執筆前に組み立てたものと見比べると、意外なことが浮かび上がってきたりするんですよね。
2.書いててなんとなく面白くないと思ってしまった時
まず、基本的に創作って「考えてる時は楽しい、実行に移すと完成までは苦しい」なんですよね。小説本文を書く段階では、大なり小なりみんな
これを防ぐのもやはり、事前に組み立てたプロットがあると便利です。
プロットとは、誰が見ても「こういう小説で、こういう面白さで、ここがウリ!」がわかる設計図のようなものです。書き始めてしまうと頭に入ってるように思えますが、煮詰まったらプロットを改めて読んでみましょう。
そこに書かれていることが、今の小説本文にちゃんと反映されているか?
話の筋を追うだけで、面白さやウリがちゃんと込められているか?
そうなってないなら、少し筆を止めて考えてみる必要があります。場合によっては、書き終えた場所まで戻って、ずっとずっと前から修正することも必要でしょう。
これは手間です。
ぶっちゃけやりたくないです。
だから、実はプロットはしっかり作っておいたほうがいいんですね。
あと、俗に言う「ツマンネ病」の大半は、担保されていない評価(もらえるかどうかわからない高評価)に対する
対処法としては、自分が一番得意で、一番気に入ってるシーンを先に書いちゃいましょう。ツマンネ病になったら、そこを読み直すんです。開幕でもクライマックスでも、結末の部分でも構いません。ちょっとした折にお気に入りシーンを読んで「よく書けてるじゃん」「やっぱ、俺って私ってやるじゃん」「ちょっと直そうかな……よし、さらによくなったじゃん!」みたいに、上手くテンションを上げていければOKかなと。
3.執筆自体が嫌だ、モチベーションが上がらない時
これはストーリーやプロットにではなく、作者本人に問題があるケースです。言っておきますが、生身の人間なので心身の健康状態は創作活動に影響を出してしまって当然です。
にんげんだもの。
ただ、もしエタりたくないという気持ちがあるなら、ある程度は自分のコンディションを維持する必要があります。
個人的にはルーティン戦術をおすすめしています。最初から「気分転換にこれをやる、やったら元気になったことにして執筆する」というものですね。以前にも紹介しましたが、自分はジブリ映画「魔女の宅急便」を見ることにしてます。……まあ、最近はちょっと効き目が鈍ってきてて、別のルーティンを探してる最中なんですけど(笑)
なんでもいいんです、ゲームでも散歩でも、コーヒーを一杯飲むのでもOKです。
ただ、勝ち負けがつくものは避けたほうがいいですね。ゲームなんかも対戦ゲームやバトル要素のあるジャンルよりも「得意な自分を再確認できるゲーム」がいいでしょう。やり慣れてて、もう目をつぶってもできるぜ! みたいなゲーム。あるいは、ちょっとしたルーチンワークのような、淡々と成果が積もり積もってゆくゲームがいいでしょう。
あと、執筆は基本、みんな面倒で厄介だと思ってるんだよね。でも、頭の中の物語、プロットとして枠組みのできたストーリーの中身は、執筆でしか実体化しない。実体化しないと他者に伝えられないし、創作したという実績も残らない。執筆という辛い作業は、作品を世に出し人の目に触れてほしいなら通過儀礼なんだよねえ。
長々と書きましたが、プロの場合はかなり事情が異なります。
プロの場合、執筆は仕事です。出版社との契約に基づく事業です。書くと決めたら、書ききらねば沢山の人に迷惑をかけます。自分の評価も下げます。逆に、書ききると報酬がもらえます。それが売れれば、さらに報酬は増えます。
お金が稼げるというのは、最もモチベーションを上げる要素の一つですね。
次に、プロの場合は……自分は書けるのにエタることがあります。そうです、売れずに打ち切りになってしまうと、エタってしまうのです。打ち切りには二つのパターンがあって、一つは「予定されていた構想を捨て、短期的に完結させて終わらせる」のと、もう一つ「突然終わる、未完で放置する、次巻を出さない」というのがあります。
どっちもキツいです。
プロはエタれないのに、自分が悪くなくてもエタらされることがあるんです。
売れないのが悪いという方もいますが、売れるかどうかは実は作家の能力とはあまり直接的な関係がないんですよ。表紙のイラスト、帯、そして運です。作家の能力で売上に直結してるのは、タイトルのセンスと最初の数ページですね。
エタるってのはだから、贅沢な行為なんですよ。
アマチュアだけに許された、とっても羨ましい状態とも言えます。ただ、エタらず完結させないと成長はないぞ! みたいな意見には、自分は否定的です。作家というのは、技術的にも思考力的にも、なにをやっても力になります。生涯勉強、全てが勉強です。エタっても、エタったなりの経験値はちゃんと入るし、それを力に変えることもできます。
一方で、趣味なのに苦しみながら書き続けねばいけない状態、これは辛いです。
もっとカジュアルにエタって、また新作を書くのもいいかなと思いますよ。
ただ、苦労して完結させた作品には、確かに自信につながる価値が秘められています。完結した時にしか得られぬ経験値というのもまた、あるのかもしれませんね。
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