犯人と思わしき人物とは

バブみ道日丿宮組

お題:明るい多数派 制限時間:15分

犯人と思わしき人物とは

 教室に入ると、黒板にデカデカと自分の名前と彼女の名前が書かれてた。しかも相合い傘でまとめられてる。隣には可愛い女の子のイラストまである。

「これってなに?」

 廊下近くの生徒に声をかけると、

「全部の教室に書いてあるらしいよ」

 ニシシという笑い声。

「……」

 いたずらか何かか? それともいじめか? あるいは過激派の攻撃か?

 僕も彼女もいじめられるような背景はない。みんなと仲が良いし、変な問題に発展することはない……と思いたい。

 とはいえ、この問題は解決しなければいけない。

 教室の誰一人として、黒板の文字を消そうとしないので、前までいって静かに消した。

「これは由々しき事態ですね!」

 黒板近くの扉から入ってきた彼女はむむむと嬉しそうに腕を組む。

「犯人を探さなくてはいけません。賛成の方は挙手をお願いします。また意見がある場合もどうように挙手をお願いします」

 リーダーシップを発揮し、教室の全員の思考を支配する。

 それが彼女であり、彼女の個性であった。

 まもなくして教室にいた全員が手を上げた。

 それを満足そうに彼女は見つめ、

「さぁ、あなたも席についてください」

 こんな彼女と僕が恋人であるというのは一部の人しか知らない。

 つまり、これはその一部のものからの犯行。

 ざわざわとざわめき出す教室。

「ちなみに他の教室の文字は私が今しがた消してきました」

 彼女は僕よりもはやく登校してたらしい。

 今日は予定があるとかなんとかという話だったが?

「犯人は午前7時には到着してたものだと思います」

 いったい誰でしょうかと続けて放つ。

「私としては犯人の方が名乗り出てくれることが一番だと思います」

 僕が席につくなり、彼女は進行する。

「まぁ私が一番怪しいのは確かだと思います」

 はい?

「なにせ昨日ノートに描いたはずのイラストが黒板に描かれてたのですから……。その絵は版権があるものではなく、私が自分でイメージしたものです」

 なので、

「誰かが真似るということはできないです。深夜私の部屋にあるノートを見るなんて、私か彼しかできません」

 ですが、

「彼は違います。そうそうに寝てましたし、家を出る前も寝てることを確認してます」

 ざわつきが強くなった。

「なので、私が一旦犯人として学校に怒られようと思います。みなさんどうですか」

 賛成の挙手があがる。

「ありがとうございます。では、職員室にいってきます」

 そうして、彼女は家族会議になるまで誰かの代わりに怒られた。

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