ものがたりのつくられかた

バブみ道日丿宮組

お題:早すぎた世界 制限時間:15分

ものがたりのつくられかた

「成熟してない世界ほど面白くないものはないよ」

「またへんなこといってる」

「だってそうだろ? この世界は僕に優しくない。いつだって刃物を突きつけてくる」

「人生苦難の道だよ」

「そんなのは嫌だ。ずっと幸せでいい。苦難なんてなくていい」


 そんな会話があったのは、世界が滅びる数分前。


「まさか世界が滅びるなんてね、不思議なこともあるものだ」

「滅んだのに生きてる私たちってなんだろうね?」

「さぁ神様も手抜きをしたいお年頃だったのかもしれない」


 少年少女の前にあるのは、崩れ落ちた世界。死の香りが漂う終焉の日。


「こんだけ壊れてたら残ってるものも残ってない気がする」

「あなたがいう成熟した世界がこれだと思うな」

「僕らにはこの世界は早すぎる。もっと大人になってからにしてほしかった」


 破れた服を脱ぎ、世界を歩き始める。


「真っ赤だな。これが親の残りか」

「たぶん違うと思うな。一瞬にして爆風が襲ったのだから、血を出す暇もなかったと思うよ」

「じゃぁこれはなんだろう? ネバネバする」

「さわんないほうがいいんじゃない? 謎の病原菌かもしれない」

「もう触っちゃったよ」


 家を離れる2人。


「果たして僕らは生き残れるのだろうか」

「生きようと考えてなかった人がいう台詞じゃないよね」


 笑い声。


「なんにしてもひどい有様だ。一体何が起こったんだろうか」

「空からなにか落ちてきたね」

「爆弾?」

「どうだろう。飛行機の形はなかったし、音も聞こえなかった」

「つまりは星の外からの攻撃?」


 たくさんクエスチョンマークを作る。


「ここは全部残ってるね」

「コンビニは鉄壁なのかもしれないね」

「でも、人はいない。僕たち以外をこの数時間見てない」

「きっと消滅しちゃったんだろうね」

「そんな明るい声色で言われると対応に困る」


 ペットボトルと、賞味期限が近いパンを手に取り、外へとでる。


「カメラは壊れてたのかな。警報がならなかった」

「元々警報ついてないと思うな。あるのは高級なスーパーとかだよ」

「そうか」

 

 数時間ぶりの食事を2人はする。その目には絶望というものはない。


「泊まるところ探さないとね」

「ホテルとかあるかな」

「どうだろう? 建物らしきものはここのコンビニ以外なかったよね」

「最悪このコンビニの中で過ごすか」


 コンビニの自動ドアが開くのを見る2人。


「幽霊?」

「世界が滅びかかったなら幽霊も爆発的に増えるかもね?」

 

 浮遊するレジ袋を見つける少年。


「あれもそうなのか?」

「なんかあれだね。買い物し終わったレジ袋に似てる」

「なんだろう」


 お互いの意見を交わしあい、考えをまとめる少年少女。


「まぁいいや。これからもよろしくね」

「よろしくされました」


 2人は仲良く手をつなぎ、その場を後にする。

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ものがたりのつくられかた バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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