彼女の行動
バブみ道日丿宮組
お題:死にぞこないの結婚 制限時間:15分
彼女の行動
「架空の人物と結婚するなんてありえないことをするのね」
幼馴染は平然と部屋に入り、口を開く。学校帰りだったのか制服を着てた。
「ずっと前に約束したでしょ、あなたと結婚するのはあたしだけと。だから、市役所に行くわよ。どうせあなたのは受理されてないでしょうし」
頭を横に傾ける。受理される、されないの前に、僕は婚約届を作ってない。書いた覚えなんてない。
「いったいなんのことかわからないような顔はしないで。ずっと約束してたことでしょ」
乱暴に僕の手を彼女は取る。
「またそんな格好をして……、ほら着替えさせるからバンザイして」
言われたとおりにすると、彼女が一つ一つ僕のパジャマを脱がして、外出用の服を着させた。それは彼女がでかけたときに僕用として買ってきたもの。
サイズもコーデも完璧である彼女に作られた僕は、まさに異星人。この国に存在してたかわからない女装男子に書き換えられてた。
「なに? 不満でもあるの?」
不満は当然にある。どうして男なのに女の子の格好をしなきゃいけないのか。しかも、外に出る要件は結婚。市役所で冷ややかな目を向けられるのは予想しなくてもわかること。
だいたいなんで僕が結婚届を出したことになってるのだろうか?
「大丈夫。あなたは可愛いから、みんな見惚れるわ」
そういうことじゃないんだけど。
「あなたみたいな小心者が結婚するにはこういった強気に出る女性が必要なの。あなたは約束してたことを覚えてないみたいだけど……二次元と結婚するのは許さないわ。三次元なら多少目をつぶってあげてもよかったのだけれど」
否定を挟む彼女の横顔はいつもに増して輝いてた。学内でトップクラスの人である彼女がこうして僕の側にいるのはおかしい。
もっと釣り合いの取れる人が側にいるべきだ。
「くだらないこと考えてない? あなたの価値はあなたが決めることじゃないの」
価値か……僕にそんなものはあるのだろうか?
「あなたがいじめられて死にそうになった時、あたしはずっと知らなかった。あなたにずっと負担をしいてた。そしてあなたは学校にこなくなった。だからーー」
彼女はそれから数分黙って下をうつむいた。
「一緒に幸せになりましょう」
そこには天使がいた。
地獄に落ちた哀れな罪人を救う……そんな天使が。
「じゃぁいくわよ」
僕はあっけにとられながらも、彼女に従った。
彼女の行動 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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