第33話 サルタン皇立図書館にて

 皇帝とその近親の者が使う家はサルタンにある宮殿と一の館と二の館があるが、サルタンの宮殿近くにはそれぞれの人に大きな家が用意されている。そこには専属の使用人が控え、客人をもてなしたり、人によってはその家から宮殿に通う者もいる。自分に近しい側近や女中を住まわせている者も多い。


 平民上がりと言われようが、それはミラムも例外ではない。しかし邸宅は宮殿の近くに建てられるのが通例なのだが、本人の希望によりミラム用の邸宅はサルタンの郊外に建てられていた。


 そしてその邸宅では、今は3人の男女が暮らしている。つまりウィルとメルとラグナなのだが、ミラムからは"カグルに居た頃の近所に住んでいた仲のいい子供達"と言う事で客人扱いになっている。ユラフタスであるラグナに関しては、孤児を拾ったと言ってある。

 そんなわけでカグルの街で奇襲を受けてから、3人はミラムの個人用邸宅でお世話になっているのだった。


 そのミラムはと言えば、仮病の療養の一環としてずっと一の館に居た生活から邸宅から通う生活に切り替え、そのままそれを既成事実化してしまった。観閲式から日が経ってはいるが、今ではミラムとルフィアが自らの邸宅から通うのを不審に思う者はいない。


 ウィルたち3人は、ミラムの邸宅からサルタン皇立図書館へ通う日々を続けていた。勿論、モロス皇子からちょっかいを出されないためにも、レイクを始めとして護衛が必ず付いている。

 サルタンにもユラフタスの協力者はいるので、その人を通じて村には当分帰らない旨とお互いの近況報告をしていた。


 そしてヨナク宗派によるシナーク現地司令部襲撃の日の後も、その事を知らないまま図書館に行って資料探しに励んでいた。だがその日はミラムの女中であるルフィアも一緒だ。


「今日こそは、何か目ぼしいものがあると良いんだけどね」


 ウィルはそうこぼし、メルとラグナが各々頷いた。既に数日もの間、図書館の隅から隅まで"大災厄"や竜に関わりそうな文献を探しているが、目ぼしいものは未だに見つけられていない。

 それを案じて、今回はミラムが皇立図書館の地下の、より上位の許可状を取ってきてくれたのだ。


「大丈夫よ。皇立図書館の地下なんて、それこそ国の始まりの事とか書かれている書物があるはずだから、その中にはきっとあるわよ」


 ルフィアは励ますようにそう言った。

 サルタン皇立図書館は、建物に入るだけで許可を得なければならない施設だ。中には国内外の様々な文献が保存され、史料としての価値が極めて高い本もある。


 だが許可と言っても、平民でも100ロンドの手数料を払って許可を貰えば入ることができ、普通の史料であれば閲覧が可能である。そして図書館の地下には普通の許可では入れない、より貴重な史料を収めた部屋がある。主に古い文献や歴史的に重要な本であり、平民は普通は入る事が出来ない。

 しかし今回はミラムの手回しにより、3人分の許可状を貰ってきてくれたのだ。


「許可無き者の立ち入りを禁ず、か。今からここに行くのよね」


 メルが戸に貼ってある紙を見ながら呟いた。ウィルも実は緊張しているし、ラグナもメルも若干顔がこわばっている。

 戸を開けると、薄暗く電気の灯った階段が地下まで続いていた。


「建物内じゃ珍しいな、電気灯だ……」

「地下だもんね、明かりどうしてるんだろうとは思ったけど……」


 イグナスにおいて電気はまだ珍しい。

 電気というもの自体は、動力革命のすぐ後ぐらいに発電所が出来たことにより利用されるようになってきた。しかしそれらは基本的にはリメルァールなどの、大きい工業都市に優先して供給される。病に臥せる現皇帝が健在だった頃に各都市に治安向上を目指した街灯整備が進められたが、逆に言えばサルタンほどの街でさえ街灯程度にしか電気は供給されないのだ。

 とはいえ簡便な魔法なら使える者もまだ多い事もあって、それ以上の発展はあまり無いのも現実なのだが。


 地下に降りると、そこにも見渡す限りの書架が広がっていた。しかし平民でも入れる場所と違い、うっすら本の紙の独特の匂いがして、並ぶ本も古そうなものばかりだ。


「とりあえず20日間、ここに入れる許可を貰っているわ。その間は存分に調べて、もし足りないようならまた言ってね。ミラムに頼んでおくから」


 ルフィアがそう言うと3人は頭を下げ、すぐに各々近くの書架へと向かっていった。


 結局その日は目ぼしいものは何も見つからなかった。とはいえ図書館の地下も広く地下3階まであるとなれば、1日ぐらい何も無いぐらいで落ち込んではいられない。

 夕餉は邸宅の方で出してくれて湯浴みも邸宅で出来るので、毎日行っているユラフタスの協力者の店に寄って邸宅に帰ってきた。


 邸宅は一応個々の部屋があてがわれていたが、作戦会議や村からの情報共有をする際にはいつもウィルの部屋だった。

 ラグナは寝るときはしっかり自分の部屋に戻るのだが、メルはそのままウィルの部屋で寝ていく事も多かった。ウィルも追い返すのも忍びないのでそのまま一緒に同じ寝具にくるまっている事も多い、最近添い寝に抵抗無くなってきたなとか思いつつ。


 夕餉を終えてウィルの部屋に集まると、ラグナは懐から封書を取り出した。


「これが今日届いたものね。いつもより便箋の枚数が多いけど……」


 そう言いながら手紙を取ったが、内容を読むに連れ段々とラグナの顔がこわばっていった。


「ラグナ、どうしたの?」


 メルが堪らず声をかけると、


「あのシナークの竜が居るところ、何者かに襲撃されたって……」


 その言葉に一番反応したのは当然メルだ、シナークの竜の居るところとは即ち、メルの家である。驚いてラグナの手から手紙を引っ手繰るや、齧り付くように読み始めた。


「イグナス軍、シナークの竜がいる基地が、何者かに襲撃された模様。襲撃したるは、ノータス人の可能性高し。

 民間人を人質とし、盾としながら攻め入った模様。駐留していたイグナス軍のうち、大多数がその際の戦闘で死亡したと見られる。残りは何処いずこかへ遁走したとのこと。

 また、捕らわれている竜のうち1頭に、言う事を聞かなかったり翼が僅かに変色している等の変調が見られるとのこと。詳しくは別紙を参照されたし。か……」


 そこまで読むと先程の勢いとは打って変わって、力無く手紙をラグナに返した。


「お父さんとお母さんもまだ見つかってないのに……家まで……」


 そこまで言ってメルは、顔を覆って静かに嗚咽を漏らしはじめた。見かねたウィルがメルの肩に手を置くと、その手から腕に縋るようにして半ば抱きつくようにして大声で泣き始めた。

 気丈に振る舞っていても16歳の女の子だ。親が行方不明で家もどうなったかわからないとなれば、当然の反応だ。


 普段なら手紙を元に色々と意見交換をしたりするのだが、流石にこの状態では出来ない。なのでラグナは早々にウィルの部屋を出て、心配する使用人に事情を話しつつ自室へ戻った。

 メルも泣き止む頃にはそのまま縋るように寝てしまい、ウィルはメルを引き剥がすと自分の寝具で寝かせて、自分はその隣で雑魚寝をして一晩を明かした。


 翌朝ウィルが目覚めると、顔を覗き込んでいたメルと目が合った。起きたのを察知するやいなやメルは慌てて寝具の方に戻って、枕を抱きつつウィルを見ていた。


「お、おはよう……」

「おはよう、どうした?」


 顔を真っ赤にしてぼそりと呟くメルを見て、思わずなんだこの可愛い生き物はと思ったが、それはすんでのところで噛み殺した。


「その、昨日は……ごめん」

「あぁ――仕方ないだろ。俺だってメルと同じ状況だったら、やっぱり誰かに縋ってでも泣きたいと思うさ」


 そう言うウィルを見て、メルは何かに気がついたように言った。


「その……ウィル、絨毯の上で寝てたの?」


 確かにメルに寝具を譲ったのでウィルは雑魚寝だったが、部屋は絨毯敷きだったのでそれでいいと思っていた。


「ん? まぁな、絨毯敷きだし別に良いかと思って」

「……ごめん」

「いいっていいって、とりあえず今は先の事を考えなくちゃ」


 そう言ってウィルは伸びをしながら立ち上がり、手を差し出した。


「ほら行くぞ、ラグナも心配してるし。家と親を取り戻すんだろ?」

「うん……そうだね。私がしっかりしないとだよね」


 そう言ってメルは差し出された手をしっかり握ると、勢いよく立ち上がった。

 ラグナに言われるまで成り行きで手を繋いでいたのは、また別のお話だ。


 *


 数日後、3人は図書館の地下3階にいた。地下1階は半分やっと見て回った程度で地下2階は見てすらいないが、メルの「重要なものなら一番下にあるんじゃないの?」という発言から、地下3階から探すことにしたのだ。


 書架には『ユラントス王国史』『イグナス連邦/石炭産業における政策決定について』等々、確かに古そうな本や見るからに重要そうな本が並んでいる。


「確かに特別な許可が無いと立入禁止ってのも納得できるな」

「まったくね。ここの『リメルァール都市計画図』は何でここに?」

「リメルァールは周辺国と比べても、ずば抜けて精度の高い製品を生む重要な工業都市って聞いたことあるな。多分、他国に図面とか見られて真似されたくないんだろうな」


 メルもその辺りの詳しい事は分からないけどと言いつつ、片っ端から書架の本の表題を見ていた。


「あーー!!」


 昼餉を済ませて図書館の地下に篭り少しすると、急にラグナが素っ頓狂な声をあげた。


「ど、どうした?」

「これ……この本!」


 あまりのラグナの興奮した様子にウィルとメルが近くに駆け寄ると、そこには『ルメイ=イグナス叙事詩』と書かれた古ぼけた本が1から3まで3冊書架に並んでいた。しかも何の気なしに1を手に取り裏の貸出を管理する紙を見てみれば、昨年に貸出がされている旨が書いてあった。


 ――ここの本の貸出は出来ないんじゃなかったのか?


 貸出は出来る程にはなっているが、実際には貸出は行なっていないと図書館の司書の人から予め説明を受けていたので、ウィルは一瞬訝しんだが、気を取り直して本を手に取った。


「しかし叙事詩ってことは些か芝居ががってるものだけど、でも間違いなく歴史書だ。皇族の名に冠する"ルメイ"とこの国の名前"イグナス"か。多分これが当たりだろうな」


 ウィルはそう言いつつ、傷付けないように慎重に頁を開いていった。


 *


 その日の夕餉の後、ミラムとルフィアを交えて5人で話し合っていた。


「いい本が見つかった?」


 ミラムがそう聞くと、3人は神妙な面持ちで頷いた。


「そうなのですが、どうもやっぱり美化し過ぎているというか……」


 ウィルがそう言って、叙事詩の序文だけを書き写した紙をミラムに手渡した。


 ミラムとルフィアが顔を突き合わせてその紙を読み終えると、ミラムはおもむろに立ち上がり退出し、1冊の紙束を持って戻ってきた。


「それは?」

「ルノーセン詩篇って知ってるでしょ?」

「はい、それは勿論。小さい頃に読んだこともありますので」

「これはそのルノーセン詩篇を研究している研究者の資料なんだけど、最近になってあれはどうも本当にあったことじゃ無いかって学説があるらしいの」


 そのミラムの言葉に最も驚いたのはラグナだ。


「えっ、ルノーセン詩篇は私も知ってますけども、じゃ本当にあったことなのに創作物語にされちゃったんですか?」

「資料の文書を借りるなら、"現代において竜とは架空の存在として認識されており、この詩篇もそれに連れて創作物だとされたのでは無いか"とのことよ」


 ミラムが紙束を捲りながら読み上げる。


「でもルノーセン島なんて聞いた事が……」

「これは私の推測だけど、街の名前って実は時々変わることがあるのよ。

 "アザート"って街を知ってる? あそこは元々は"レプール"って名前だったんだけど、フール=アザートという人が大炭鉱を発見してね。その功績を称えて、その人の名前を取って改名したのよ。だから、ルノーセン島ももしかしたらどこかに名を変えてあるかもしれないわね」


 説得力のある推論に3人は頷いた。


「しかしそのルノーセン詩篇とこれと、何の関係があるのですか?」


 ウィルがそう尋ねると、ミラムはルノーセン詩篇の資料の頁を繰り、その隣に叙事詩の写しを置いた。


「この2つ、共通して言えるのは竜の力を示しているところね。でもよく考えてみて、ウィルくんとメルちゃんは中等舎あたりで習ったと思うけど、イグナス連邦の歴史の中でそんなことを仄めかすような事が書いてあった?」


 そう言われてウィルとメルは、少し考えて習った歴史を思い出した。


「いや……無いですね。"蛮人は大きな獣を従えていた"程度のものだった筈です」

「そうよね。つまり教科書に載るイグナスの歴史を作った人か、或いはもっと偉い人は竜の力について認識していながら、あえてそれを記載しなかった。とも言えるわ」


 誰かの唾を飲み込む音がいやに大きく聞こえた。


「皇立図書館の地下へ入る許可状には実は2種類あって、地下2階までしか入れないものと3階まで入れるものがあるの。今回は私達を支えてくれる軍の人に頼み込んで最上位の許可状を貰ったけど、本来なら貴族や軍の上層部の人間でも、図書館は地下2階までの許可状しか出さないはずだわ」


 ルフィアの補足に素早く反応したのはウィルだ。


「つまり地位のある人でもおいそれとこの叙事詩は見れない。それだけ"翼ある獣"の力を誰の目からも隠したかった、という事でしょうか?」


 そう言うとメルとラグナも納得しような表情を見せた。


「ええ、恐らくね。ここに前にラグナちゃんから聞いた"大災厄"の話を組み合わせれば、イグナス連邦の先人達は巧みに歴史を操り、この土地をさも蛮族、つまりユラフタスの人達を討伐して手に入れた土地という風にしておきながら、その一方で竜の恐ろしさについては十分認知していたと言うことになるわね。

 それで、その叙事詩には誰かが借りた形跡があると言ったわね?」

「はい」

「ならそれはこちらで探らせるわ。もっとも、恐らくはモロス皇子かそれに近い人だろうけどね」


 ミラムは任せとけと言わんばかりの顔でそう言った。


「でも……モロス皇子はこの叙事詩を見て、竜騎兵を思い立ったんですかね?」

「多分……ね、ただそれは調べてみないとわからないわ。それにまだ肝心のあの人がやりたい事がわからないのよ。竜を何に使おうと言うのかしら……」


 その言葉を最後に5人には沈黙の帳が下りた。

 もう夜も更けている、遠くから犬の遠吠えが聞こえていた。


 *


「なんか、ますますわからなくなってきちゃったね」


 メルの言葉にウィルとラグナは唸った。

 ミラムとルフィアを交えての話し合いの翌日、3人はもはや日課のごとく図書館へ向かっていた。


「本当にね。一度ノーファン様とじっくり話したいけど、そうそう気軽に帰れる距離じゃないしなぁ」

「一回ぐらいラグナの村に帰る? 親御さんも心配してるでしょうし、それに結局二度目の襲撃は延期になったんでしょう?」


 ミラムの言う事をユラフタスの村に伝え、村ではすぐにでも二度目の奪還作戦が計画されていたようだった。

 しかし村からの手紙では、暴走気味なリンゼンにコルナー達を率いらせるわけにはいかないとの事で、準備が滞っていたようだ。そのうちに肝心の竜のいるシナークの方で大規模な動きがあったという情報が伝わり、ユラフタスも動くに動けなくなってしまったらしい。


「しかし、昨日ミラムさんが言ってた事が引っかかるなぁ。何故竜の強さを皇族平民に関わらずひた隠しにしようとしたのか……」

「そしてモロス皇子が竜をどうしたいのかって話ね」


 邸宅に泊めてもらってるのだから……と言う事で、夜に集まってる時に時々乱入してくるミラムとルフィアの愚痴聞き係に徹していた3人だが、それを聞くにつれてモロス皇子への不信感は募る一方だった。


 しかもそのモロス皇子が最近になって、側近や侍従以外の者と接触している事が多くなったとの情報が入ってきているとのことだ。ミラム自身もあまり面倒事に巻き込まれたくないものの、第二皇子であるローランド皇子にも会ってみようという話もしていた。


 昨日の発見もあって勇んで地下3階に向かった一行だが、結局その日は目ぼしい1冊の本が見つかっただけだった。


「今日はあの"竜の目撃情報"って本だけかぁ、しかも結構古いものばかりだったし」

「最新でも新暦750年辺りだったし、あの情報の全部が全部竜を見たって訳じゃなさそうだしね」

「そうそう都合よくは行かないよねぇ」


 そう3人がぼやきながらユラフタスの協力者の店へと歩いていると、その話題には滅多に口を出さない護衛のレイクがおずおずと口を開いた。


「あの……ちょっと気になったので宜しいですか?」

「レイクさん、どうしました?」


 レイクはあくまで護衛なのでこの問題については口出しをしていなかっただけに、3人は少し驚きつつも、次の言葉を待った。


「お妃様の護衛たる私があまり口出しするものではないとは思いますが……

 竜の目撃情報なんて市井では、特に市座いちくらでは法螺話としてよく出回る話です。それを何故国が管理し、図書館の奥底へと封印する必要があるのでしょうか?」


 言ってる意味がわからず首を傾げていると、レイクが再び話し始めた。


「今でこそあの懸賞金の件の読売もあって、半信半疑の者もいるでしょうが、竜の存在はイグナス国民の知るところになっています。しかしそれまでは架空の生き物として扱われていたはずです。

 そんないる筈無いと信じている生き物を見たと言う曖昧な情報を、何故徹底的に管理して容易には目に付かない場所に保管したのでしょうか」


「……国民に竜の存在を気取られないため?」


 レイクの言葉に真っ先に反応したのは勿論のことウィルだ。


「どういうこと?」


 ラグナが尋ねた。


「目撃情報には目撃した場所も書いてあったよな?」


 メルとラグナが頷く。


「例えばあれを、そうだな……集めて地図にでも落とし込めばどの辺りを中心によく目撃されるかがわかるわけだ」


 その言葉にメルが何かに気が付いたように顔を上げた。


「じゃあ竜が強さや能力について教科書なんかで隠されていたのも……」

「ああ。恐らくは、平民や貴族、皇族に関係無く、間違っても竜を捕まえて破壊活動に従事させない為だろうな。そうでなければここまで周到に隠す必要は無いし、むしろ架空の物語として定着しているルノーセン詩篇なんかで"竜なんているわけがない"という感覚が根付けば良しってところじゃないか?」


 その通りだとレイクが頷いた。


「でもなんでそこまで面倒な方法で……そもそもルノーセン詩篇は、イグナス国民ならみんな一度は読んだことあるぐらい有名な本なのよね?」


 ラグナの言葉にレイクを含めて3人が頷く。


「皆が"竜は架空の存在"として知ってほしかった理由がわからないのよね。存在を隠したいのなら、ルノーセン詩篇なんて世に出回らないほうが確実なんだし」

「もしかしたらそれも、あの村の古文書に何かあるのかもしれないな。あるいは図書館のまだ見てないところにそういう本があるのか」

「いずれにしても、もっと詰めて探さないとダメそうね」


 メルはげんなりした表情を浮かべていたが仕方ない、ともすれば"竜を救う"という目的を忘れそうになるが、隠された真実を暴いていくのが楽しくないのかと言えば嘘になる。

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