第49話 50億の使い道として

世界は醜かった。

しかし.....その世界を俺が。

違うか。

周りのみんなが.....壊してくれた。


出会いもあった。

別れもあった。

でも俺は.....今がとても幸せだとそう感じる気がする。


そして今以上の幸せは.....無いと思っている。

だから俺は美幸を.....幸せにする。

そう思いながら.....俺は美幸と2人でやって来た。

最後の場所に、だ。

美幸の家である。


「.....始まりの場所だね」


「.....そうだな。.....そもそも親父さんとはまだ決着ついてないしな」


「.....ねえ.....達也」


「.....何だ」


「.....私。本当に怖いんだけど.....」


美幸は体を震わせる。

俺は美幸のその姿に.....頭に手を乗せた。

それから笑みを浮かべて.....真剣な顔になる。

大丈夫だ、と言い聞かせながら、だ。

そして美幸を見る。


「俺はもう大丈夫。.....やっていける。.....お前と一緒なら」


「.....そう.....だよね。きっとそうだよね」


「.....親父さんから貰う。お前を」


「.....うん。.....だね」


正式に結婚を申し出ようと思う。

俺は美幸と、だ。

美幸はまだ幼いので.....20になったら結婚する。

俺は.....全てを捨てででも美幸と結婚するつもりだ。

だから.....覚悟は決まっている。


「.....ねえ。達也」


「.....何だ」


「.....私と出会った頃の事.....覚えてる?」


「.....あの日は忘れられないな。.....お前もお前だったしな」


「.....うん。.....あの日から.....きっと変わったんだよね。私も竜也も」


だな。

と俺は頷く。

それから俺達は.....玄関から入った。

そして手を繋いだまま.....玄関を見ると。

そこには親父さんが立っていた。


「.....お父さん.....」


「.....ご無沙汰です。.....お義父さん」


「.....達也くん。君にお父さんとまだ言われる筋合いは無い。.....だけど気楽にしたまえ。今日は.....全てを考えなくてはいけないだろう」


「.....はい」


「.....お父さん」


何だ、と親父さんは振り返る。

それから美幸は、乱暴しないで、と告げる。

不安そうな眼差しで、だ。

俺は.....その姿に少しだけ複雑な顔をしながら親父さんを見る。

分かってる、と親父さんは答えた。


「.....もう何も言わない。お前達の関係には。.....達也くんの熱意は感じられたからね」


「.....お父さん.....」


「だけど一言だけ言わせてもらう。.....私も.....親だ。.....だから見間違えたくはない」


「.....!.....大丈夫だっ.....」


そこまで言った美幸を遮る。

それから廊下でそのまま土下座をした。

これ何時ぶりかな。

土下座したのが、だ。

思いながらこう告げる。

顔も見えないが、だ。


「.....俺に娘さんを下さい」


「.....!」


「.....!?」


「.....俺は.....幸せにしたいんです。美幸を絶対に!」


「.....達也.....」


涙声になる美幸。

俺はその声を聞きながら顔を上げる。

そこには.....困惑している親父さんが居たが。

盛大に溜息を吐いた。

そして俺達に指示を出す。


「.....こっちに来るんだ」


「.....あ。はい」


「.....?」


それから客間に通されて大きな机を見る事になる。

そこには.....通帳や書類があった。

俺達は?を浮かべながら見つめ合う。

すると直ぐにその答えが出てきた。


「.....通帳だが。.....これはスイス銀行の書類だ。.....50億入っている」


「.....まさか.....お父さん!?」


「.....これを正式にお前達に授けたいと思っている」


「.....まさか.....」


俺は驚愕する。

それから親父さんはこう話した。

日本銀行では.....50億も通帳に入れれない。

だから世界銀行に預けている。

私は.....もう本当に長くはないだろう。


「.....だから君に授ける。君なら.....美幸も美里も。或いは.....その周りも守ってくれるだろうと.....信じているから」


そう言いながら。

俺の顔をジッと見てきた。

まさか、だと思ったが。

美幸は頷く。

確かに俺はこの件で話をしに来たけど.....でも。


「.....俺は.....受け継がないです」


「.....何?」


「.....お父さん。.....私は必要最低限のお金以外のこのお金を寄付しようかと思ってる」


「.....!?.....それは何にだ」


「.....医療関係者に。お父さんの治療の為に」


驚愕する親父さん。

これは.....美幸の考えだ。

美幸は俺との間でも、お金は要らない、と断ったのだ。

それから親父さんを見る美幸。


「.....私.....お父さんに生きてほしいから」


「.....お前.....」


「.....前は死ねとか思ってたけど。.....でもお父さんには生きてほしい。.....その考えはあるかどうか分からないけど。日本はそれでも医療では世界一だから!」


「.....そうです。お義父さん」


「.....」


全く。

君達は.....。

頭がおかしいな、と親父さんは苦笑する。

お金には興味が無いのか、と親父さんは語る。

俺は、無いです、と言葉を発した。


「.....俺は.....貴方に生きて俺達の結婚式を見てほしいです」


「.....」


「.....だから治療費に使って。お願いお父さん」


「.....分かった。.....じゃあそうする事にする。.....私は.....その為に.....使う」


それから親父さんは俺を見てくる。

そしてこう話してきた。

私の負けだ。

君は.....本当に私以上の子だよ、と。

親父さんは俺に向いてくる。


「.....お金は最低限の分だけ振り込む。.....それから.....私は.....治療に励む事にする」


「.....それで良いんです。.....お義父さん」


「私はお義父さんでは無いがな」


「もー。何時まで言っているの!お父さん!」


「アッハッハ」


そして取り敢えず.....俺達は結婚を許された。

また何度も関わりながら.....高めていこう。

今を.....越えながら。

全てを優しく見ながら、だ。

俺と美幸は笑顔を浮かべながら.....親父さんの姿を見ていた。


それから.....あっという間だ。


何年か経過。


遂に.....美幸との結婚式の日が訪れた。

仏前式と呼ばれる.....結婚式である。

何故そうなったかといえば。

しきたりらしいのもあるが.....。

これも親父さんが許してくれたお陰だな、って思う。

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