グランドフィナーレへのカウントダウン

第48話 城島という人間

それからの事だが色々あった。

色々あったってのは簡単に言うと.....言い表すには少し説明がややこしいぐらいであるのだが。

何だか.....そうだな。

本当にあっという間の時間だった。


俺は.....この街の4年制大学の大学生になっている。

3年の月日が流れたのだ。

ただし.....まだ城島の件は解決していない。


しかしながら十影家が城島の居場所を探し出した。

俺達はその事で.....とある場所にやって来る。

それは.....城島の住んでいる場所である。

この街の.....スラム街の様な.....住宅街に城島は住んでいた。


俺達は眉を顰める。

誰と一緒なのかと言われたら一応、仁とミーシャと一緒だ。

コイツらマジに強いしな、と思いながら。

それにバックに一応相当な権力もあるみたいだし。


「まあこれで本当に最後だろうな。.....しかし城島の家って汚ねぇ家だな」


「.....俺も想定外って所かな」


「ですね」


城島って金持ちではないのか?

まさかトタン屋根のしかも築何十年と経過してそうな場所。

こんな落ちぶれた様な場所に住んでいるとは.....。

思いながら目の前のインターフォンを押す。

すると.....ドアがいきなり開いた。


「.....誰だ」


「.....アンタ城島か?!」


そこから出て来たのは。

まるで面影の無い城島の姿だった。

と言うか.....酒の匂いが凄いな.....と思える様な。


アル中の様な感じの城島だった。

俺はその姿に困惑する。

眉を顰める。

すると代わりに仁が聞いた。


「.....アンタ城島か。.....何でそんなに劣化してんだ」


「.....簡単に言えば.....住んでいた場所とかから蹴落とされてね。馬鹿どもめ。俺を理解しないとは。それで酒を飲んでいたら.....この様だ。もしかしてと思うがお前らは婚約者の事について来たのか」


「そうだな。.....だけど予想外だ」


「心配するな。.....俺はもうおそわねぇよ。つーか.....体がボロいから何も考えられないっつーか」


酒をガバガバ飲む城島。

この野郎。

生島に散々迷惑をかけておいて。


それに姉妹にも、だ。

完璧に舐め腐ってやがる。一発でも殴ってやろうか、思ったのだが。

それをミーシャが止めた。


「拳を汚す必要はありません。達也様」


「そうだな。.....これは帰っても良いかもだぞ。達也」


「.....ハァ.....」


そんな会話をしていると。

城島が口を拭いてから俺達を見てきた。

お前らのせいで負けたが.....、とか呟きながら、だ。

それから踵を返してドアを閉める。


「その面がムカつくし.....帰れよ」


そう言いながら、だ。

何だってんだクソッタレ。

胸糞が悪い。


俺は思いながら腹を立てる。

のだが.....仁とミーシャがそれを止めてくる。

そして仁は苦笑いを浮かべた。

それから肩を組んでくる。


「.....仮にもあんなボロで逆に良かったんじゃね?.....あれじゃ何も出来ないだろ。クズはクズらしく、だな」


「ですね。仁さん」


「.....そうかね。.....まあお前らが言うならそれで良いかもしれないけど。.....でも腹立たしいな」


「既にもうかなりの天罰は降っていると思うぜ。.....でもまあ十影のおいちゃんがどうするか分からんが」


「確かにです」


まあ確かにな。

これでスッキリしたよ。

多少なりともクズがクズらしくなっていて、だ。


俺は考えながらその事に溜息混じりに納得した感じを見せる。

それから俺達は帰る事にした。

みんなが待つ場所に、だ。


「.....しかし意外だったな。.....まさか蹴落とされて酒中毒ってか。.....クズらしいな。城島は」


「.....正直.....あそこまで全てが落ちていると.....何か思うところがあるがな」


「.....駄目ですよ。達也様。.....甘過ぎます。.....城島のやってきた事を考えると.....今でもまだ甘いと考えます」


「.....そうだな。ミーシャの言う通りだぜ。達也。あんなにオンボロになって初めて良かったと思ったわ色々と」


仁とミーシャは眉を顰める。

その2人の意見を聞きながら。

俺は顎に手を添える。


それから.....空を見上げた。

さて.....俺は.....どうあるべきなのか。

考えながら.....俺は全てを思いつつ目を閉じる。



今の状態を表現すると。

先ずミーシャとユールだが城島の監視をしている。

それから.....俺と美幸は正式に付き合い始めた。


結婚を前提としている。

美里は.....俺の事をサポートする為に俺と同じ大学に通っている。

家を出てから実家に帰った。

仁も俺と同じ大学だ。


それから.....美鶴さんだが新しくカラオケ屋を営み始めた。

生島も正社員になって.....働いている。

その中で夢有さんだがアメリカに行った。

そして生駒先輩と.....付き合っているという。


ああ、言い忘れたが.....仁は付き合い始めた。

誰と言えば.....そう。

琴ちゃんと、だ。

血が繋がってないならそれも良いと思う。


俺達は成長したのかもしれないし。

成長してないのかもしれない。

俺は.....この先。

どういう人を思い、どういう形で生きるべきなのか考えてしまう。


優しすぎると言えばそこまでだが。

考えながら.....俺は文章を綴る。


日記帳だ。

美幸との記録を残したくて書き始めた。

そんな俺に声を掛けてくる美幸。

高校の制服が似合っている.....帰ったばかりの美幸。


「達也」


「.....どうした。美幸」


「.....何をしているの?」


「.....見て分かるかもしれないが.....日記だ」


「そうなんだ。.....私達の事?」


「.....今日の事もな」


俺達は敬語を使い合うのを辞めた。

それは.....俺達の仲を考えると当然の決断だと思う。

俺は.....思いながら御幸に微笑む。

それから.....真剣な顔になる。

すると先に真剣な顔になっていた美幸が俺に聞いてきた。


「.....城島.....どうだった」


「.....見事なクズだったよ。.....酒癖の悪いね」


「.....そうなんだね。聞いた通りだったんだ」


「.....そうだな」


すると美幸は後ろから抱きしめてきた。

それから俺にキスをしてくる。

俺は驚愕しながら美幸を見つめる。

その姿は紅潮で.....笑顔だった。

そんな姿を見ながら.....俺も紅潮する。


「.....愛あれば勝つから」


「.....まあ確かにな」


「.....だから心配も要らない。きっとね」


「.....そうだな。こう言うのも全て愛で吹き飛ばそうな」


「だね」


くすくす笑う美幸。

俺はその顔を見てから幸せな思いを抱く。

そして.....笑顔を浮かべた。

それから.....また真剣な顔になる。


「.....俺は.....お前をどう幸せにしたら良いかな」


「.....?.....達也?」


「.....俺な。.....お前を愛しすぎるから.....困っているしな」


「もー。達也のアホ。恥ずかしい」


そんな歯に噛む顔を見ながら俺は頬を掻く。

ハハハ、と言いながら、だ。

美幸は嬉しそうに俺にイチャイチャしてくる。

頬擦りも、だ。

俺は少しだけ恥ずかしかったが.....美幸にされるがままになっていた。


「.....でも城島のクズがそうなって良かった。.....私は幸せ」


「.....そうだな。これで潰れたしな。色々な厄介ごとが」


「これで満遍なく達也とイチャイチャ出来る!」


「オイオイ.....」


思いつつ.....美幸を見ていると。

インターフォンが鳴った。

見てみると.....酒を持った仁達が居る。

何をしているんだ.....。

夕方になっても元気だな。


「.....仁。行くからちょっと待ってな」


『おう。早く開けろ。しんみりしているだろうと思ってな!お前が!クレープ食おうぜ!』


「お前らしいな.....全く」


そして俺は苦笑しながら.....ため息混じりに玄関に向かう。

美幸と苦笑の顔で見合わせながら、だ。

クレープと酒はあわねぇ.....。

考えながらそのまま玄関を開ける。


「仁。クレープと酒はあわねぇだろ」


「まあまあ。クレープはまあ置いておいて。取り敢えずお前と話がしたいからな」


「そうだよ。だから呼んだの。達也」


「.....お前が犯人か.....」


俺は額に手を添える。

それから盛大に溜息を吐きながらも。

何だか.....嬉しい気分になる。

安心した気分だ。

しこりが取れた気分だ。


「.....入れよ。まあ」


「そうそう。お姉ちゃんも」


「おう。当たりめぇよ」


「そうだね。ミーシャ。ユールちゃん。行こう」


誘う美里。

で。

それからはどんちゃん騒ぎだった。

近所迷惑になるから早めに帰ってもらったが。

何というか俺は横に居る婚約者と共に。

みんなのその姿を(仁は腹踊り、ユールとミーシャは酒を飲まずに大騒ぎ)を見ていた.....仁の野郎。女子が居るのに。

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