第47話 右手を重ねて

日曜日当日になった。

生駒先輩はアメリカに行ってしまう。

俺達はその事に準備を急いでいたが.....何と夢有さんが先に動いてしまった。

予想外の出来事である。


その為に俺達は大慌てで追い掛けた。

取り敢えずは空港まで行く事になってそのまま追い掛ける。

まるで刑事ドラマの追跡劇だった。

こうして追い掛けるのが、だ。

俺達はひょこっと顔を出して伺う。


「それにしても夢有さんもかなり本気出したな」


「だなぁ.....そう思う」


「これって何だか.....相当に怪しいんだが三菱」


「ウフフ」


俺、仁、美幸、生島。

その4人は空港まで追跡してきた。

丁度.....タクシーとか駆使して、である。

タクシー代が3000円も掛かったが、そんなことは気にしないですよ、と美幸が全額マジに払ってしまった。


良いのかそれで、と思うのだが.....。

そして.....今。

夢有さんと生駒先輩が見つめ合って2人きりになったのを見ていた。


俺達はグラサンをかけ影に隠れている。

バレない様に、だ。

それから俺達はニコニコしていた。


「.....陰ながらこれって怪しいと思うんだが.....」


「まあそういうな。生島。多分大丈夫だしな」


「いやいや。三菱。これって保安員に見つかったら大変だぞ。まあ例えば警備員とか.....」


「おっとちょっと待て生島ちゃん。動くぜ」


仁の言葉に夢有さん達を見れば確かに動いている。

俺達は顔を見合わせてからそのまま動く事にした.....のだが。

突然背後から声を掛けられた。

まあその.....警備員にマジに声を掛けられたのだ。


「君達。ちょっと良いかね。怪しい人影があると聞いてね」


「.....よし。逃げるぞ!三菱!」


「確かにな!逃げた方が正解だ!」


くそう。

本当に警備員が来るとは!

あ!こら待ちなさい!、と声がするが。

ダッシュでバラバラになって逃げた。

夢有さんの事も気になるが!


取り敢えずは学校に迷惑が掛かるし!

親にも迷惑が掛かる!

逃げなければ!


「ahaha!楽しいな!これ!」


「ahaha!、じゃねーよ!全く楽しくねぇからな!仁!」


俺達は猛ダッシュでその場から離れる。

それから空港の外まで逃げた。

全く困ったもんだな.....、と思う。


夢有さんにもバレてしまっただろうなこれ。

思いつつ.....俺達は休憩する。

すると目の前に人影が.....。


「やあ」


「.....生駒先輩.....」


「生駒先輩。チース」


「.....全く君達は何をしているんだい?.....もしかして夢有ちゃんの事が心配になって?.....時間が無いけど追い掛けて来たよ。君達が居たしね」


「.....まあ.....本当に世話になっていますし。気になっているんですよ。生駒先輩。.....その。もし良かったら.....夢有さんと付き合ってくれませんか」


少しだけ苦笑気味な顔をしたが。

生駒先輩は何時もの笑顔を浮かべてから回答した。

勿論、そのつもりだ。

と言いながら、である。

ん?という事はまさか.....。


「付き合い始めたよ。.....全く。君達のお陰でね」


「.....良かった!」


「.....おおうマジか。良かったな。達也」


「だな。仁」


それから俺達は笑みを浮かべる。

まさか本当に付き合い始めるとは思ってなかったので、だ。

こういうパターンって駄目な事が多いしな。

俺は思いながら.....少しだけ安堵する。

すると生駒先輩は俺達を真剣な顔で見てきた。


「.....それでね。.....達也くん。君にお願いがある」


「.....何でしょうか」


「僕はアメリカに行く。.....美都子ちゃん代わりに見守ってあげてほしいんだ。僕も協力するけどね」


「.....それは.....任せて下さい」


「.....俺も協力するよ。達也」


「おう。助かるぜ」


そんな感じで会話していると。

奥の方からゼエゼエ言いながらやって来た。

誰がと言えばバラバラに散った奴ら。

つまり美幸と生島だ。

俺達は顔を見合わせる。


「.....酷い目にあった.....」


「ですね.....」


そんな2人は俺達を発見してから目を丸くした。

生島も美幸も、だ。

その2人に手を振る生駒先輩。


それから、おっと。時間が無い、と言いながら俺たちを見てくる。

そしてまるで俺達に宣言する様に言った。

特に俺に注目している。


「君達に出会って本当に楽しかった。.....次会うのは1年後になるから。.....ごめんね。.....特に達也くん。.....君は本当に面白い子だ。.....美都子の事、頼みます」


頭をゆっくりと下げる生駒先輩。

俺はビックリしながらも、大丈夫です、と頷いた。

それから俺は胸を叩く。

すると.....奥からその主役2がやって来た。

夢有さんだ。


「.....こんな所に.....何をしているのみんな」


「.....まあ色々。.....それにしても良かったな。.....夢有さん」


「.....みんなのお陰かもね。.....とても.....とても嬉しかったから」


「.....良かったな。本当に。アタシも嬉しい」


「.....有難う。生島さん」


そして俺達は笑みで顔を見合わせた。

すると仁が、胴上げしようぜ、とか言い出す。

いや無理だろ。

俺は首を振って否定する。

その代わりの事を提案した。


「.....胴上げじゃ無いけど.....よくあるじゃん。バレー部員とかがやるやつ」


「.....ああ。円陣だったか?あれ組むのか?」


「.....違う。手を重ね合わせるやつだ」


「.....成程な。それは良いかもな」


仁は納得しながら。

そして俺は周りを見渡して頷きながら。

生駒先輩の旅路に.....希望が満ち満ちている様に。

全員で右手を重ねた。

それから頷く。


「よしこうなったら、頑張っていくぞ!、だな」


「.....だな。まあそれでいくか」


「.....じゃあ頼むよ」


「.....私も応援しています」


それから6人で右手を重ねてから全員バラバラに叫ぶ。

いやいや全然関係無いじゃねーか!!!!!

俺は思いながらもその場は爆笑の渦に飲まれた。


まあ良いか。

楽しかったら何でも.....な。

夢有さんも.....上手くいったしな。

思いつつ.....俺は笑みを浮かべつつ。

美幸達を見た。

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