美幸、かつてない程に暴走する

第41話 子供が欲しいです

そんな告白祭もあった激闘の体育祭は幕を下ろす。

俺は玉入れでまあ.....ボロクソに相手に粉微塵にやられた。

ついでにリレーも3位だった。

ボロクソである。


まあでも何とか俺の所属する白組が勝利した。

結論から言ってやり遂げた感はする。

そんなに素晴らしい汗とは言わないが流せただろう。


得られたものは、疲労、だけだろうけど。

俺達は体育祭を終えて自宅に帰りながら横を見る。

そこには俺の彼女になった美幸が歩いている。

俺の視線に気が付いたのか顔を上げながら.....赤くなってはにかむ。

美里達も俺達の様子に苦笑する。


「えへ、えへへ。恥ずかしいです」


「.....お前な。そんなに恥ずかしがったら俺も恥ずかしい」


「だ、だって嬉しいです。私が.....彼女になれたのが。貴方の傍に居られるのが」


そんな言葉を発しながら俺の手を握ってくる美幸。

それから俺の手を優しく包む。

それはまるで和菓子でも製造する様な感じで、だ。

俺は少しだけ強く握り返した。


「おー!全くお前らお熱いのう!ハッハッハ!!!!!」


「お前も熱いだろ」


「それはお前のせいだ。.....全く」


「誰のせいだよ。最初は」


俺は眉を顰めながら.....仁を見る。

全く、と呟きながら俺は額に手を添える。

それから盛大に溜息を吐いた。


仁の横には恥ずかしがる琴ちゃんが立っている。

赤くなってブツブツ言いながら、だ。

念仏の様に、である。


「学校中に.....恥ずかしい.....」


と呟いている。

俺はその姿に美幸と美里を見てから苦笑い。

因みに俺の親達はみんな仕事で用事があると言って席を外し。

剛さん達も帰った。


俺達は家で取り合えずパーティーでもすっか、となって帰っているのだ。

取り合えず打ち上げみたいな感じだ。

4人で、である。

俺達以外はみんな忙しい、という話になったので。

取り敢えずは楽しく出来れば、と思う。


「しかしお前がこんな形で告白するとはな。美幸」


「.....私は決めていました。絶対に告白するって。だから達也さんに言ったんです。好きって」


「.....そ、そうですか」


恥ずかしさで頬を掻く俺。

それからリンゴの様に赤面しながら美幸を見る。

美幸は俺に対して柔和にほんのり赤く見つめてくる。

美里は、もー。イチャイチャしないの、と苦笑いで見る。


「でもそれはそうと何でお父様と病院に行ったの?さっき。生島さんも一緒だった様な感じだったけど.....」


「.....え?.....あ。.....えっとそれはな」


俺は目を丸くする。

突然、美里にそう言われて俺は戸惑ってしまった。

俺は顎に手を添える。


どう説明したものか、と思いつつ、である。

そうしていると仁が割って入って来た。

サポートする様に、である。


「まあまあ美里ちゃん。さっきくじいたみたいでさ。コイツ。リレーの時にだけど。間抜けだよな」


「え!?そうなの!?大丈夫なの!?」


「そ、そうだな。確かにな。念の為に病院に行ったんだ。それで寄り道だったんだ。すまなかった」


美里は、そうなんだ.....、と心配そうな顔をしながら俺を見る。

当然ながら美幸も、だ。

俺を、心配、と見てくる。

困ったもんだな.....。

嘘を吐くとこういう感じになってしまうからな。


まあでもマジに助かったぞ仁。

ナイスサポートだと思う。

考えながら俺は仁を見つめる。


すると仁は俺を一瞥してからニヤッとして、dでも脳内もアホだけどな、と俺を見てくる。

まあ何というかこんな余計な事を言わなければ最高なんだけどな.....。

俺は睨みながら仁を見た。


「仁。お前言い過ぎ」


「言い過ぎっていうかそれはほんまやろ」


「おう言うたなお前。殺すぞ」


「やってみーや」


そんな感じで言いながらクスクス笑いつつ。

内心では少しだけ将来を心配しつつ。

俺は.....目の前を見つめる。

さてどうしたものか。

考えながら.....ふと、ミーシャの事を思い出す。

ミーシャは大丈夫だろうか、と思いながら、だ。


ミーシャは現在、剛さん達の元に向かっている。

その為に今はこの場所に居ない。

だから少しだけ心配なのだ。

ミーシャに何かなければ良いが、と思いつつ。


「それにしても楽しかったね」


「.....確かにな。体育祭もそこそこに楽しかったよ」


「俺にとっちゃきつかったけどな。お前のせいで」


「俺だってキツイわ。お前のせいで」


全く、と思いつつも。

仮にも青春謳歌している今が楽しい。

考えながら俺達は家に着いた。

そしてドアを開ける。


「じゃ―先ずは風呂入るか」


仁が言う。

すると.....美幸が俺を見上げた。

それから赤面する。


何だその反応は?、と思いつつ?を浮かべる。

するととんでもない事を言い出した。

もにゅもにゅ口を動かしながら、である。


「い、良い機会ですし一緒にお風呂に入ってみますか.....達也さん」


「み、美幸!!!!?」


「お、お?おー。すっげぇヒートアップだな。イチャイチャしてんな!アッハッハ(憤怒)」


仁達が俺を睨む.....ってオイオイオイ!

冗談だろう。

ちょっと待て!?


何を言い出すんだ!!!!!

みんな居るんだぞオイ!

俺はこの上ない真っ赤になる。


「わ、私と達也さんは付き合っています。だから一緒にお風呂に入る事をするのも当然だと思います」


「やり過ぎだ美幸!流石の俺もそれはマズい!」


「そうだよ!?美幸!?流石の私もいきなりそれは」


「そうですかね.....で、でもお姉ちゃん.....」


そう。恥ずかしいってばよ。

いきなり何を言い出すかと思えば。

と思いながらその事は何とか収まったが。

しかし美幸の暴走がこれで終わりを迎える訳がなく。

というかまるで別人の様に暴走し始めた。


次々にヤバイ事象が起こり始めた。

美幸の計画がこれだったという事なのだろうか。

勘弁してくれ!

次は美幸かよ!?



「えへへ.....これで自由ですね.....達也さん.....」


「お、お前.....これはマズいって!本当に!」


「私はこの為に告白したんですから。.....恋人になった暁には.....って思いました」


「いや!?だからと言え!?」


そんな会話をしながら。

俺は出ようとしたらトイレに押し戻された。

それも美幸さんに。

いや、何でだよ!


考えながら俺は赤くなりながら唇に人差し指を立てる美幸を見る。

艶めかしさが半端じゃない。

中学生とは思えないぐらいに艶めかしい。

その艶めかしさは簡単にいえば常軌を逸している。

人妻の様な.....。


「何で突然お前.....こんな事を!?」


「私達はどうせ夫婦になる身です。だから問題無いかなって思って暴走しています」


「いや!?俺は.....」


「私は.....嫌じゃ無いですよ?」


「そういう意味じゃない!」


どうしたら良いのだこれ!?

と思いながら居ると。

俺の下半身に手を伸ばしてきた美幸。

それから.....撫でまわそうとするが。

美幸の肩を掴んだ。


「いや。ちょっと待て。やっぱりおかしい。無理してないか。お前」


「何が無理なんですか?」


「いや。だからこういう事。お前嫌っていたじゃないか」


「.....正直に言うと私は子供が欲しいです」


「.....は?」


何故かといえば.....このままでは私達は引き裂かれるかと思ってしまいました。

仲がですが.....、と本音を漏らす美幸。

俺は見開きながら.....俺から離れる美幸を見る。


お父様は残念ながら今でも私達を認めてくれませんから。

だから強引に事の全てをいこうと思いました。

と美幸は俺を潤んだ目で見る。

本当に怖い、という感じの目で、だ。


「だから子供が欲しいです」


「だからと言ってこれは無理矢理すぎるしお前はまだ中学生だぞ」


「.....中学生だって子供産めます。.....大丈夫です」


額に手を添える俺。

それから、駄目だ、と厳しい目で告げた。

そして美幸を見る。

美幸は、え、と固まっている。

予想外だったのだろう。


「.....当たり前だが過負荷が掛かり過ぎる。.....俺は認めない。嬉しくない」


「.....じゃあ私を見捨てるんですか。達也さんは」


「そういう事じゃ無いっての。.....他に方法があるから見捨てるとか言うな」


「どういう方法ですか?私は.....方法なんて無いと思っています。だから子供が欲しいんです。今直ぐにでも」


「駄目だ。幾ら何でも有り得ない。.....まあ説得するさ。俺は.....お前の親父も母親もさ。だから見届けてくれ」


俺は笑みを浮かべながら美幸を見る。

そして美幸を抱き締めてキスをしてみる。

美幸は見開きながら.....俺を見て涙を浮かべていた。

それから思いっきり頭を撫でる。


「任せろ。大丈夫だきっと」


「.....達也さんが言うなら」


「.....何時ものエッチじゃないお前に戻ったな。.....それで良いんだ」


「.....」


美幸は。

恥ずかしがりながら笑顔を浮かべた。

それはまるで天使の様な笑顔だ。

俺は.....その姿に柔和になりながら.....。

笑みを浮かべつつ階段を見据える。


この先の.....人生の長い階段を.....である。

それはまるで空気が無い様な苦しい階段だろう。

だけど.....俺は守りたい。

この笑顔を、だ。

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