第40話 いつの間にそんな告白祭なんぞ.....。

この世界は本当に正義がある。

そして悪もある。

だけど俺はその中を生きるしかない。

それはまるで天秤の如くあっちらこっちらに傾く様な。

そんな感覚だ。


俺は.....考えながらリレーを待つ。

因みに蹴られた腹と吸わ麻薬の何かを吸わされた件だが。

今の所は特に症状が無いので美里達には.....内密にしている。

体育祭が中止になってしまうのは嫌だしな。

思いつつ見ていると。


「何かありました?」


「.....ミーシャか。.....いや特には何も無いよ」


「難しい顔をしていますから。.....もしかして婚約者様達の解雇された話ですか」


「.....それもあるね」


だけどさっきの事もある。

あの城島の屑野郎のせいで.....と。

そう考えてしまう。

キャンプファイアーが胸で常に火種がくすぶっている様な。

そんな感覚だ。

燃え上がりそうな感覚である。


「まあ何はともあれ楽しもうぜ。ほら。美里ちゃんと美幸ちゃんが踊るぞ」


「.....そういや選ばれた奴らが合同で踊るんだったな」


「そうですね。.....可愛いウサギちゃんですね」


「確かに」


見れば。

ウサギの格好をした美里と。

猫の格好をした美幸が周りを見ていた。

さながら小動物の様な感じ。


可愛いな.....確かに。

コスプレもアリだな.....。

うん.....アリだ.....。

思いながら顎に手を添えて我が子を見守る様な仕草をする俺。


「お前は変態だな」


「.....ha?殺すぞお前」


「だってコスプレに興味あるんだろ?美里ちゃんと美幸ちゃんの。変態じゃねーか」


「いや.....キョウミナイヨ?」


「嘘吐くな?」


「いやいや嘘じゃ無いって」


そんな事を言っていると。

女子達の踊りが始まる。

それから.....踊りがヒートアップしていく。

ビートに乗って、だ。

最近流行の曲であるが。

それを見ながら.....俺は安心しつつ見る。


「因みに.....美里ちゃんと美幸ちゃんは何か計画があるみたいだぞ」


「.....は?計画って何だ」


「委員会に通達してその計画を練ったみたいだ」


「.....???」


計画って何を練ったんだよ。

そんなに秘密な感じで勿体ぶらなくても良いんだが。

考えながら女子達を見ていると。

女子達がまるで.....1人の女子を注目させる様な形を取る。

つまり何というか。

中央の1人の女子に拍手を送る。


「.....え?え?」


俺は見開きながら美幸を見る。

その1人の女子は.....美幸だった。

この.....行動は?


その女子達を見る俺。

そしてマイクを持つ美里。

俺の方を見てくる美里と美幸を目をパチクリして見る。


「今年から始まったんだよ。.....告白祭ってのがな.....」


「.....は、は!?聞いてないぞそんなの!?そんなもんが出来たのか!?」


「なのでお前に告白したいんだとよ。美幸ちゃんが」


「何で知ってんだよ!!!!!」


「俺は耳が良い」


「ハァ!?」


何でだよ!!!!!

俺は青ざめながら教師達も親なども見守る中。

美幸を見つめる。


その美幸は俺をゆっくり見ていた。

赤くなりながら、だ。

マイクを手にもって髪をゆっくりかき上げる。


本当に真っ赤だ。

それを見ていると.....背後から腕輪を付けた人達がやって来る。

それから俺にマイクを渡してきた。

俺は、!?、と思いながら前を見る。

そして美幸は口をもごもごさせながら俺を見る。


『山菱達也さん』


「.....え?え!?」


『貴方が心から大好きです。付き合って下さい』


「.....美幸.....」


俺は赤くなりながら.....美幸を見る。

そして背後からマイクが俺に手渡された。

そのマイクを俺は力強く握り締めながら.....美里を見る。


美里は笑みを浮かべて俺を見ている様に見えた。

俺はマイクに声をブチかます様に言う。

息を思いっきり吸い込んで、だ。


『当たり前だ!付き合おう!!!!!』


「うっはっはwww.....あーあ。剛さんへの宣戦布告だなこりゃ」


仁のその言葉も無視で。

俺は美幸を見る。

美幸は赤くなりながら涙目で俺を見る。

潤んだ目で、だ。

そして涙を流した。

まるで真珠の様な涙を。


『.....達也さん。大好きです』


『ああ』


ったく告白祭なんぞふざけた行事があるとはな。

委員の筈の俺ですら知らなかったぞ。

全く.....、と思いつつ仁を見る。

仁はニヤニヤしながら俺を見ていた。

今度はコイツの番だな。

俺はニタッとする。


『すいません。もう1人告白したい奴が居るみたいっす』


それからニコニコしながら無理矢理マイクを仁に手渡す。

仁は、エ?、と愕然とする。

予想外の行動だった様だ。

それから、な。何だよ!?、と唖然とし赤くなる仁。

俺は満面の笑顔で言う。


「お前も好きな人が居るんだもんな!!!!!」


「そんな事はない!!!!!嵌めるな!お前は嵌めても良いが俺は嵌めては駄目だ!」


「俺ばっかり犠牲になる訳にはいかん」


「達也ぁ!!!!!」


仁は真っ赤になりながら抵抗するが。

向こうから面白そうだ、と生島がやって来て協力して仁を抑え込む。

それからコールした。

告白せい!!!!!、と。

無理矢理だったが。


「覚えてろよ.....達也」


「ハッハッハ!ダチってのはこんなもんだろ」


「.....ったく」


それから息を吸い込む仁。

まるでハリセンボンに変身する様に、だ。

それから絶叫した。


『琴ぉ!!!!!』


父兄席に居た琴ちゃんにマイクが渡される。

琴ちゃんは唖然としながらそして真っ赤になりながら。

トマトの様に真っ赤になる。

此処からでも十分に伺えるぐらいに。

俺は苦笑いを浮かべる。


『ちょ、な、何!?』


『もし良かったら俺と付き合って下さい!!!!!』


その絶叫により。

は、と目が点になる様な声が琴ちゃんからして数秒経った。

それから返事が返ってくる。

その間の時間は相当長く感じれたが。

この様な答えだった。


『兄貴の馬鹿ァ!!!!!おたんこなす!!!!!こっぱずかしい!!!!!イヤッ!!!!!』


あらあらまぁ。

と会場もみんなも俺も思っていたが。

琴ちゃんは本音を漏らす。


私は異性として血の繋がって無い貴方が異性として好きだけど!、とである。

仁は答えに真っ赤になる。

それから、琴ちゃんは更に絶叫した。

でもそれは無い!、と言いながら、だ。


『こんな場所で告白とか馬鹿なんじゃ無いの!!!!!あほぉ!!!!!』


『それはつまりオーケーって事か!!!!!』


『どっちでも捉えなさい!!!!!嬉しそうにするな!!!!!』


何その答え.....と俺も思わずには居られない。

ただただ笑いしか出なかった。

だけど.....仁も琴ちゃんも満足そうだ。

俺はつい空を見上げる。

今日も晴れ。


まさにふさわしい晴れだ。

思いつつ俺は.....その様な会話を眺め見る。

それから告白祭は進んでいった。

何事も無く、である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る