第39話 平行線の無くなりと城島の復讐

美里が記憶を失ってから随分と色々あったと思う。

まあとてもエッチだったけど。

それは俺達の絆を深めるものだったと考えれば.....と思う。


今でもそれなりにはエロい事をしてくるけどな。

美里も.....美幸も。

でも何だろうか.....それを喜ぶんじゃなくて。

言い辛いんだけどつまり嬉しいんだ。

本当に俺達は仲が良い証拠なんだなって.....その様な感じで、だ。


端的に言ってしまうと月と鼈の関係が.....崩れて。

平行線が壊れて交わって。

幸せになっている、と言える。

ちょっと幸せ過ぎるぐらいに、だ。


考えながら俺は応援を背に受けながら。

玉入れなどをやっていた。

しかしそれはそうとかなりめんどくさい.....な。

考えながらリレーのきつさを考えながら。

色々と空気やら雰囲気やらを噛みしめていた。



「おう。お疲れさん」


「殺そうかお前。マジに」


「そう言うな!楽しいだろ?アッハッハ!!!!!」


「あのな.....俺は役員があるんだぞ。なのに何故こんな事を」


「てへぺろ」


競技が終わった。

そして仁に殺意を覚えた。

殺してやるぜやっぱり、と思いつつ何らかの武器を用意しようと思っていると。

背後からバサッと俺にタオルを乗せてくるヤツが。


それは生島であった。

お疲れー!、と言いながらニコニコ.....何やってんだコイツ。

クラス違うだろ。

と思いつつ呆れた顔で見つめる。

生島は、早速で悪いが仕事だゾ♡、とニコニコする。

嘘だろお前.....。


「生島。ちょっと休ませて」


「無理だな。アッハッハ」


「という事らしいから頑張って来いアッハッハ」


ニコニコすな!!!!!

お前ら前から思っていたけど似た者同士だよな!!!!?

あくどいのもそうだけど!!!!!


まるで悪代官だ!

俺は頭を掻きむしりながら溜息を吐く。

面倒臭いこったな.....。

思いつつ生島を見る。


「何の仕事だよ」


「ん?見回りだな」


「マジかよオイ.....」


「オラとっとと行って来い。達也」


「殺すぞお前。マジにぶっ殺す」


この怠慢野郎!!!!!

だがそれを裏腹に。

首筋を掴まれて、体操服が伸びるっての!!!!!

てな感じで生島に引っ張られた。


まるでそうだな。

飼い主にワンコが引きずられていく様な。

そんな感じだった。

くーん.....。



警備というか見回りだが。

そんな事を穏やかにやっていたら.....突然俺達は校舎の陰に引っ張られた。

そして口元に何か被せられた。


闇が襲ってきた感覚だったが。

その予感は的中する。

俺は愕然とする。

それをやった人間を見て、だ。

悪が.....立っていた。


「はろぉ。達也君」


「.....お前.....城島.....?」


「そうだよぉ。城島でーす」


「.....三菱.....誰?コイツ」


生島が頭をフラフラさせながらだが警戒する。

この場にはどうやら城島だけだが.....何で元婚約者がこの場に。

最悪じゃないか。


何しに来たんだ!!!!?

最大に警戒する。

俺の中でアラートが鳴っている。

そう思っていると城島が布を見せてきた。


「これ液体麻薬って言うんだけど.....結構痺れるでしょ?アハハ」


「.....クソ.....!そのせいか.....こんなに頭がしっかりしないのは!」


野郎.....!、と地面を見る。

2重というか歪んで見える。

これはどうしたものか。


麻薬を嗅がされたのか俺達は.....!

思っていると俺の頭の髪の毛を掴まれた。

そして思いっきりに顔を上げられる。


「何で旦那に尽くしてきた僕が解雇されなくちゃいけないんだろうね。達也君。こんなに愛情を注いでいたのに.....解雇なんて。おかしいと思わない?」


「.....情けないな。ただの復讐か」


「.....どうせ解雇されちゃったし?でもその中でも君はムカつくから僕は君をボコボコにする。そういう事だよ」


「.....最低だな.....」


そんな言葉を口に出していると。

腹を蹴られた。

そして俺は唾を吐き出す。


まるで鈍痛だ。

激痛の.....だ。

鉛の様な蹴りだな!コイツ.....!、と思っていると生島が、三菱!、と声を発した。


心配げな顔で、だ。

生島まで巻き込むとは思わなかった。

困ったな.....。

考えながら.....俺は制止する。

生島を、だ。


「大丈夫だ。俺が何とかするから」


「.....アタシ、助け呼んで.....」


するとそんな生島の前に城島が立つ。

所でお嬢ちゃんは何なのぉ?、と聞く。

俺はゾッとした。

コイツ何する気だ。

体中に電気が走る感覚だ。


「あ、アンタ!こんな事をしたら捕まるぞ!」


「お嬢ちゃん。そんな事はどうでも良いのだよ?今の僕にはねぇ。ただイラつく奴をぶっ飛ばしたいだけだから」


「生島!逃げろ!!!!!」


俺は残った気力を全開で絶叫する。

生島は俺を見てから城島から逃げ出そうとした。

だがおぼつかない足取りになってしまって倒れる。

その事にニヤニヤしながら城島が居って行く。

麻薬のせいか.....!


「助けは来ないよねぇ。今体育祭だから」


「城島!止めろ!!!!!」


ニヤつく城島。

マズい。

身体がマジに動かない。


痺れて動けない。

動け身体。

錘の様な感じだな!

くそう!!!!!

どうしたものか、と思っていると。


「おーい。何してんだ?」


目の前から声がした。

そこには壁に寄り掛かっている仁が居る。

城島も俺達も見開きながら。

その姿を見る。


「何してんの達也」


「.....お前.....来るな。幾らお前でも勝てないぞ今回は」


「勝つとか勝てないとかそんな問題か?.....俺、笑ってはいるけど結構キレてるよ?これでも。.....この状態で置いとける訳がないな」


そんな仁の背後をよく見れば。

剛さんが立っていた。

城島を見据えている.....って何してんの!?仁!?

呼んだの何故剛さん!?


「これはこれは。旦那さまぁ」


「.....城島くん。君は何をやっているのか」


「見て分かる通りですよぉ。達也君が襲ってきたんです。私を。だから防御したんです」


それで俺にあまり暴力を振るわなかったんだな。

コイツ.....何処まで屑なんだ.....。

考えながら俺は立ち上がる。

だがその言葉は次の剛さんの言葉で覆る。

それは剛さんの有り得ない言葉で、であった。


「.....達也くんを私は完全に信頼していないが.....だがこの様な真似をする事はしない事を私は知っている。.....残念だがご帰宅願おうか。それともこのまま歯向かうのであれば警察にでも通報するが」


「.....ハァ.....旦那も馬鹿野郎ですね。僕はみんなを守りたいだけなんですが」


「.....」


そのまま踵を返した。

それから、良いですよ。厄介なんでこのまま帰らせて頂きます、と言う。

だがその言葉に、待て、と仁が言う。

仁は、何かしたかコイツ等に、と厳しい目で見つめる。


「.....薬は匂わせたけどぉ。.....だけど直ぐ回復するから大丈夫だよぉ」


「.....それは本当か。お前」


かなり激高した様な感じで噛みつく仁。

俺はその姿に、仁.....、と言い聞かせるが。

剛さんが割って入って来た。


それから.....肩を掴む。

眉を顰めながら.....何というか。

父親の様に、だ。


「仁くん。.....このまま手出しをするのは簡単だが厄介な事になる。君の身もそうだが.....達也君達は後で病院に連れて行く。体育祭もこのままでは中止になるだろう。それに先ずは城島が何をするか分からない今は手出しをしない事だ」


「.....しかし.....」


「.....まあそうだねぇ。厄介な事にはなるよぉ。アハハ」


そして悪魔の様な笑顔を浮かべる城島。

それから静かに後ろを向いて去って行った。

俺はそれを睨むように見ながら。

城島の次の行動を読む。


まだまだ落ち着く.....事が出来ない。

まるで空が暗い様な。

そんな感じだ。


「このままで終わるとは考えにくいな.....どうしたもんかね」


「.....仁。俺達は大丈夫だ。.....後で病院にも行くしな。今は体育祭に集中しよう」


「.....そうか?.....なら良いが.....」


仁は心配そうに俺と生島を見る。

生島も、アタシもボチボチ治ってきたしな、と笑みを浮かべる。

俺はひとまずは安心しながら.....生島を見る。

取り合えず.....どうしたものか。

考えながら俺は空を見る。


「城島については常に監視する。.....責任は私が持つ。すまない。達也くん」


「.....いえ.....」


すると仁が剛さんに声を掛ける。

これまでにない真剣な顔で、である。

俺の事が気になるのだろう。

友人として、だ。


「.....彼を逃したのには何か理由があるのですか」


「.....正直言って騒ぎを起こしたくないのだ。今は。だから逃さずにはいられなかったが。.....だが大丈夫。捕まるのは時間の問題だ」


「.....?」


「.....彼の住所も素性も全部把握しているのもあるから」


「.....そうですか」


そしてこの事件は幕を下ろした。

だが.....後悔している。

何を後悔しているかといえば生島を巻き添えにしてしまった事を。

これからは気を付けなくては、と改めて胸に思った。

誓う様に、だ。

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