第35話 俺が好きな女性は.....
体育祭の準備は順調に進んでいっていると思う。
考えながら俺はゲームをしている美里と美幸を眺め見ていた。
そして俺は夢有さんの言葉を思い出していると。
汗だくになりながらも爽やかな美幸が寄って来た。
美里はトイレに行った様だが.....うん。
何だ?
「.....こういうのも如何ですか?」
「突然どうした。.....いや悪いとは思わないけど.....」
「お姉ちゃんに負けてられませんから.....」
いやいや艶かしいって。
俺は苦笑いを浮かべながら美幸の額をそのまま弾く。
痛い!、という美幸をそのまま見つめた。
何というかそういうのは嫌いなんじゃ無かったのか、とも聞く。
すると美幸は、負けてられないんです、と答える。
「もしかしたら焦っているのかもしれませんね」
「.....そうか?焦る理由が何処にある?」
「.....何だか夢有さんを見ていると.....焦っちゃいました。.....私だって恋をしています。.....だから焦るんです」
「.....それは分からんでもないけどな。.....でもそんなに焦っても意味が無いぞ。恋は.....頑張っても実らない事もあるし実る事もあるしな」
「.....相変わらずですね。.....達也さんは」
でも私は頑張れる所まで頑張りたいんです。
と頬を緩ませて嬉しそうに赤くなりながら笑顔を浮かべる美幸。
俺はその事に頬を掻きながら、そうか、と返事をした。
それから.....俺も柔和に笑みを浮かべる。
「美幸」
「.....何ですか?達也さん」
「.....好きだ」
「.....へ?」
「.....いや。好きってのはそういう好きじゃないぞ。今は」
「もー!!!!!馬鹿じゃな不kシウkぁjjkんhふjlk!?」
何を.....って言うか。
思いっきり噛んでるな。
美幸は、へーへー、言いながら舌を冷やしている。
流石に言い過ぎたか。
考えながら俺は、すまん。美幸、と謝った。
「.....も、もう。勘違いしますからそんな事を言わないで下さい」
「そうだな。アハハ.....すまない」
「本当に誤解しますよ。そういうの。.....期待しました」
「.....だな。すまん」
でもな考えた。
それもメチャクチャに、だ。
だけどな。
俺は.....きっと美幸も美里も好きなんだよ。
だからこれは間違ってないな。
考えながらも.....俺は苦笑いを浮かべる。
それからもう一度、美幸、と声を掛ける。
「俺は間違ってない。お前が好きだ。.....これは絶対に間違ってないと思う」
「.....え.....そうなんですか.....?」
「ああ。これだけは言っておく。.....俺は美里も美幸も好きだ。.....だからどんな感じになろうともお前らを幸せになるまで見守る。.....そう思ってるよ」
「.....達也さん.....」
どんな感じになろうとも。
俺は絶対に嘘は吐けないのだ。
それだけは俺の.....心得だ。
だから本音を言おう。
そういう事で本音を言った。
美幸も美里も好きだと思うのだ。
「.....だけど最後に幸せになれるのは1人だ。.....でもな。.....だからそれだからこそ。.....俺は絶対に手は抜かないよ。色々な面でな」
「.....達也さん。.....はい。それは覚悟しています。それが無くちゃ貴方らしくもありませんから。.....貴方は貴方らしくこれからも厳しく甘く私に接してくださいね」
「.....ああ。当然だ。有難うな本当に一緒に居てくれて」
「.....はい。達也さん。だから大好きです」
そして俺は美幸に誘われてからゲームを始めた。
それから勝ったり負けたりして充実な日を過ごしたと思う。
考えながら.....居たのだが。
遂にその事が起こってしまった。
何が起こったかと言えば.....田中さんが倒れたのだ。
☆
総合病院まで慌ててやって来た俺、美里、美幸。
俺達3人は医者の話を聞く。
真っ白な髭に丸眼鏡の中年の医者は白衣姿のままレントゲン写真を見た。
それから顎に手を添えて俺達を見てくる。
「過労ですね。.....倒れた原因ですが」
「.....そう.....ですか.....」
「.....ですが過労以外にも関係はしていると思います。彼女は寿命を削っていますね.....取り敢えずは安静にするべきです」
「.....田中さん.....」
そんな感じで呟きながら。
見合う美幸と美里。
そして美里は鞄を開けた。
中からは預金通帳が出てくる。
え?、と思いながら俺と医者は目を丸くする。
「.....この金額でどれぐらい治せますか。最先端の医療が出来ますか」
「.....おま!?これ.....4億円って.....!?」
「.....私達のお小遣いです。.....今まで貯めた分です」
「.....」
俺は目を丸くしたまま医者を見る。
だが医者は首を振った。
それから、幾らお金を積まれても治せないものは治せません、と断言する。
その言葉にガッカリする美里と美幸。
だが、と医者は真っ直ぐに俺達を見てくる。
「.....治せなくても治すのが医者です。.....期待して下さい」
「.....!.....はい!是非お願いします!!!!!」
「.....」
初めて医者が格好良いなって思ってしまった。
俺は少しだけ安堵感に包まれながら。
椅子に腰掛ける。
それから天井を見上げた。
すると医者が話を続け始める。
「ですが断っておきます。.....田中さんの余命は2ヶ月だと思います」
「.....え.....」
「.....ガンの転移が激しくて。骨まで転移しています。.....痛みに堪えている事でしょう。.....彼女は」
「そんな.....何とかならないですか!?私達の.....大切な人なんです!親以上に!」
「.....」
最先端の治療はします。
勿論、全ての手を尽くします。
でも.....それでも。
決して楽観視はしないで下さい、と医者は真剣な顔をする。
俺は額に手を添える。
そして神を恨んだ。
「.....くそッ.....」
「こんな事って.....」
「.....有り得ないよね。お姉ちゃん」
そして俺達は絶望の中。
歩いて診察室を後にしてから。
田中さんの病室を覗く事にした。
その際に田中さんは俺だけを残して。
美里と美幸は席を外してくれないか、と提案してきた。
「.....どうしたんですか?田中さん」
「.....ゴホゴホ!」
「.....田中さん.....!」
「.....ゴメン。大丈夫です私は。.....本当にゴメンなさい。あ。それで話ですが.....実は.....美里様からご相談を受けましてのご報告を致したいと」
「.....何の報告ですか。ゆっくり聞きます」
実はですね。
美里様が.....美幸様と達也様を付き合わせたいと願っているのです。
と告げてきた。
俺は数秒考えて、え、と浮かべながら田中さんを見る。
田中さんは続け様にこう告げてくる。
「.....美幸様と達也様。お2人はお似合いだと。私は出る幕は恐らくは段々なくなって来ていると。.....そういうご相談でした」
「.....え.....そ、そんな馬鹿な.....」
「.....愛想を尽かした訳では有りません、と美里様はおっしゃっています。.....ですが最近の様子を見て私は勝ち目は無いと悟った様です。最近の動向もお目になさって、です。この事は内緒にしておきたかったのですが美里様からの許可を得て.....お話致しました」
「.....お、俺は美里が好きなんですよ!?そんな馬鹿な!?」
「それは本当ですか?本当のお気持ちですか?達也様」
「.....いや.....確かに美幸は魅力的な.....」
あれ?でも。
この前の告白した時。
俺は.....頭の中が美幸ばかりになっていた様な?
思いつつ.....俺は青ざめる。
よろけて椅子に座り込んだ。
そんな馬鹿な。
俺の気持ちは.....いつの間にか美幸に向いていたのか!?
そんな馬鹿な。
それであんな事を言ったのか!?
馬鹿な.....!?
「達也様。そろそろ覚悟をお決めになられても宜しいかと思われる時期だと思いました。.....婚約者様と直にお話をします。私が、です」
「.....」
「.....達也様。本音をお聞かせ下さい」
「.....俺は.....美幸が.....」
『大好きです。達也さん』
あれ?ちょっと待て。
俺はマジに美幸が好きなのか?
嘘だろこんな馬鹿な。
考えながら.....俺は額に手を添える。
確かに一番に浮かんできたのは美幸だ。
「.....俺は美幸が好きです。.....多分」
「.....そうなのですね。.....分かりました。私めが手続きやらを.....最後までやらせてもらいます。本音が聞けて嬉しいです」
「.....」
「.....達也様。.....美幸様を大切になさって下さい。勿論。.....美里様も」
「.....」
この日。
俺は自覚した。
恋をしなくなった俺が好きだと気付いたのは。
心から好きになってしまったのは.....美幸だったと。
寄り添っていてくれたのは美幸だった。
でもまだ混乱している。
決めたくない心が邪魔している.....。
どうしたらいい。
俺は.....どうすれば.....?
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