第34話 夢有の過去と生駒への想いと達也と美幸と

混浴風呂というのは神だ。

いや決して俺は浅ましい事を考えている訳では無い。

しかしながら混浴は夢とかだと思う。

全ての男子の、だ。

だから生島の提示したそのチケットが欲しい。


考えながら俺はニヤニヤしつつファミレスから帰っていた。

すると.....背後から声を掛けらる。

それは美幸だった。

美幸はニコッとしながら、どうしたんですか?、と何時もの笑みを浮かべてくる。


「いや。割と何もないよ。美幸」


「えー?そうですか?.....でも何だかニコニコしていますよ?」


「.....そうか?.....まあそうかもな。今日でテスト終わりだし」


「.....あー。私もです。.....キツイですよね。テスト」


「そうだな.....まあそれなりにはな」


その様に会話しながら歩いていると。

目の前の河川敷。

そこに.....夢有さんが居た。

それから惚けている様に見える。

何だ?、と思いながら夢有さんを見る。


「夢有さんですよね?どうしたんでしょうか」


「分からないな。.....何やってんだろうか」


そう考えていると。

夢有さんは溜息を吐きながら.....空を見上げた。

そして再びだが溜息を吐きながら俯く。

まるで.....恋こがれる様な女子高生だ。


「.....もしかして恋をしているんじゃないでしょうか」


「え?夢有さんが?.....うーん」


「.....あ。酷いですね。達也さん」


「いや。.....そうじゃないんだけど。.....彼女は恋愛をしないんだよ」


「え?」


彼女は.....男が嫌いだから。

恋愛はしないと思う。

何故かと言えば.....そうだな。


昔言ったかもしれないが俺達はかなり厄介なものを抱えてあそこに集まった。

それも生駒先輩のお陰で、だ。

救われたのだ俺達は。

その際の最も傷が深かった人物は.....夢有さんだったと思う。

かなり損失した顔をしていたしな当時は。


「.....取り敢えず声を掛けてみましょうか」


「.....だな」


そして俺達は夢有さんに大声を出した。

すると夢有さんは驚きながらも俺達に笑みを浮かべる。

それから寄って来た。

何というか興奮しながら.....またかよ。


「これはどういう感じですか!!!!?」


「な、何が?」


「つまりはあれですよね!イチャイチャしていて.....恋をしている感じですよね!!!!!」


「違うけどまあ違ってない。.....うん」


「そ、そ、そうなんですね!!!!!」


丸眼鏡が曇っている。

ああ.....割とマジに誰か助けてくれ。

あまりにも熱が凄いんだが.....勘弁してくれよ。

考えながらいると美幸が、何か悩んでいらっしゃる様でしたが、と言葉を発した。

すると落ち着きを取り戻した様に夢有さんが、あ。ですね.....、と言う。


「.....私、実は恋をしていまして」


「.....え?君が?」


「.....はい。山菱さん。.....実はですね。生駒先輩に、です」


「.....!.....成程」


「でも生駒先輩は気が付かないです。それと生駒先輩には彼女が居ます」


成程な。

それで悩んで俯いていたのか。

考えながら俺は.....夢有さんを見る。

夢有さんは、だから叶わない恋です、と笑顔を浮かべた。

顔を赤くしながら、だ。


「生駒先輩には幾度となく助けられました。.....だから好きなんです」


「.....そうか」


「.....でも.....残念ながら彼女には敵いません。だから秘めてます」


「.....でも彼女が居ても私みたいに出来ると思います」


突然、美幸がガッツポーズをした。

俺は?を浮かべながら美幸を見つめる。

美幸は、だって私だってお姉ちゃんと達也さんが付き合っていて負けそうになりました、と笑顔を浮かべた。

でも勝敗はまだ決まってませんから、と柔和な顔を浮かべる。

夢有さんの手を握った。


「.....婚約したら流石に終わりかもですが付き合っているだけならチャンスはあります!諦めるのはダメですよ」


「でも婚約も付き合っているのも同じじゃ.....」


「.....法で結ばれているのと法で結ばれてないのではチャンスがあります。絶対に諦めないで下さい。私の姿を見てくれれば。ありのままの姿です」


「.....相変わらずだね。美幸ちゃん」


「はい!」


何だか気力が湧いてきたよ。

と丸眼鏡の奥で笑顔を浮かべる夢有さん。

俺はその姿を見つつ.....笑みを浮かべた。

それから.....夢有さんに言葉を発する。


「大丈夫。諦めないで」


「そうですね。山菱さん」


「.....応援になってないかもだけどな」


「良いんです。私.....自信無くなっちゃってましたから。有難いです」


「そのイキです!」


笑顔を浮かべながら.....美幸は夢有さんの手を握る。

すると夢有さんがその手を握った。

離さなくなる。

え?、と思いながら見ていると。

夢有さんは興奮した。


「.....それはそうと.....デートですか?エヘヘ」


「ゆ、夢有さん?」


「.....私に隠れて許せませんなぁ」


「.....」


すいません達也さん。

助けて下さい、的な感じで見てくる美幸。

涙目で、だ。

こういう性格が無かったら本当に良い子なんだが.....。

考えながら俺はひっぺがした。

美幸と夢有さんを苦笑しながら、だ。



因みに問題が集まった文芸部だけに夢有さんの過去も相当深刻だ。

何故なら.....彼女と仲が良かった男性が昔、自殺した。

それで.....荒れた性格になったのだ。


簡単に言えばその男性はイジメを受けていたそうだ。

それ故に耐え切れずに自殺。

夢有さんはその男性に対してイジメを行った生徒をボコボコにして転校した。

つまりかなり強いのだが......弱いのだ。

彼女は、だ。


本来なら退学、または少年院とかそういう場所行きだとは思う。

だけど.....夢有さんは何とかそれを免れた。

それから.....また一歩を踏み出したが。

それでもまだ荒れていた。

彼女は不良になってしまったのだ。


『は?なんでアタシが文芸部?』


生島が誘うまではそんな感じで荒れていたのだが。

今に至っている。

落ち着いているのだ。

だから生駒先輩が好きなのだろう。

彼女は、だ。

そう考えながら体育祭の体育祭の色々使う物をパソコンで作っていると。


「何しているの?」


美里が声を掛けてきた。

Tシャツに短パンと言わんばかりの、だ。

俺はその姿に、色々な仕事、と答える。

それからパソコンに向いた。


「達也がパソコンで何かを作るのって珍しいね」


「.....まあな。仕事は仕事だしやらなくちゃいけないよな」


「.....確かにね。.....そういう姿も好みかも。アハハ」


「.....有難う」


美里は横のソファに腰掛ける。

それから髪を掻き上げて俺の創った物を読む。

俺はそれに苦笑しながら、パソコンに向いた。


すると直ぐに、あれ?これ間違ってない?、と指摘が。

俺はまた?を浮かべたりして、マジか?、と見る。

美里は指を差す。


「ここら辺の日程とか」


「.....あれ?本当だ。すまんな」


「いやいや。私にそんな事を謝っても仕方が無いよ?自分の事なのに。アハハ」


「.....まあ確かにな。ハハハ」


確かにその通りではある。

割とマジに何やってんだかな。

それから俺は苦笑気味に日程を書き換えたりしてもう一度、美里の指示の下で創り替える事にした。

そして.....予定表やらを創っていると。

美里が書類を置きながら話した。


「.....そういえば.....聞いた?この街の不良集団って言うか.....レッドパーティーっていうのが解散するんだって。生徒達の噂だけど」


「.....ああ。そうなのか?」


「達也知ってる?このレッドパーティーっていう総長って学校に真面目に行き始めて何か急に辞めたんだってね。名前知らないけど凄いね」


「.....そうだな」


正直に言ってしまうと。

そのレッドパーティーを掲げた不良集団は知っている。

総長の名前は、ビッグドリーム、と呼ばれていた。

つまり.....夢有さんの名前をもじったものなのだが.....。


しかし動向が注目されていたけど解散したんだな。

それはそれで良かったと思う。

そしてそれは言わない方が良いよな。

考えながら俺は頭の中の考えを言わずに、頷くだけに徹した。

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