第29話 懐中時計とミーシャと美幸と幸せと
そしてその日の昼休みの事であった。
俺は遂に屋上という場所にミーシャに呼び出され。
それから俺を見てくるミーシャ。
仁は日直の仕事もあって、気を付けろ、と言いながら俺を見送り。
ついでに美里も、職員室に呼ばれて仕事があって行けないからゴメンね。達也、と言って心配げな顔で見送った。
俺はその事もあり1人でやって来たのだが.....。
な。何でしょうか.....?、と思いながらミーシャを顔を引き攣らせながら見る。
するとミーシャはこう言ってきた。
「.....素性が。.....まあ元からバラすつもりでしたが.....とにかくバレてしまった様ですが.....私の真の役目をお知りになりました?」
「.....!.....いや。知らないな。.....どういう役目を担っていてどういう事でお前は来たんだ.....?」
「私の目的は貴方様を導く事です。美里さんか。.....はたまたは美幸さんか。この2人のどちらと貴方は付き合うのか。これらをサポートしに参りました」
「.....つまり.....俺が美里とくっ付くか美幸とくっ付くかを.....導く為に来たのか?」
「そういう事ですね。つまり全てのサポートです」
それは本当か?、と俺は聞く。
するとミーシャは、それ以上に無いですよ、と苦笑する。
それから、奥様からはこういう伝達を貰いました、と俺を見据えてくる。
奥様は美里さんと美幸さんと達也さんの幸せを願っています。
早く全ての結論を出したいと、とです。
そんな言葉を静かに聞きながら.....俺はミーシャを見つめる。
するとミーシャは、ですがそれは私の意義に半ば反するものだと考え始めました、と言葉を発してくる。
「.....人の恋愛をサポートするのは良いですが早めに決めるのに口出しをするとかなどは良くないと思い始めたんです。やはり」
「.....?.....じゃあお前はどうするんだ?これから」
「私は奥様には申し訳ないですがこれからは達也さんと美里さんと美幸さんの恋はゆっくり見守る事にします。その為に奥様にはそれなりに説明します」
「.....それで良いのか?お前。.....何か俺を観察する為に来たんじゃ.....」
「確かに私はその事もやるつもりで最初は居ました。.....でも私は達也さん達を見ていてこれは違うなって思いました。.....奥様からの指令ですが初めて反対しています」
そうなのか。
その。イチャイチャしていたのは理由があるのか?、と聞いてみると。
私が達也さんとイチャイチャしている様にしていたのは達也さんの反応やら美里さんと美幸さんの反応を見る為でした、と言ってくる。
今はイチャイチャするのを止めましたよね。それは観察を止めたからです、とも、だ.....いやまあ確かにその通りだが.....。
「.....奥様は納得されないでしょう。そして旦那様もです。.....ですが私は達也さん。.....貴方を信じてみます」
「.....」
「でも転校して来たのは事実なのでこれから宜しくです」
「.....それは別に構わないが。.....その。お前が美里の母親の所に帰って酷い目に遭ったりしないよな?それらを心配しているんだが」
「.....私には奥様しか居ませんが.....なので酷い目に遭ったりはしないでしょう。でも.....それなりに私を責めるでしょうけどです」
「.....何故.....俺に意地悪などを止めようと思ったんだ?俺の様子を見ていてだけじゃ何か根拠が足りない気がする」
「それ以外だと貴方の胸の懐中時計を見ました。それは.....田中さんの懐中時計ですよね。.....あの方が心から大切に持っておられた物を貴方に渡す。それはきっと.....貴方を心から信頼している証です。.....そして田中さんが全てを貴方に任せたという証です。.....田中さんから奪った訳では無いんですよね?私はその懐中時計を田中さんから貴方に全てを託すという意思で渡したのだったら貴方を私は守るべき立場になります。それは何故かと言えば.....その懐中時計は美里さんと美幸さんのどちらかを守る鍵となりますから。そんな田中さんが大切に思っている人を攻撃は出来ません」
という事で攻撃を止めた、とも言えます。
とニコニコするミーシャ。
俺は.....胸の懐中時計を触る。
そしてミーシャを見た。
ミーシャは更に言葉を続ける。
「田中さんが大切にしてきたものを攻撃は出来ません」
「.....成程な。.....それで俺に攻撃を止めたのか」
「.....イヤイヤながらやっていた部分もありました。.....だから良かったです。こうして終われて」
「.....お前このまま帰るのか?美里の母親とかの所に」
「帰らないといけませんがまあ攻撃はされないですから。大丈夫ですよ」
「.....」
美里さんと美幸さんを貴方はきっと守ってくれるでしょう。
と笑顔を浮かべるミーシャ。
俺は.....その言葉に、約束はする。美里と美幸は俺の大切なパートナーだからな、とにこやかに見る。
すると屋上のドアがバァンと開いた。
「心配になって早退して来てみました!!!!!やはりですか!!!!!ミーシャさん!!!!!」
「おま!?美幸!?また高校に侵入したな!」
「その。ミーシャさんに毒されてないですか?達也さん」
「.....大丈夫だ。.....そんな話では無かったしな」
え?、と目を丸くする美幸。
それからミーシャを見る。
ミーシャはニコッとして俺の腕に抱き付いて.....あれぇ!!?
俺は驚愕しながらミーシャを見る。
何やってんだコイツ!
「.....達也さん.....」
「み、美幸。勘違いするな。.....違うからな」
「絶対に違うんですよね?.....違うんですよね?」
「.....そ、そうだ。な?ミーシャ」
「え?違いませんよ?私は達也さんが好きです」
「明らかに楽しんでいるだろ!!!!!お前!!!!!そんな気持ち無い癖に!!!!!」
美幸が頬を膨らませて赤くなっている。
ミーシャ!!!!!
俺は額に手を添えながら.....盛大に溜息を吐く。
それから.....空を見上げた。
また面倒ごとが増えた、と思いながら、だ。
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