第26話 達也様が全てを守ってくれると信じております
「.....え?どういう話ですか?」
「.....私の話で.....私事で申し訳ないですが.....私、かなり若いですがステージ4の胃癌なんです。.....それも若いせいで全身に転移していて末期なんです。抗がん剤も効かないぐらいの.....」
「.....ーーーーー!!!!?」
その言葉に.....聞いて愕然とした。
世界が壊れる音が.....する
目の前の.....美里と美幸は?を浮かべて俺を見ているが.....。
俺はその言葉に静かに唇を噛む。
それから.....思い出した。
それは.....生島の遭遇した生と死を、である。
『アタシの彼氏は死んだからね』
「.....生島.....」
俺は首を振った。
それから、ちょっと話をしてくるな?、と美幸と美里に笑顔を浮かべてからその場を後にしてから.....田中さんに詳しい話を聞く事にした。
田中さんは、はい、と真剣な顔で頷く。
それから目をパチクリしている美里と美幸に頷きその場を後にした。
☆
「胃痛が止まらなかったので検査を受けたらこの有様でした。.....原因はストレスによる発症かも知れませんとはお医者様に言われましたが.....残念です」
「.....何故その話を俺にしてくれたんですか?」
「.....お嬢様方は心から仰っていました。.....達也様を心から信頼していると。だから勤めていた時のお嬢様方のこれまでの事を.....全てを。達也様にお伝えしたく存じたのです」
「.....」
「この事はお嬢様方には内緒になさって下されば幸いに存じます.....申し訳ないですが.....そして傲慢で申し訳ありません」
「.....信じられないです。.....何でそうなるんでしょうね.....」
私は働きすぎたんだと思います。
でも旦那様には認めてもらえなかったようです。
そして.....美里様、美幸様の成長の為の意見が真っ向から対立してしまってそのまま解雇されました。
今はただのしがない女性店員です。
とベンチに腰掛けたまま苦笑する田中さん。
俺は真剣な顔で田中さんを見る。
「.....そうなんですね。大変でしたね」
「私は.....お嬢様方の達也様の傍でのお嫁さんになられた姿を見たかった。お子様を見たかった。.....でもそれはきっと叶いません。.....私は.....保たないでしょうから。残念としか言いようがないです」
「.....いやいや.....そんな事言わないで下さいよ。田中さん。大丈夫ですって。絶対に.....!」
「でも現実は酷です。残念ながら私は余命半年だそうで.....。.....だからその間に全てを伝えたいと思っております。達也様に」
「.....信じられない.....」
俺の言葉に優しい笑みを浮かべてそして田中さんは語り始めた。
実はまだお嬢様方は.....婚約内定者が居ます。
しかしながらそれは今はお2人とも全てボイコットしています。
ですがそのお二人の婚約者はきっと今は満足していないでしょう。
そして旦那様。
旦那様もこの事、今の事はきっと.....満足していません。
きっと.....大変な事になります。
でも乗り越えられると思っています。
私は達也さん。
貴方ならきっと全てを守ってくれると.....信じています。
と笑みを浮かべた。
「私は.....達也さん。私は貴方様が婚約者の全てになれば何もかもが解決すると思っています。お2人の、です。.....でも.....日本では婚約出来る人は1人だけです。.....でも達也さん。貴方は全て救ってしまうんでしょうね。その辺りは本当に期待しています」
「.....俺にそんな事.....出来ますかね」
「.....出来ますよ。.....貴方は強いですから。.....それから美里様も美幸様も。.....みんな変わりました。.....だから大丈夫です。きっと乗り越えられます。絆があれば」
そして田中さんは何かを取り出した。
それは.....錆びた金色の懐中時計みたいな物だ。
俺は?を浮かべながら.....見つめる。
それからそれを手渡してくる。
「.....これはそのうち役に立ちます。.....お嬢様方を守るのに、です。.....貴方に託します」
「.....かなり高価そうな懐中時計ですが.....」
「私が持っていても仕方が無いので、です。.....大丈夫です。.....これは大切な人達を守ってくれます。お守りみたいなものです。頼みます」
そしてそれを渡してきてから。
田中さんはウインクをした。
それから.....仕事に戻って行く様に去って行く。
俺は手渡された懐中時計を開いてみる。
そこには.....3人の写真があった。
「.....」
美里と美幸と俺。
つまりトライアングルが完成している。
何の意味があるのだろう。
その様に考えながら.....俺も美里と美幸の元に戻った。
メダルゲームで遊んでいた美里と美幸が向いてくる。
何の話だったの?、と。
「.....大切な話だったけど。.....今は伝えられない。ゴメンな」
「ふーん.....そうなんだー」
「.....そうなんですね?ふーん.....」
「.....お前ら。何か勘違いしてないか」
別に。そんな事ないですもん、と美幸は頬を膨らませてツーンとする。
美里もプイッと別の方向の横を見た。
恋愛じゃないってばよ。
俺は.....盛大に溜息を吐き。
それから.....胸に入れた懐中時計を触ってから田中さんの事を思った。
大切なもの.....か、と思いつつだ。
何を指し示しているかは分からない。
だけど.....田中さんが大切にしていたものだ。
きっと何か意味があるのだろう。
そう思った。
☆
「美里。美幸」
「.....?.....どうしたの?達也」
「達也さん?」
「.....お前ら.....俺と結婚したいか」
予想外の言葉だった様だ。
疲れて休憩所の自販機の前で休んでいると、ぶは!!!!!、と飲み物を同時に吹き出した2人の美少女。
俺は顎に手を添えて真剣な顔で見る。
ゴホゴホと咳をする2人。
「と、突然何を?赤くなっちゃう」
「そうですよ!予想外です!」
「.....いや。ゴメンな。ちょっと考えているんだ」
「.....何故ですか?今考える事ですか?達也さん」
「.....やっぱ忘れてくれ。今は考える事じゃないな。早すぎる」
俺は首を振る。
すると美里と美幸は顔を見合わせた。
それから赤くなりながら俺の横。
つまり左右に腰掛けた。
そうしてから俺を見てくる2人。
「私は達也が好き」
「私もです。達也さんが好きです。.....でもどっちが結ばれるかは今は考える必要はないと思います。決まった訳じゃないですから」
「.....じゃあ例えばお前らのどっちが結婚が、付き合う事が叶わなかったとしても.....それで良いのか」
「.....私も美幸も覚悟している。.....貴方の口から好きで選んでくれるまでね。.....だから私達は貴方に全ての運命を任せているから。.....だからそれで良い」
「.....当然ですが私もです」
「.....お前ら精神が強すぎだ。.....全く」
美幸と美里は俺の手を右が美里。
左が美幸と左右から握って見つめてきた。
それから.....優しく和菓子を作る様に俺の手を暖かい手で包む。
俺は.....そんな2人を柔和に見ながら.....唇を気付かれない様に噛んだ。
言い出せない事を申し訳無く思っていた。
田中さんの事を言うのが怖い。
どうしたら.....良いのだろう。
俺は.....どう判断するべきなのだろうか.....と。
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