隠している気持ちと体育祭の準備とテストと

第21話 全くどいつもこいつも不器用だな

「ところでお前は何で琴ちゃんが好きなんだ」


「.....俺か?俺は.....まあ琴に惹かれたんだ。.....アイツ心が可愛い。和やか清らかだしな」


「.....おう。それは創作ポエムか?」


「殺すぞ」


縁側で仁と会話する。

クレープパーティーもそこそこにだが。

俺は仁を見る。


仁は、まあ叶わぬ恋だけどな、と苦笑していた。

そりゃまあ確かにな.....。

コイツの事、心底嫌っているしな。

俺は考えながらも励ます事にしてみる。


「そんな落ち込むな。ワンチャン有るって。絶対に」


「でもなぁ。お前見ているとな.....美少女姉妹に好かれているお前見ているとな.....」


「.....顔じゃないしな。.....女の子は心だ」


「.....そうだけどよ。.....あぁ.....俺だって心が清らかなのになぁ」


ワンチャンは見込めない様な感じで落ち込む仁。

俺はその姿に苦笑いを浮かべていると。

向こうの方から女の子が歩いて来た.....あれ?

あれって.....琴ちゃんでは?

考えながら仁に聞く。


「おい。その注目の本人が来たぞ」


「.....え?.....あれ?何やってんだアイツ」


そこには茶髪のロングで.....少しだけツンデレな感じの少しだけ険しい顔立ち。

整った顔立ちの美少女で両端をツインテにした様な髪型。

それから真っ直ぐに見据えてくる.....女の子が居た。

つまりの所だが美里にも美幸にも負けない美少女だ。

流石は令嬢だな、って思う。


「何やってんだよ。琴」


「.....別に。アンタに会いに来た訳じゃないし」


「.....じゃあ誰に会いに来たんだよ」


「美里先輩と美幸さん」


「.....あっそ.....って言うか知り合いなのかよ」


仁はそんな感じで驚愕する。

その中で俺は背後を見た。

そこから美里がヒョコッと顔を見せる。

あれ?琴ちゃんじゃない、と笑顔を浮かべた。

その言葉に仁を押し退けて手を振ってくる琴ちゃん。


「.....こんにちは。.....達也さんも。クソ兄貴がお世話になってます」


「クソ言うな。お前だってクソになるぞ」


「.....ところで美里さん」


無視だなこれは。

完璧無視だ。

俺は苦笑いを浮かべながら.....美里に声を掛ける琴ちゃんを見る。


仁は盛大に溜息を吐きながら.....額に手を添えていた。

相変わらずだ、と言う感じでだ。

思っているとそんな仁を撃沈させる言葉が飛んできた。


「私、好きな人が出来ました」


「.....」


「.....」


「うぁ!!!!?」


そんな馬鹿な!!!!!俺の義妹に!!!!!と絶句する仁。

それから後ろにぶっ倒れた。

俺はその姿を、うわ。シスコン、と思いつつ見ながら。

目を丸くしている美里に嬉しそうに話し掛ける琴ちゃんを見た。

琴ちゃんはニコニコしながらお姉ちゃんの様な存在の美里に向きながら。


「恋愛相談出来ますか?」


「.....出来るけど.....というか私で参考になるの?私は片想い中だよ?」


「大丈夫です。それでも。.....私は美里先輩に話を聞いてもらいたいです」


「グァ!!!!!」


ああ.....仁よ。

お前は全く参考にされてない。

俺は涙をうるっと潤ませた。


最悪.....だ.....我が義妹が.....、と撃沈している仁を、だ。

可哀想な人生だな.....コイツ。

振られやがった。


「私も呼ばれました?」


「美幸。.....琴ちゃんが恋愛相談したいんだって」


「.....それは.....また。仁くんじゃなくてですか?」


「何であんなキモいのと?違いますよー」


満面の笑顔で否定した。

キモいってwww

仁は尖った矢印に埋もれていた。


俺は、グググ、と笑いを堪える。

笑っちゃダメだ、笑っちゃダメだ、笑っちゃダメだ.....。

しかし可哀想だな.....。


「琴ちゃん。それ以上はマジにダメージが.....仁に」


「え?何でですか?」


「応急処置が必要だ。もう止めてあげて」


「.....え?」


目をパチクリする琴ちゃん。

駄目だ.....鈍感か。

俺は苦笑いを浮かべながら生島にツンツンされている仁を見る。

エクトプラズムが見える.....。

所謂。魂が。


「.....アハハ.....まあ良いや。クレープ食べない?それはそうと」


「はい!大好きです!クレープ!」


「それは良かったです。じゃあ食べて下さい」


「ありがと。美幸さん」


オイ三菱。

死んでるぞコイツ、と生島が見てくる。

俺は、まあそれはそのままにしてやれ、と額に手を添える。

生島は、ふーん、と言いながら立ち上がる。

それから琴ちゃんを見た。


「琴ちゃんだっけ?私は生島って言うんだけど.....天津の妹なの?」


「正確にはあのゴミクズの義妹です」


「ゴミクズって.....まあ良いけど。.....天津はお前の事が好きみたいだぞ?良いのか?」


「.....へ?」


「いや。だから天津がお前の事.....好いているんだよ。.....だから配慮してやった方が良いんじゃねーかって思ったんだ」


そう言いながら後頭部に手を添える生島。

あれ.....言っていいのかそれ?

俺は考えながら仁を見るが。


死んでいる。

返事が無い。ただの屍の様だ、的な感じで。

まあいっか。


「.....」


琴ちゃんは顎に手を添えている。

あれ?、マジキモい、とか言いそうだったんだが。

何か悩んでいる様な顔をしている。

俺は、どうした?琴ちゃん、と聞く。


「何でもないです」


「.....???」


「さて。それはそうと。私もクレープパーティーに混ぜて下さい」


「え?良いけど.....」


だとするなら仁を起き上がらせないといけないな。

考えながら.....仁を抱えた。

それから、ったく、と思いながら起き上がらせてからそのまま連れて部屋に入った。


その際に.....少しだけ琴ちゃんが赤面しているのに気が付く。

それはほんの一瞬だったが。

俺はますます?を浮かべてしまった。



「ふああ.....」


ちょっと眠かったもあるが。

探し物の為に少しだけパーティー会場を離れ2階に来ていた。

俺は、やれやれ、と思いながらそれを探す。

何を探しているかって?

そうだな.....アルバムだな。


「お。あった.....」


そのアルバムは。

幼い頃の仁と琴ちゃんと撮った写真だ。

つまり小学生ぐらいかな。

思いながら開いてみる。


「何しているの?」


「うわ!?ビックリした。.....お前か」


「美里ちゃんです♪」


背後に美里が立っていた。

ノックしろよ、と思ったのだが。

そのノックに気が付かなかったのだろう俺が。

考えながら額に手を添えつつ。

そのままアルバムに向いた。


「何しているかって言えば.....仁と琴ちゃんの姿を改めて見ようと思ってな」


「そうなの?何で?」


「.....ちょっとな」


「.....ふーん」


すると美里が、じゃあ私の写真も有るの?、とニコッとしながら聞いてくる。

そりゃアルバムだしな。

有るに決まっていると思うぞ。

俺は顎に手を添えながら.....アルバムを開いて見ていると。

そういえば.....口の横にチョコが付いてる、と顔を近づけて来た美里は言う。


「え?ああ.....そうか.....」


とチョコを拭おうとしたら。

美里が俺の頬に触れた。

そして.....そのまま唇にキスをしてくる。

俺は驚愕して美里を見る。

はにかんでいた。


「.....だってチョコが悪いもん。.....えへへ。二人だけの内緒だね」


「おま!!!!!」


「この部屋には私と達也しか居ないしね。良いんじゃない?」


「.....いやいや.....」


顔を朱に染める美里。

赤くなりながら俺は頬に手を添える。

全くコイツという馬鹿野郎はいきなりじゃねーか!

考えながら.....俺は、ううん!、と咳払いしてからアルバムを改めて見る。

全く.....、とぶつくさ思っていると遂に見つけた。

その写真を。


「.....お。あった」


「.....え?」


「.....仁と琴ちゃんの二人っきりで撮った写真。.....ああ。やっぱりな」


「.....???」


その1枚の写真は。

僅かながらに頬を朱に染めた.....手を繋ぎ。

嬉しそうに笑顔を浮かべている琴ちゃんと。


それに全く気が付いてない無邪気そうな少年の仁が立っていた。

俺は、やれやれ、と額に手を添える。

それから写真を見る。


つまり.....さっきの一瞬の赤面が仁に向いているのなら好きな人は.....仁の事だ。

恐らくは、だ。

琴ちゃんは嫌っているんじゃない。

嫌っている様に.....見せ掛けているんだ。


仁の事を、だ。

昔から好きなのだろう。

俺の.....記憶が正しかったなって思った。


まあそんな感じだったしな。

途中まで琴ちゃんは、お兄ちゃん子、だったし。

仁が居なくなったら泣いていたしな。

簡単に、だ。


「.....美里。.....琴ちゃんはな。.....仁が好きなんだ」


「.....え?それって.....え?本当に!?」


「.....ああ。間違いないと思う。それも今もずっとな」


全く.....兄妹揃って.....不器用だな。

俺は額に手を添えながら。

どいつもこいつも、と思いつつ。

柔和に笑みを浮かべた。

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