第20話 クレープパーティー.....と?
つかぬまの土曜日になった。
俺達は家に生島と夢有さんと生駒先輩を呼んでみた。
次いでに仁とかも、だ。
何というかホットケーキミックスで焼いたクレープでクレープパーティーをしようと思っている。
だけどこの中で.....仁にとんでもない事が判明した。
それは.....俺も予想だにしない事態だ。
☆
「おう。呼んでくれてサンキューな。我が心の友よ」
「お前はジャ◯アンか何かか?そんな言い方すんなよ」
「まあそう言うな。俺としてはこんなに女の子が多いと嬉しいぜ」
「.....まあ童貞だもんなお前」
「おお。言っちゃならん事を。殺すぞ」
「やってみやがれクソボケ。殺し返すわ」
そんな言い争いをしながら。
母親と父親の居ない家の中で紛争をしていた。
美里と美幸が止めに入って来る。
その姿を生駒先輩とかが笑いながら見ていた。
「今日は招待してくれて有難うね。達也くん」
「いえいえ。いつもお世話になっているので。生駒先輩」
「三菱!有難うな!」
「本来なら俺は三菱じゃねーよ。.....まあ良いけど」
俺は盛大に溜息を吐きながら。
焼きたてのクレープをモシャモシャ食べる生島を見る。
全くな.....大口開けてまるではしたない。
と苦笑いを浮かべて思いながら見ていると。
何か.....興奮気味で。ところで、と夢有さんが語り始めた。
聞いた話で、じ、仁くんについての噂ですが.....、と。
何だ?、と思いながら見ていると。
とんでもない事を暴露した。
「仁くんは.....仁くんには義妹さんが居て義妹さんが好きらしいですね」
「.....は?」
ドン引き。
俺達は.....特に生島が、ぁ?、と威嚇している。
何だよそれ.....?
と思いながら仁を見る。
仁は、まあそうだな、と平然と答えた。
「.....俺は義妹が好きだよ?」
「.....お、おう。清々しいなお前よ」
「.....だって俺は義妹を愛している。心からな。心の底からのポエムも書いているぞ」
「ぇ.....ポエムって気持ち悪.....」
「何だよ生島。そんなドン引きする事か」
いや。義妹との恋愛は構わないがポエムはきしょい。
俺もそこはそう思うぞ。
流石にドン引き以上のドン引きだぞ。
気色悪い!、と思いながら仁を見つめる。
で。でも、と美幸が切り出した。
「そんな恋愛も良いと思います!血が繋がっていたらドン引きですけど.....そんなに愛す事が出来るの羨ましいです!」
「おお。そう思ってくれるのか。美幸ちゃん」
「はい。私が達也さんを好きなのと同じです」
「.....いや。この場で宣言する様に言うなよ。恥ずかしいよ。美幸」
俺は赤面になりながらクレープを食べる。
流石にそんなに一直線だと恥ずい。
考えながら見ていると生島が、良いなぁ恋愛って、と後頭部に手を添える。
それから天井を見上げた。
「.....アタシの彼氏は病死したもんな。.....あ。言っちまった」
「.....!.....生島.....」
「.....ま、まあ心臓の弁の病気じゃしゃーない。アハハ。今は.....恋愛とか考えられないけどよ。アッハッハ。ゴメンな。突然暗い話で」
「え.....生島さんそんな事が?」
そうだな。
生島が内緒にしていた話だったが。
それを話すという事は。
この場に居るみんなを信頼している証だ。
そう思える。
だってそうだろう。
普通はそんな話はしないしな。
「生島ちゃん.....」
「アタシは.....こんな男勝りなのも心から強く居ないとって思ったからなんだ。だから.....な」
「.....生島にそんな過去があるとはな。知らなんだ」
流石の仁も少しだけ考える仕草になっている。
すると生島は、まあそんな事は置いておいて!、と笑顔を浮かべる。
それから、まあとにかくは天津がマジキモいって事でおけ?、とニコッとする。
キモいって何だ!?、と仁は、コラァ、と怒る。
取っ組み合いを始めた生島と仁を見ながら.....美里がヒソヒソと聞いてきた。
俺に向きながらである。
「生島ちゃんってそんな過去があるんだね」
「.....まあ色々な感情であの部室は成り立っているからな。.....そんな過去もあるんだ」
「.....そうなんだね」
「.....そういう事で生島はあまり.....話たがらないな。元気っちゃ元気だけど.....その胸に秘めている問題を、だ」
「.....私達を信頼してくれているって事だね」
「.....そうだな」
悲しげな顔をする美里。
するとグスグスと音がした。
俺達は背後を見ると.....美幸がポロポロ泣いている。
生島さんが.....可哀想、と呟きながらである。
俺は驚いていたが、相変わらず.....慈愛の女神だな.....、と思ってしまった。
「慈愛の女神.....か、可愛い.....なんて言ったら駄目だけど」
「.....ちょ。落ち着け。夢有さん」
「た、食べちゃいたい.....ついでにナデナデしたい.....」
「落ち着いて。夢有さん」
ハスハス言いながらの夢有さんに生駒先輩が止めに入る。
その姿を見ながら取っ組み合いを止めた生島が涙を浮かべた。
それから.....美幸の頭を撫でる。
有難うそんなに思ってくれて.....嬉しいと。
その様に抱き締めて話した。
そんな様子を見ながら.....仁が話しかけてくる。
「.....相変わらず心の底から寄り添う慈愛の女神だな。姉妹もろとも」
「.....まあな。優しいのが自慢だよ」
「幸せにしてやれよ?姉妹もろとも」
「.....当たり前だ。後悔はさせないししないさ」
「そうか」
「.....しかしお前は義妹が好きなんだな?琴ちゃんだっけ?」
おう。
我が自慢の義妹、琴だ。
ハッハッハ、と笑顔を浮かべる仁。
確か.....専門学校の高校生だっけ?
それから.....仁の事を心の底から嫌悪している。
あれ?案外詰んでいるぞこれ。
俺は顔を引き攣らせながら仁を見る。
「.....お前.....それでも琴ちゃんが好きなの?」
「当たり前だ。どんだけ嫌われようと俺は琴が大好きだ」
「.....そ、そうか。止めないけどな」
「おう。まあ無理なら諦めるけどな」
「.....そうか。.....まあ頑張れよ。でもな。琴ちゃんが嫌がる事はするなよ」
「ったりめーよ」
鼻を啜りながら指で拭く。
それから俺をニヤッとしながら見てきた。
コイツ.....諦めない根性だけは凄いしな。
変な意味じゃなくて、であるが。
考えながら.....俺はその様子に苦笑いをまた浮かべた。
そして目の前の仲間達を見る。
それから美幸の頭を撫でる。
「美幸。有難うな。生島を励ましてくれて」
「私は何もしてないです。泣いているだけです。可哀想で.....それも恋している相手が亡くなるなんて.....私は絶対に耐えれないです。.....絶対に。.....死ぬなら一緒です。達也さんと」
「それを言うなら私もね。.....達也が亡くなるのは.....絶対に.....耐えれないから。美幸の言う通り死ぬなら一緒だね」
「オイオイ。勘弁してくれ.....っていうか俺は死ぬ前提かよ。.....死なないって」
俺は苦笑いで美里と美幸の頭に手を添える。
ジッと.....俺を見てくる美里と美幸。
その顔をそれぞれ眺める。
それから溜息を吐く。
そして俺はみんなが見てくる中で美幸と美里に言い聞かせる。
「俺は死なないさ。.....約束する。まあそんな事を考える必要も無いよ今は」
「そうだよね。三菱。だから.....パーっとやろう。ごめんな。辛気臭くなって」
「そうだなぁ。ハッハッハ!その通りだぜ達也!」
そんなみんなの言葉に美里も美幸も頷く。
それから.....ようやっと笑顔を浮かべた。
本当に有難いな.....ここまで恋されているのが。
考えながら.....俺はいっぱい有る苺のクレープをまた食べた。
美幸は料理が上手だな.....って思う。
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