第20話 クレープパーティー.....と?

つかぬまの土曜日になった。

俺達は家に生島と夢有さんと生駒先輩を呼んでみた。

次いでに仁とかも、だ。


何というかホットケーキミックスで焼いたクレープでクレープパーティーをしようと思っている。

だけどこの中で.....仁にとんでもない事が判明した。

それは.....俺も予想だにしない事態だ。



「おう。呼んでくれてサンキューな。我が心の友よ」


「お前はジャ◯アンか何かか?そんな言い方すんなよ」


「まあそう言うな。俺としてはこんなに女の子が多いと嬉しいぜ」


「.....まあ童貞だもんなお前」


「おお。言っちゃならん事を。殺すぞ」


「やってみやがれクソボケ。殺し返すわ」


そんな言い争いをしながら。

母親と父親の居ない家の中で紛争をしていた。

美里と美幸が止めに入って来る。

その姿を生駒先輩とかが笑いながら見ていた。


「今日は招待してくれて有難うね。達也くん」


「いえいえ。いつもお世話になっているので。生駒先輩」


「三菱!有難うな!」


「本来なら俺は三菱じゃねーよ。.....まあ良いけど」


俺は盛大に溜息を吐きながら。

焼きたてのクレープをモシャモシャ食べる生島を見る。

全くな.....大口開けてまるではしたない。

と苦笑いを浮かべて思いながら見ていると。


何か.....興奮気味で。ところで、と夢有さんが語り始めた。

聞いた話で、じ、仁くんについての噂ですが.....、と。

何だ?、と思いながら見ていると。

とんでもない事を暴露した。


「仁くんは.....仁くんには義妹さんが居て義妹さんが好きらしいですね」


「.....は?」


ドン引き。

俺達は.....特に生島が、ぁ?、と威嚇している。

何だよそれ.....?

と思いながら仁を見る。

仁は、まあそうだな、と平然と答えた。


「.....俺は義妹が好きだよ?」


「.....お、おう。清々しいなお前よ」


「.....だって俺は義妹を愛している。心からな。心の底からのポエムも書いているぞ」


「ぇ.....ポエムって気持ち悪.....」


「何だよ生島。そんなドン引きする事か」


いや。義妹との恋愛は構わないがポエムはきしょい。

俺もそこはそう思うぞ。

流石にドン引き以上のドン引きだぞ。

気色悪い!、と思いながら仁を見つめる。

で。でも、と美幸が切り出した。


「そんな恋愛も良いと思います!血が繋がっていたらドン引きですけど.....そんなに愛す事が出来るの羨ましいです!」


「おお。そう思ってくれるのか。美幸ちゃん」


「はい。私が達也さんを好きなのと同じです」


「.....いや。この場で宣言する様に言うなよ。恥ずかしいよ。美幸」


俺は赤面になりながらクレープを食べる。

流石にそんなに一直線だと恥ずい。

考えながら見ていると生島が、良いなぁ恋愛って、と後頭部に手を添える。

それから天井を見上げた。


「.....アタシの彼氏は病死したもんな。.....あ。言っちまった」


「.....!.....生島.....」


「.....ま、まあ心臓の弁の病気じゃしゃーない。アハハ。今は.....恋愛とか考えられないけどよ。アッハッハ。ゴメンな。突然暗い話で」


「え.....生島さんそんな事が?」


そうだな。

生島が内緒にしていた話だったが。

それを話すという事は。


この場に居るみんなを信頼している証だ。

そう思える。

だってそうだろう。

普通はそんな話はしないしな。


「生島ちゃん.....」


「アタシは.....こんな男勝りなのも心から強く居ないとって思ったからなんだ。だから.....な」


「.....生島にそんな過去があるとはな。知らなんだ」


流石の仁も少しだけ考える仕草になっている。

すると生島は、まあそんな事は置いておいて!、と笑顔を浮かべる。

それから、まあとにかくは天津がマジキモいって事でおけ?、とニコッとする。


キモいって何だ!?、と仁は、コラァ、と怒る。

取っ組み合いを始めた生島と仁を見ながら.....美里がヒソヒソと聞いてきた。

俺に向きながらである。


「生島ちゃんってそんな過去があるんだね」


「.....まあ色々な感情であの部室は成り立っているからな。.....そんな過去もあるんだ」


「.....そうなんだね」


「.....そういう事で生島はあまり.....話たがらないな。元気っちゃ元気だけど.....その胸に秘めている問題を、だ」


「.....私達を信頼してくれているって事だね」


「.....そうだな」


悲しげな顔をする美里。

するとグスグスと音がした。

俺達は背後を見ると.....美幸がポロポロ泣いている。

生島さんが.....可哀想、と呟きながらである。

俺は驚いていたが、相変わらず.....慈愛の女神だな.....、と思ってしまった。


「慈愛の女神.....か、可愛い.....なんて言ったら駄目だけど」


「.....ちょ。落ち着け。夢有さん」


「た、食べちゃいたい.....ついでにナデナデしたい.....」


「落ち着いて。夢有さん」


ハスハス言いながらの夢有さんに生駒先輩が止めに入る。

その姿を見ながら取っ組み合いを止めた生島が涙を浮かべた。

それから.....美幸の頭を撫でる。


有難うそんなに思ってくれて.....嬉しいと。

その様に抱き締めて話した。

そんな様子を見ながら.....仁が話しかけてくる。


「.....相変わらず心の底から寄り添う慈愛の女神だな。姉妹もろとも」


「.....まあな。優しいのが自慢だよ」


「幸せにしてやれよ?姉妹もろとも」


「.....当たり前だ。後悔はさせないししないさ」


「そうか」


「.....しかしお前は義妹が好きなんだな?琴ちゃんだっけ?」


おう。

我が自慢の義妹、琴だ。

ハッハッハ、と笑顔を浮かべる仁。


確か.....専門学校の高校生だっけ?

それから.....仁の事を心の底から嫌悪している。

あれ?案外詰んでいるぞこれ。

俺は顔を引き攣らせながら仁を見る。


「.....お前.....それでも琴ちゃんが好きなの?」


「当たり前だ。どんだけ嫌われようと俺は琴が大好きだ」


「.....そ、そうか。止めないけどな」


「おう。まあ無理なら諦めるけどな」


「.....そうか。.....まあ頑張れよ。でもな。琴ちゃんが嫌がる事はするなよ」


「ったりめーよ」


鼻を啜りながら指で拭く。

それから俺をニヤッとしながら見てきた。

コイツ.....諦めない根性だけは凄いしな。


変な意味じゃなくて、であるが。

考えながら.....俺はその様子に苦笑いをまた浮かべた。

そして目の前の仲間達を見る。

それから美幸の頭を撫でる。


「美幸。有難うな。生島を励ましてくれて」


「私は何もしてないです。泣いているだけです。可哀想で.....それも恋している相手が亡くなるなんて.....私は絶対に耐えれないです。.....絶対に。.....死ぬなら一緒です。達也さんと」


「それを言うなら私もね。.....達也が亡くなるのは.....絶対に.....耐えれないから。美幸の言う通り死ぬなら一緒だね」


「オイオイ。勘弁してくれ.....っていうか俺は死ぬ前提かよ。.....死なないって」


俺は苦笑いで美里と美幸の頭に手を添える。

ジッと.....俺を見てくる美里と美幸。

その顔をそれぞれ眺める。

それから溜息を吐く。

そして俺はみんなが見てくる中で美幸と美里に言い聞かせる。


「俺は死なないさ。.....約束する。まあそんな事を考える必要も無いよ今は」


「そうだよね。三菱。だから.....パーっとやろう。ごめんな。辛気臭くなって」


「そうだなぁ。ハッハッハ!その通りだぜ達也!」


そんなみんなの言葉に美里も美幸も頷く。

それから.....ようやっと笑顔を浮かべた。

本当に有難いな.....ここまで恋されているのが。

考えながら.....俺はいっぱい有る苺のクレープをまた食べた。

美幸は料理が上手だな.....って思う。

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