第8話 私はお姉ちゃんが好きだから

美里が家を出て俺の家に居る。

というのも頭を冷やしたい、という事で、だ。

その事に関して.....美里の妹の美幸が来てから顔を顰めて「ふざけんな」的な感じで去って行った。


俺はため息交じりにその事に関しては顔を歪めるしかない。

そうは言われてもな、と。

美里が嫌がっているのだから仕方が無いだろう。

考えながら俺は美里を見る。

そして顎に手を添える。


「美里」


「何?達也」


「.....お前は変わって良かったって思ってるか?今。性格が、だ」


「.....そうだね。.....私はこういう性格になって良かったってずっと思ってるよ。.....後悔は無いよ。あの頃には戻りたくない。交通事故に遭って良かったって思ってる」


「.....そうか。成程な」


言われてから。

俺は顎に手を添える。

それから頷く。

後悔は無い、か。


それだったら俺の決意も固いもんだ。

つまり.....美幸がどんだけ言ってきても.....立ち向かおう。

そう思えるのだ。

だったらこの先の予定は簡単だな。


「美里。俺決めたよ」


「?.....何を?」


「俺な。お前を幸せにしたいって思ったよ。.....どんな絶望でも乗り越えてみようかなって」


「.....達也.....」


美里は驚きながらも柔和に嬉しそうな笑みを浮かべる。

そして恥じらいながら、有難う、と言ってくる。

美里に恋をしたいとは思う。


だけど俺は恐ろしいのだろうな。

手から砂が零れ落ちる様な。

そんな感じだろう。


「私.....やっぱり好きになって良かった。君を」


「.....有難いよな。お前に好かれていたなんて」


そして見つめ合っていると。

インターフォンが鳴った。

俺達は驚愕しながらインターフォンを覗く。

そこには.....美幸が居た。

何やってんだコイツ。


「.....???.....美幸?」


「.....え?また?何しに来たんだろう」


よく見ればかなりの大荷物を抱えている。

俺達は顔を見合わせてから.....そのまま玄関に向かう。

そして玄関を開けると。

美幸が.....頭を律儀に下げてきた。

もう夜なんだが.....。


「こんばんは」


「何しに来たんだよお前.....?」


「.....私も.....」


「は?」


私もその。

家出して来ました。

と少しだけ大声を発するみゆ.....え!?

俺は愕然としながら美幸を見る。


何だって!!!!?

俺は美幸を見ていると。

美里が眉を顰めながら言葉を発した。

どういう事?、と、だ。


「.....私は.....お姉ちゃんが好きだから」


「.....?.....聞こえないよ。美幸。何て?」


「私はお姉ちゃんが.....好きだから!心配だから!」


涙声でそう大声を発する美幸。

それから驚く美里の手を握ってくる美幸。

門を開けて、だ。

そして、お姉ちゃんが変わってしまったのが.....ショックだった。私は.....嫌だった。だから家出してお姉ちゃんと一緒に居たい。私、と本音を漏らす美幸。


「.....美幸.....」


「離れ離れなんて嫌だ。お姉ちゃん。お願い私も.....連れてって.....」


「.....」


家族の足枷。

一言で言えばそういう事だろう。

美幸だって嫌だったのだ。

家に一人で居るのが、である。

そして重圧が耐えられなかったのだろう。

美幸はお姉ちゃんが好きなんだ。


「.....分かった。.....達也。良いかな」


「.....仕方が無いんじゃないか。でもお前の事も美幸の事も全部....親父達に言わないといけないけどな。改めて」


「.....だね。.....認めてくれたら良いけど」


「.....そうだな。でも多分大丈夫だ。.....きっとな」


そして俺達は美幸を迎え入れた。

家出してきた美幸が、だ。

それから.....俺は美幸を見る。


嬉しそうな美幸を、である。

本当に.....良いな。

家族ってのは、だ。


「有難うございます」


「.....正直、お前の本音が聞けて良かったよ。美幸」


「.....お恥ずかしいです」


「フフッ。何だか楽しくなってきちゃった」


「.....それは.....お前。別の意味じゃ無いよな」


「大丈夫だよ。達也。それじゃない」


そして俺達はリビングに来ると。

美幸がこう言い出した。

私.....お手伝いします、と、だ。

俺達は目をパチクリする。


「.....手伝いってのは?」


「家事とかです。.....如何でしょうか」


「え?家事出来るの?美幸。あまりそんな姿を見て無いけど.....」


「失礼ですね。お姉さま。出来ますよ」


「そんな堅苦しい言い方しなくても良いじゃない。美幸」


美幸は目を丸くする。

堅苦しいですかね?.....分かりました。お姉さまがそう言うなら、と。

美幸は、じゃあお姉ちゃん。私.....家事をするよ、と言い出した。

じゃあ私も一緒に、と動き出すみんな。

俺はその姿に、じゃあ俺も手伝うよ、と動く。


「.....じゃあ役割分担ね」


「そうだね。お姉ちゃん」


「俺はこっちだな」


それから役割分担をしてからの。

奇妙な生活が始まった。

そうしてから親父達が帰って来る。


そして俺達を見てから。

そうなんだな、と心から理解してくれた。

美里の両親に連絡もしてくれて取り合えずは.....安心だな、と思える。

取り合えず美里達はどれくらい滞在するか分からないが、だ。


「でもそれはそうとこれって学校にばれたらマズいよね?」


「それは確かにな。.....何とかしないといけないかもな」


「この事は内緒にしないといけないね」


「だな」


俺達と美幸は納得しながら。

この事は、極秘にしよう、という事にされた。

それから.....取り合えずの極秘の共同生活が始まろうとしていた.....のだが。


俺は舐めていた。

この共同生活を、だ。

そんな簡単には上手くいかないです、という事.....だ。

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