第7話 家出少女の美里さん

美里の家の家庭内事情は相当に複雑であると思える。

俺と美里が知り合ったのはその最中の事だった。

簡単に言えば幼稚園の保護者会で知り合ったのだが。


そんな美里が何故、普通の学校に行っているかというと。

簡単に言えば普通の学校を美里が望んだから、だ。

その時点で何か思いが有ったのだろうけど。


何というか美里は医者を継がせるのに相当に期待されていたようだが今になっては美里はその気は無いと断言したらしい。

親も相当に失望している様だが.....でも。

美里さえ居ればどうでも良い問題だな、と思う。

そして今に至っているが。


「えへへ。達也ー」


「しかし家出ってマジかよお前.....」


「だってつまんない。家には達也も居ないし」


「.....いや。良いけどよ。ベタベタすぎるぞお前」


「ベタベタしてるからね♪敢えて」


家出少女美里。

スリスリと俺に擦り寄って来る。

いかんゾクゾクする、ヤバいぞこれ。

考えながら俺は.....母さんと父さんが早く帰って来ないかと祈っていた。

2人きりってマズいだろ色々と。


「美里。離れてくれ」


「.....何で?むしろもっとエッチな事したい。ムラムラするし」


「止めてくれ。俺は今はその気じゃないんだぞ」


「そんな馬鹿な~。男の子は心の底から常にエッチって聞いたよ~?」


「誰情報だよ!しばくぞソイツ!アカン事を教えやがって!」


しばいちゃ駄目でーす。

とニコニコと笑顔を見せてくる美里。

俺はその姿に盛大に溜息を吐いた。

それから美里を引き剥がす。

そして見つめる。


「美里。俺はお前が好きだ。だけど今は考え事をしているんだよ俺。ゴメンな」


「何考えてるの?」


「お前の家の事情だ。.....序でにテスト」


「あー。成程ね。私の家の事情なんかどうでも良いよ。問題はテストだね。全部教えようか?私、物知りだし」


「お前は天才だからな.....」


昔聞いたが。

IQが125有るらしいので.....。

美里が、だ。


だからそのせいで.....ボッチになったんだろうけど。

孤独だったんだろうけど.....だ。

俺は美里に向く。


「じゃあ教えてくれるか」


「うんうん。初めからそうしていれば良いのだよ。達也君」


「何を偉そうに」


そんな感じで美里の背後に有る荷物を見る。

本気の家出の様だ。

荷物が沢山有るしな。

俺は盛大に溜息を吐く。

そうしていると美里の携帯に電話があった。


「.....あー。まあ無視だね」


「.....美幸か」


「うん。暫く帰らないから。だから無視無視」


「.....追って来るってのは無いのか?美幸が」


「無いよ。相当に言い聞かせているし。父親と母親も諦めているみたいだしね。私の事は」


成程な。

しかしそれだと美幸が納得してない。

俺は.....思いながら顎に手を添える。

すると美里が、それはそうと一緒にお風呂入ろうよ。暑いし、と言ってく.....ハァ!!!!?

そして脱ぎ始める美里。


「馬鹿野郎!!!!!お前という奴は!!!!!」


「だって暑いし。早く脱いで」


「勘違いするから!止めてくれぇ!!!!!つーか脱ぐな!!!!!」


「良いじゃない。暑いんだし」


下着姿になりそうな美里。

俺はその姿に真っ赤に頬を染める。

やっぱりコイツは本当にスタイルが良すぎる。

俺は立ち上がった。

それから部屋から出て行く。


「何処行くのー。達也―」


「俺は入らないぞ!絶対にヤバいから!」


「えー。ケチ」


「お前はエロ過ぎだ!アホ!」


じゃあ良いもん。

私だけ入って来るしー、と美里は脱ぎ始める。

だからそれを止めろっつってんだよ!


俺は逃げる様に部屋を出た。

それから玄関をゆっくり開けてみる。

全く、と思いながら、だ。

そして目の前を見ると。


「.....!.....美幸」


「.....こんばんわ。達也さん」


「.....何やってんだお前。もしかして取り返しに来たか。美里を」


「いえ。取り返しに来たのではありません。.....お姉さまのご自由ですので。.....しかしながらご用事としてはお父様とお母様の言葉の通達に参りました」


「そりゃまた。.....で。何て」


「.....『勝手な真似は許されない』だそうですので。.....ご理解下さい」


ああ成程な。

それはまた中二病の野郎が言いそうな言葉で。

俺は盛大に溜息を吐きながら返事する。

じゃあこう伝えてくれ、と。


「クソ食らえって伝えてあげてくれ」


「.....そのまま通達しておきます。.....それから。用事は済みましたのでこれにて失礼致します」


「.....」


美里の気持ちを何も考えんない親も最悪だな。

そう思いながら去って行く美幸を見る。

美幸。お前も変わってくれよ。

いい加減、だ。

考えながら俺は踵を返して玄関を閉めた。


「ねー。達也~」


「.....?.....何やってんだお前!!!!?」


そこには胸も全て丸出しの素っ裸の美里が立っていた。

俺は真っ赤になりながら顔を隠しつつ。

いい加減にしろ!何だ!、と返事をする。

それから石鹸が無い事を言われた。

俺は、わ。分かった、と案内し始める。


本気で心臓が止まりそうだ。

何時まで続くのだこれは.....?

俺は思いながら.....盛大に何度目かも分からない溜息を吐いてから窓から外を見た。


また全くな、と思いつつ、だ。

だけどまあ.....うん。

美里が決意したなら.....応援するだけだしな。

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