第15話

一人掛けのソファにわたしが座り、膝の上にフレイルくんを乗せる。

わたしはこのような状況を小説で呼んだことがある。

まさしく心通じ合う仲睦まじき恋人たちがする態勢。

こんなことをして許されるのだろうか。

フレイルくんを思う存分抱き締め触れ続けていて良いのだろうか。

否。

離したくない。

フレイルくんと離れたくない。


「アレク様…ところで、その…」


色んな部分を撫でていた私に、背中を向け大人しくしていたフレイルくんが、もじもじしながら振り返る。


「フレイルくん?発熱が…」


真っ赤になフレイルくんの頬に手の平を添える。

熱い。

癒しの魔法を掛けておこう。


「あの…その恰好はなんですか…?」


「ああ、これは白の騎士団のハットくんと薬師のエールくんが用意してくれたんだ。なんでも今流行りのカジュアル騎士礼服バージョン、だそうだ。髪型も整えて貰ったんだ。それと、手土産を用意してあるのだ。君の好きな」


「この格好俺以外誰が見ましたか」


「…ハットくんとエールくん、それからイクサバくん…だが」


フレイルくんがじっとわたしを見つめてくれる。

あまりにもじっと見つめられ、頬が緩んでしまった。


「っあれくさまはっ!」


「うん」


「かっこいいじかくをもってくれっ!」


「ああ、ヤバイのだろう?」


「…わかってるのにっかっこよくしないでくれっ!ほかのひとにっ…とられてしまう…」


フレイルくんがわたしにぎゅうっとしがみつくてくる。

なんということだ。

可愛い。

フレイルくんは元々可愛いのにますます可愛い。


「フレイルくん…」


「なんですかっ!」


怒鳴るフレイルくんも愛らしい。

わたしはフレイルくんを優しく包み込む。


「愛してるよ、フレイル」


「…アレク様はもう少し人の話を聞く耳を育てた方が良いみたいだ…」


「ふふふ…こんな幸せ…これはあれだな。不眠不休で十日は戦えるなっ」


「…ああ…もう…」


何故か呆れた声が聞こえたが、わたしの身体の中は幸せで一杯だった。

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