第14話
隙間なく、フレイルくんを抱き締めたい。
だがら何度も何度も両腕を動かし密着度を高めてしまう。
結果としてフレイルくんの身体をまさぐってしまったが、彼は力を抜いて私の好きなようにさせてくれた。
「アレク様…あの…このままで聞いて貰えますか…」
「ああ…構わないとも」
しばらくして、フレイルくんがわたしの胸に語り始めた。
わたしはどんな返答だろうと、もう二度とこの腕を開かない腹積もりになっていた。
誰にも渡したくない。
嫌だと言われても、開けない。
「俺…白鷹様が来てくれた時…すごく嬉しかったんです…ずっと尊敬していたので…それで…その…アレク様が今度は来るようになって…俺…白鷹様が来てくれるより…嬉しかった…だって俺…アレク様…すごく…す、き…で…会った時…す、す…になってて…でも白鷹様の代理で人のこと知りたいとか…恋のこと知りたいとか…すきなひとのはなしされて…すごくかなしくて…」
「フレイルくん…」
糸が、絡み合っていた糸が、解れていくのを感じた。
フレイルくんもなのだろうか。
わたしは、本当に駄目だ。
こんなにも人の、フレイルくんの気持ちに気付けなかったなんて。
こんなにも、フレイルくんは、わたしを、『アレク』を想ってくれていたというのに。
わたしの背中に両腕が回る。
なんということだ。
密着度が高まった。
是非もっと力を込めて貰いたい。
けれどうさぎのお腹のように柔らかなフレイルくんには、求める力が無いように感じられた。
ならばわたしが代りにもっと力を込めよう。
「俺…ずっと、好きなのはアレク様だけです…」
「わたしの初恋は君だフレイル」
「…俺、との、こと、で、その…相談して…たんですね…?」
「…ああ…最初は君の事が知りたくて…」
「でも、俺とイックが付き合ってるとかっていう妄想をしたんですね?」
「…ああ…それで、その」
「ほかのひとすきになろうとしたんですね…?」
「…君の元へ向かう口実が、それしか分からず…」
「…本当はお土産、ずっと欲しかった…止めるようにってなって…俺っ…」
「わたしがまだちゃんと人の心理解出来なかったのがいけなかった…わたしは…わたしは最初から君に告白すれば…」
「あれくさま…ほんとに…おれ、のこと」
胸元が濡れるのを感じた。
なんて愛らしいのか。
なんて胸が痛むのか。
わたしはフレイルくんの頬に手を添え、涙を唇で吸った。
「愛している、君を、フレイルを、心の底から、愛している」
「っ…あれくさま…おれもあいしてます…」
フレイルくんの真黒な瞳から大粒の涙が溢れ出した。
わたしは知っている。
人は嬉しいと、泣くのだ。
わたしはフレイルくんが泣き止むまで、その涙を吸い続けた。
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