第7話

夜も冷えて来た頃合い、暖炉に火を灯し恋人たちが仲睦まじく寄り添い床に腰を下ろしていた。

一枚の毛布に包まり、実に幸せそうである。

羨ましい。


わたしは寝床に飛び込むこと許されず、上等な毛布を与えられソファに座らせられていた。

ふたり曰く、ご自愛しろとの事だ。

そして叱られるターン続行という事らしい。


「それで、どうして自分が悪いか分からないってことでいいですか?」


「うむ。まったく分からない」


エールくんが深く溜息を吐き出した。

ハットくんはもっと深い溜息を吐いている。

どうしたのだろうか、心配だ。


「あのですね白鷹様…もし俺が、白鷹様の制止を振り切って、前線に出て片腕が無くなるまで戦ったらどう思いますか?」


「駄目だ。赦さない」


想像するだけで気分が悪くなる。

怒りが沸騰する。

そんな事、させない。


「そして何も言わずに姿を消したら、どう思いますか?」


「駄目だ。させない」


「そういう事です」


「…うむむ…?」


「白鷹様が、ハットがそんな事になって欲しくないように、みんな、みんな、白鷹様が心配なんです。だって、俺たちは白鷹様が大好きなんです」


「我を…?」


ふたりを見つめる。

優しく頷かれる。

その表情がわたしに訴える。

どうか、知って欲しい、と。


「…我が、好きか?」


「好きですよ。俺、白き鷹部隊に配属されて、白鷹様と一緒に働けて、すごい幸せで…めっちゃくっちゃ入隊するの大変なんですからね!倍率高いんです!」


「白鷹様の武勇伝や昔話、子供も大人も大好きなんですよ?色々グッズとかもあって…街の神殿、行った事ないですか?」


「ああ、わたしが…我が帝国内を飛んでは不安を煽るかと思ってな…街の散策ならしているが…神殿?グッズ?武勇伝に昔話?それは一体?…それに…街は…」


街を歩いた時のことを思い出し、わたしは落ち込んだ。


「どうしたんですか?道に迷ったとかあったんですか?今度案内しましょうか?」


「いや、それはハットくんに迷惑が掛かる。多大な迷惑が…」


「…なんかしたんですか、街中で…」


不安そうな顔を浮かべるハットくんに、私は悲しい思い出を語った。


「わたしが街を歩くとほとんどの人間が顔を赤らめ顔を背けまともに話をしてくれないのだ。わたし、アレクは、人間を不快にさせる造作をしているようでな…散策も顔を隠して…それでも声を聞くだけで様子がおかしくなってしまって…はぁ…」


フレイルくんへの手土産を買いに何度か商店でやり取りをしたが、酷いものだった。

中には卒倒するものもあった。

鼻血を出し、転び、叫び、逃げ、慌て…。

声を掛けただけで走って逃げられたこともある。


悲しい。

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