第5話

さっきまで晴れていた空は灰色に染まり、森は静まり返っていた。

わたしの帰還が緊張をも運んでしまったのだろうか。

申し訳ない気分だ。

それに伴い羽根も痛くて、わたしは薬師エールくんの元へ向かう事にした。


開いたままの窓の縁に降り立つと、エールくんがすぐに気付いて声を掛けてくれた。


「白鷹様こんにちわ。もしかして傷が痛みますか?」


『うむ。そうなのだ』


「それはいけません。今薬をお出ししますね」


『助かる』


いいんですよーとエールくんは微笑みながら、薬棚へ向かった。


森の中にひっそりと建てられたこの小屋はとても清潔で居心地が良い。

おそらく長い年月森に存在した事から、わたしの神殿と似た空気を帯びているのだろう。

森の中の建造物、という点で森がそう認識したのではないだろうか。

神殿はもっと森の奥に在るので、今痛む羽根で向かうのは少し懸念が生じた。

途中で飛べなくなった時、大変だと思ったのだ。

ただでさえ急に居なくなって心配したとハットくんに涙目で言われたばかりなのだから。

森に居ると告げはしたが、すっかり姿を隠すのはよくないと思った次第だ。

泣かしてしまった。

申し訳ない。

首をもたげてしまう。


「痛みますか?無理して飛ぶからですよ」


『…うむ…すまない…』


エールくんが薬をわたしに塗布してくれた。

ついでに内服薬も用意してくれた。


「これは、こちらの姿で飲んだほうがよいか?」


わたしは内服薬と水の入ったコップを差し出されたので、人間の姿で飲めということかと思い室内にて変身した。

翼を仕舞う瞬間、やはり痛みが生じた。

治りかけなのに翼を使った代償だ、やむなし。

我慢して二本足で床に立つ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る