第2話
わたしの本来の姿は、白い鷹である。
ルスナ帝国の白鷹の森の神である。
初代帝王ルスナと我は盟約を結んだ。
我は騎士を守護し、騎士は我の森を守護する。
それをずっと、護り続けている。
ルスナの騎士は我を敬い。
我は騎士を愛し守護する。
人類を脅かす外敵怪獣との戦あらばその先頭で羽根拡げ、雷鳴を轟かせる。
命にかえても我は騎士を守護すると決めていた。
それを快くないと考える子らも在る。
我はそんな子も含め護りたい。
愛しい騎士はすべからく我の子なのだ。
先刻の怪獣との大戦でも、わたしは最前線で羽ばたいた。
下がって欲しいだ、無理をしてはいけない、危ない危険だ、と言われたが、わたしは引かなかった。
騎士は、わたしの森を守護するために戦っている。
騎士は我の子。
その騎士を護らずに森でふんぞり返っていろとでも?
そんな事わたしは出来ない。
血を流すのはわたしだけで良い。
わたしだけで良いのだ。
そうしてわたしは戦闘で片翼を失い、森で蹲っていた所を薬師のエールくんに救われたのだ。
エールくんはとても優しい心良い青年であった。
わたしは彼となら佳き恋が出来るのではと思った。
ところがわたしを捜索していた、白き鷹部隊のハットくんと恋に落ちてしまった。
いや、よいのだ。
わたしの隊の子が幸せになるのは、実に良い事なのだ。
ああ、わたしの隊と言っても、彼らはわたしが暴走しないように結成されたようなもの。
人間の姿である時の所属先としているが、そろそろ解散させようと思っている。
わたしの所為で前線につねに立たされて、なんと危ないことか。
まったく騎士団長各位は何を考えているのか。
む、そろそろ会議の時間か。
しまった。
妙な雰囲気のまま沈黙してしまっていた。
フレイルくんはもう仕事に集中している。
だが、これ以上話している時間も、無い。
うう、仕方無し。
わたしは渋々席を立った。
「すまない、そろそろ会議へゆくよ」
「はい」
そっけない返答に、わたしの心が砕けてしまいそうになる。
しかし、それはしょうがないこと。
フレイルくんがわたし『アレク』に興味が無いのだから。
「それでは、また」
「はい」
一瞥も無し。
それはわたしがアレクの姿のまま、部屋を出て行くからだ。
本来の姿であったなら、拝跪し礼節弁えた挨拶をくれただろう。
アレクには不要と騎士に通達してあるが故の、素の反応なのだ。
フレイルくんの気持ちがここでいつも分かってしまう。
そして偽らないフレイルくんがますます好きになってしまうのだ。
どうしようもないわたし。
扉を人間の手で開けて閉めて、二本の足で会議室へ向かった。
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