第23話 デート

「やあやあお兄ちゃん、おしかったねぇ。もうちょっとでチャンピオンに成れたのにね。」

 カズマが筐体から出るとご機嫌なディアナが出迎えてくれた。

「今回は相手が悪かった。最後の最後にアレだもんな。」

「そんなこと言って、実は一番楽しんでたんじゃないの。」

「ああ、いつか八つ裂きにしてやりたい。」

 そう言いながらカズマが対戦相手の筐体を見るとそこにはもうだれもいなかった。

「まぁいいか。今日は十分稼げた。リベンジはまたの機会にしとくか。」

「ははは~、そこであきらめないのがお兄ちゃんらしいよね。いつか勝てるといいね?」

「けっ、そんな煽る様な顔で言われると萎えるぞ。」

「え~、お兄ちゃんの天邪鬼。」

「そんなことよりこの後どうする。」

「う~ん、街をぶらぶらするのはどうかな。」

「下町でか?見るとこなんて無いだろ。」

「あるじゃない。駄菓子屋さんとか、テーマパークとか。」

「どっちも廃墟がテーマだけどな。」

「いいじゃん。廃墟でデート。肝試しした~い。」

「悪趣味なお嬢さまだな。」


「それで、メシはどうする。」

「廃墟ごはん!」

「あるのかそんなの!」

 カズマがディアナの答えに驚くと。

「ちっちっち、お兄ちゃん廃墟ツアーとか行ったことないの。ちゃんと入館料も取るし出店だって出てるんだから。」

「もはやただのテーマパークだよね。」

「本格志向の大型お化け屋敷と言った方がいいかもしれないね。上の方じゃ結構話題になってる場所だよ。」

「まあ、お化け屋敷でデートって言えば定番っちゃ定番なんだろうけどな。」

「そういう訳でレッツラゴー。」

「はいはい、ゴーね、ゴー。」


 そんなわけでやって来た廃墟型テーマパークのお化け屋敷。

「なんだかもう帰りたくなってきた。」

 そう暗い顔で述べるカズマ。

「何ですか。怖いのお兄ちゃん。プークスクス。悪魔憑きなのに怖いのがダメだなんてオカシ—!」

「煽んな。別に怖い訳じゃないんだ。タダな~~~~~。」

「ただ何?」

「立ち入り禁止の看板とかキープアウトのテープとかある横でLEDライトキラキラさせた受付があるのがすっげーチープでなんかテンション下がってきた。」

「もう、そんなこと言わないで行こうよ。中はきっとちゃんとしてるはずだから。」

「妖怪を売りにしてる街のお土産屋さん的オチしか見えてこないんだけど。」

「そんなこと言わないでさ。ほら、あそこに売ってる小さいおじさんの串焼き風の串焼き食べよ。」

「何の肉使ってるんだ。」

 そうカズマがぼやくと屋台の親父が手招きしながらこう言った。

「ウチの商品、アレルギー無いアルよ。買ってってよおニーさん。」

「アレルギーの問題じゃないんだよ。なんだこのあからさまに怪しい店は。」

「オジサン、串3本ちょうだい。」

「まいど。」

「はぁ~~~~~。」

 とりあえずカズマはあきらめて串焼きを買って受け取る。

「コレ、食いながら中は入れるのか?」

「入れるみたいだよ。」

「じゃあ行くか。」

「行こう。」

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