第22話 鬼VSヘカテー 決着

 紅蓮の劫火が噛みついてくる。

 無数の顎で体中が焼かれていく。

 匂いはない。

 鼻から息を吸い込もうものなら、炎は容赦なく鼻孔に侵入して鼻の粘膜を焼くだろう。

 この炎の中では息をするだけでも自殺行為だ。

 息をしたところで肝心の酸素も炎に持っていかれているだろう。

 鬼・改はそれでもあきらめない。

 課金ポイントはまだある。

 これで反撃を試みる。

 幸いこの炎に拘束力はない。

 ならば、全力を持って最後の吶喊を掛ける。一撃必殺で決めてやる。

「あいつは今勝ちに気が緩んでるはずだ。持ってくれよ俺の体。」

 そうして、鬼・改は最後の賭けに出たのだった。


 勝ちを確信したヘカテーは燃え盛るキャンドルの火を見つめて微笑んでいた。

 その炎が突然爆ぜて中から黒く焼け焦げた人型の悪魔が飛び出してきても、その微笑みは崩れなかった。

 ただ、

「やっぱり出て来たか。」

 そう呟いただけだった。

 鬼・改にとっては素早く、しかしヘカテーにはゆっくりとした時間だった。

 一歩一歩両者の距離は縮まる。

 そして時は来た。


 バキン!


 その音と共に鬼・改の片足が崩れた。

 完全に焼けこげた上に限界まで走り抜こうとした結果、耐えきれずに砕けたのだ。

 あと一歩。

 あと一歩のところで足が砕けて前のめりに倒れ行く鬼・改。

 しかし、その眼はまだ死んでいない。

 最後の一歩を届けるために手を伸ばす。


 がりりりぃぃ。


 その最後の一歩がヘカテーの頬に手が、爪が届いて、ヘカテーの頬にキズを作る。

「どうだ痛いか?」

 鬼・改の質問にヘカテーは微笑みを崩さずに続ける。

「ああ、痛いさ。この痛みしっかりと刻み込まれたよ。」

「そいつ良かった。」

「次は貴様に刻み込んでくれるよ。なぁに、痛みは無いだろうがなあ。」

「既にやけどで痛いんだが。」

 鬼・改の軽口も無視して、ヘカテーは爪を伸ばして一閃した。

 それにより鬼・改の体はバラバラの刻まれて地面へと散らばった。


「決着~~~~~!決着が付いたぞ。最初は怒涛に攻めていた鬼・改だったがヘカテーが一歩、一歩前に出ただけで趨勢が決まりました。怒涛の炎攻撃でしたね。」

 ミスター・Mが勝利宣言を叫ぶ中解説のミス・Xは意外と渋い顔だ。

「私としては鬼・改に勝ってほしかったけどね。鬼なら炎の耐性も高っかったろうに。」

「それだけヘカテーの炎が強力だったということなのでしょう。」

「そうだねぇ~。」

「なにやら浮かない表情ですが何かありましたか。」

「いや、ちょっと本業関係でね。」

「おっと、これ以上聞くなということですね。承知しました。それではヘカテーに挑戦するやつはいるか?いない。ならばヘカテーが今日のチャンピオンだあああああああああああああ!」

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