第18話 降魔

 カズマの体は激痛を上げていた。

 このゲームがVRと言えども悪魔憑きのソウルコードをリンクさせてプレイされるもので、痛覚もはっきりと備わっている。

 そして、悪魔憑きにとって悪魔とは魂と肉体の両方に深く根付いたものであるからだ。

 その悪魔を強制的に進化させようとすれば、急激な体と魂の変化をもたらして、その軋みに激痛を伴うのは道理である。

 カズマは自分の口元を手で覆う。

 歪んでいた。

 大きく口角がつりあがり、裂けて広がっていた。

「グ……ギ、ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ。」

 痛みが体の内側から膨れ上がる。

 筋肉が膨張して神経を圧迫する。

 骨格が急激に変わり、引き延ばされた筋肉が断裂する。

 血管が破裂して血が噴き出す。

 しかし死なない。

 あるのは痛み。

 そして膨れ上がる力の実感。

「ギャハ!—―――――ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 笑いがこみあげてくる。

 あふれる力が自身の暴力性を沸きたてる。壊せ。殺せ。壊せ。殺せ。壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ。

 自分が本当に鬼になる。

 ただ悪魔の力を使う人間ではなく、本当に心から鬼になっていく。

 戦いへの衝動が死の恐怖を吹き飛ばしていく。

 この戦いはヴァーチャルではない。

 リアルだ。

 死んだらそれまで。そう思え。

 その危機感が力になる。

 死に物狂いで挑め。

 それでも届かぬ強者を前にしているのだ。

 勝ちたいだろう。

 殺したいだろう。

 壊したいだろう。

 ならば爪を研げ。

 牙を磨け。

 自分のありったけを込めよう。


「さぁ、殺しの時間だ。」

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