第14話 連戦連勝

「ゼウスの雷霆!」

 それはイチかバチかの賭けだった。

 放っておいたらサイクロプスは鬼に殴り殺されるだけになる。

 だから自身を巻き込むことを前提に切り札の必殺技を放ったのだ。

 ただの雷撃ではない。

 ギリシャ神話にて主神ゼウスに送った雷霆の逸話をもとにした必殺の神秘。

 自分さえ耐えられるか分からないような一撃を至近距離でぶっ放した自爆攻撃。

 サイクロプスは勝ちたかったのだ。

 かつて自身を打ち倒しておきながら、戦った相手を覚えていないような病気持ちの男。

 この男に刻みつけたかった。

 俺様の名前を―――――


 雷撃の雨のなかをくぐり抜けて鬼がサイクロプスにせまる。

「金剛発破!」

 鬼は手にしたこん棒を振り抜き、サイクロプスの体を粉みじんへと変えたのだった。


「決まったぁ~~~~~~~。鬼VSサイクロプスの戦いがここに決着。最後はサイクロプスの自爆もいとわない攻撃でしたがそれを貫き鬼が勝利を手にしました。」

「いやぁ、見事だね。課金ポイントの使い方が上手い。なんでも取れるわけでは無いこの課金ポイントの中から対戦相手の特性に合わせてスキルを選んで得たようだね。」

「と言いますと。」

「鬼と言っても伝承は広い。その中から加納永徳が描いた風神雷神図絵をもとに雷神の要素を取り込むことで最後の自爆を凌ぎ、カウンターを決めたわけだ。」

「なるほど、さすがVDC、自身が持つ悪魔のポテンシャルとは別に戦略を練るのが醍醐味のゲーム。まさにそれを見せてくれました。」

「コモンっでもレア相手に勝てるのがいいところだよね。」

「そして、サイクロプスが退場したすぐに次の対戦者がエントリーされます。勝利者は対戦相手が居なくなるか一定以上の連勝を重ねなければゲームをやめれないのがVDCの特徴。このコモンの鬼は何処まで戦えるのか。チャンピオンの座をかけて連戦が始まります。」


 さて、その後は鬼になったカズマの連戦連勝が続く。

 状態異常を巧みに操るインプ。

 炎攻撃が得意なウコバク。

 自分と同じ鬼のプレイヤーもいた。

 しかし、カズマはそのことごとくに勝ってきた。

 声援も飛べばヤジも飛ぶ。

 それがこのVDC。簡単に言えば賭け闘技場である。

 これは地上ではレーティングこそあれども合法の賭博である。

 悪魔憑きの人権を守りながら、そのうえで保護と利益を出すために行われる国家公認の賭博場。

 悪魔憑きはその賭けの対象になることでファイトマネーを手に入れてこの隔離都市で生きている。

 戦うことでしか生きられない悪魔憑きを隔離して管理するのがこの隔離衛星都市である。

 その世界での最大の娯楽が闘争なのである。

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