第13話 鬼VSサイクロプス 3
鬼となったカズマは金棒を握る。
雷で焼かれた鉄の棒を握ることで手のひらが焼ける。
「それがどうした。」
VRとはいえ痛みはある。それでもこの程度で臆するほどではない。
この都市にいるものは大概痛みに耐性があるものだ。
それはカズマとて同じである。
それに加えて、サイクロプス対策もした。
勝ち筋は見えている。
後はそれをどのように楽しむかが問題なのだ。
「さぁ、てめえをミンチにしてやるぜ。」
「やってみやがれや。」
この都市に住むものはVRを通して殺し殺されるのが日常茶飯事である。
だから諦めない。
ただ、相手を屠りその血肉を食らうことを望むのだ。
「両者ともに動いたぁ~。」
ミスター・Mの実況が熱を帯びる。
棍棒と金棒、似ているようで決定的に違う武器が交錯する。
方や樫の棍棒。
もう一方は金属で出来た棍棒。
ぶつかり合う中での優劣は分かり切っているはずだ。
しかし、両者一歩も譲らない。
最初の肉弾戦のように怒涛の攻撃の応酬が繰り広げられていた。
そのさなかサイクロプスが呪文を唱える。
唱えたのは一小節の呪文。
「ジオンガ。」
本来ならば三小節以上で発動する中級魔術。
鬼の頭上より強力な雷撃が落ちる。
鬼はバックステップで雷撃を躱す。
サイクロプスはそれを逃がさないとばかりに棍棒で追撃をかけながら呪文を唱える。
「ジオンガ。」
「ジオンガ。」
「ジオンガ。」
サイクロプスからの猛攻に鬼は距離を取り棍棒の攻撃範囲から逃れる。
「ジオンガ。」
それでも繰り出される雷撃を鬼は今度は横に回避する。
サイクロプスはそれを追って雷撃の呪文を繰り返し唱える。
鬼はそれをサイクロプスを中心にして円を描くように走り、回避していく。
「ジオンガ。」
サイクロプスはそれを追って雷撃を放つが、鬼はそれを少し加速して躱していく。
そして、鬼はサイクロプスの視界から外れ死界に入るや否や、一気にサイクロプスとの距離を詰めに行った。
遅れてその動きをとらえたサイクロプスは棍棒で迎撃しようとした。
しかし、その一撃は鬼の持つ金棒ではじかれる。
そして鬼はサイクロプスの懐に入り込む。
ここまで近づくと雷撃による攻撃ができない。
無理にすればサイクロプスも巻き込むだろう。
ゆえに棍棒での迎撃になるが、これも図体のデカい方のサイクロプスでは懐に入った鬼に上手く棍棒を振り下ろせない。
結果、懐に入った鬼からの一方的な攻撃が繰り出される。
戦いの趨勢は決まった。
鬼によるサイクロプスの蹂躙劇が繰り広げられようとしていた。
これには解説も観客も興奮を隠せ無かった。
幾たびの金棒での攻撃で傷つくサイクロプスは抱き着くように鬼に覆いかぶさりに行った。
完全なゼロ距離でのベアハッグ。
これなら筋力で勝サイクロプスに勝機がある。
しかしこれを鬼が足元にまとわりつくネコのような動きで回避してしまう。
「うううううおおおおおおおおお、ゼウスの雷霆。」
サイクロプスは最後の賭けに出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます