第11話 鬼VSサイクロプス 1

 筋肉が躍動する。

 拳が相手の筋肉を打つ。

 相手のサイクロプスの拳が迫る。それをいなそうとするがざらざらした肌がこちらの肌を擦る。

 しかし有効打は貰わない。

 カウンターの拳を叩き込む。

 これの繰り返し。

 カズマはここまで課金ポイントは使っていない。

 使わずに勝っても別にボーナスにはなりはしないのだから使わにゃ損なのだが、カズマは自分から課金ポイントを使うつもりはない。

 だってこれはゲームなのだから。

『ははは、楽しいな。真っ向勝負もいいけど相手を舐めてかかるプレイも大好きだ。』

 だからカズマはサイクロプスを煽る。

「どうした。課金ポイントは使わないのか。ソレともそっちが有利過ぎて誰も応援してくれないのか。ぷっぷ~、哀れでちゅね~~。」

「そういうお前こそポイントを使わんつもりか。」

「うん、今はね。」

「舐めているのか。」

「どう思う。」

「舐めているんだろうな。貴様というやつはそういうやつだ。」

「はっはー、ならばこのまま負けとく?」

「訳なかろう。」

 カズマの拳が筋肉とは違う固い物を打ち据える。


「おお~と、ここでサイクロプスが棍棒を取り出したぞ。」

「この棍棒のステータスは。」


―――――――――――――――――――――――――――――


【巨人の木槌】・ランクC


 樫の木で出来た木槌。

 巨人族が使う為、その太さと重量はかなりの物。


 巨人族の筋力を若干アップさせる。


―――――――――――――――――――――――――――――


「まあ基本的な装備だな。課金ポイントが少ないのかこれで倒せると思っているのか。」

 解説などの放送はプレイヤーたちには聞こえていない。

 しかし、サイクロプスはそれが聞こえていたかのように吠えた。

「これだけじゃねぇぜ。」

 サイクロプスは大きく棍棒を振りかぶると咆哮をあげながら振り下ろした。


「おお~っと、ここで強烈な一撃が炸裂。サイクロプスが棍棒を振り下ろすとともに稲妻が後を追い、鬼を飲み込んだ~~~~~~~~~~!」

 観戦者たちはそのド派手な稲妻の炸裂に興奮して歓声を上げる。

「今のはサイクロプスの起源となったキュクロープスの力だね。」

 ミス・Xが今の一撃の解説を入れる。

「キュクロープスはティタノマキアにて主神ゼウスらにタルタロスから解放された際、そのお礼としてゼウスに雷霆を送ったという逸話がある。その逸話が今の雷だろう。ゆえにかなりの高ランクの雷撃だったはずだ。」

「なんと~~、今まで物理攻撃のみで連戦していたサイクロプスにこのような切り札があろうとは!この強力な雷のせいで粉塵が舞い、戦場が目視できません。鬼はどうなった。雷の直撃を受けて塵となったかぁ~。はたまた何かの秘策でしのいだか。結果が気になります。さぁ。粉塵が晴れていきます。結果はいかに!」


 戦場の鬼、ことカズマは――――

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